風邪っぴき
服がベチャベチャな上に、体調は最悪。
こういう場合、普段なら学校は休みにして、パジャマに着替えてからベッドの上で安静にしているのが一番良い。
しかし、今この状況で、それは叶わない。
(ああ、クラクラするわ…… このままじゃ、マズいよね……)
服だけでも着替えたい。
そう思って、フラフラした足取りで市場を回る。
服が陳列してある店を発見するも、値札らしき物が貼ってあり、当然、代金を取られる。
(お金か…… こんな状況だけど、稼がないと何も出来ないわね……)
なりふり構ってはいられない。
ガールは道行く人に声をかけることにした。
出来るだけ声をかけやすそうな人を品定めし、自分より年のいってそうな女性に話かけてみた。
尖った帽子をかぶった、魔法使いみたいな女性だ。
「あの、すいません…… ちょっと、教えて頂きたいんですが」
「はいー?」
「ええと…… ここら辺に、仕事を紹介してくれるような場所、ないですか?」
「ああ~、あるわよン。 あそこをねー、右に曲がってぇ…… まあ、いきゃ分かるわ。 それよりアナタ、具合悪そうね。 魔法で治してあげよっか?」
「……え! 本当ですか!?」
「チチンプイプイ、ハイ」
魔法使いと思しき女性は、手にした杖を振った。
しかし、何も起こらなかった。
「……は?」
「な~んてね! 私のこれ、ただのコスプレだから。 じゃ~ね~」
そのままスキップしながら女性は去って行った。
(期待した私がバカだった……)
とにかく、仕事を斡旋して貰える場所があるとのことで、女性に言われた通り、市場を抜けてレンガで舗装された街の内部へと足を踏み入れた。
(こっちかな?)
細い路地のような場所を通ると、腕を組んで、柄の悪い男が二人、こちらを睨みつける。
「あっ、間違えました~……」
慌てて来た道を引き返す。
(最悪…… 結局、迷っちゃったじゃない……)
体がダルい上に、知らない街を行ったり来たり。
苛立ちと何の準備もしないでこちらに来てしまったことに後悔を覚えつつも、ガールはようやく、それらしき場所を見つけた。
建物の看板に書かれた文字はさっぱり読めなかったが、扉を開けると色々な人が壁に貼られた求人と思しき張り紙を見ている。
辺りを見回して、受付をしているカウンターの小柄な女性に声をかける。
「あの、すいません…… 仕事紹介してもらいたいんですが」
「はい、求人表があれば出して下さい。 無ければ、希望する職種を言って下さい」
「希望する職種……」
ガールは…少し悩んだ後、自分に出来ることなんて肉体労働くらいだろうと答えた。
「私、仕事した経験ないんで…… 肉体労働とか、誰でもできる感じの、無いですか?」




