再びチカ
ガールが宝石を夜空に打ち上げた頃、ヨシコ、マァムはガールがどこに消えたのかを調べる為、セカンド・ヴィレッジのチカの住まうアパートへとやって来ていた。
ちなみに、黒竜のりゅーすけ君はまだ翼が完治しておらず、サーターアンダーキに留守番である。
「ねぇ、あなたの占いならガールの居場所、分かるでしょ?」
「そう急かすな。 これから確かめてみるわい」
キッチンでコーヒーを沸かすための湯を火にかけながら、チカが言った。
ちなみに、ダウジングワンドがあるのに、何故チカを頼ったのかと言えば、範囲を限定しなければ捜索箇所があまりにも広くなってしまうからである。
ソファに座っていたマァムが、こんな時、自分にも魔力があれば、と嘆く。
「はぁ…… こういう時、私は本当に役立たずね」
「マァムおばさんも魔力、ないの?」
「……ええ。 だから、私には剣しか無かった。 お陰で剣を極められたってのもあるんだけどね」
しばらくして、コーヒーのほろ苦い香りが辺りに漂い、チカが戻ってきた。
「あ、私、ケーキ買ってこよっか?」
ヨシコがそんなことを言うと、マァムもつられてミスドみたいなとこある? と尋ねた。
「何を言っておるのじゃ。 これは人捜し用じゃぞ」
「あっ…… すいません」
「お腹、減っちゃったな」
「それでも母親か。 少しは心配せぇ」
半ば呆れつつ、チカは壁の画鋲を剥がし、貼ってあった地図を取り出した。
机に積まれていた本を乱雑にどかし、それを広げる。
「さあ、ガールの居場所を占うぞ」
コップに入れられたコーヒーを一滴垂らし、それが移動するのを待つ。
ところが、何時まで経っても、そのシミは動こうとしない。
ヨシコが尋ねる。
「……どういうこと? もしかして、今垂らした地点にいるってこと?」
「これは…… 何者かの魔法、と考えるべきじゃな」
「魔法?」
「そうじゃ、巧妙に姿を隠す魔法。 昔、似たようなことがあった。 金貸しに連れ去られた息子を探して欲しいと両親がやって来た時、同じように全く反応を示さなかったのじゃ。 ファスト・レイクまで出向いて元金貸しに話を聞いたんじゃが、どうも、強力な魔法使いが関わっているらしい」
「強力な魔法使いが協力している……」
マァムが、あ、ダジャレだ、と呟く。
「マァムおばさん、真剣にやらないと」
「……そ、そうね」
ヨシコが、そしたらどうすればいい? とチカに尋ねる。
「ワシが思いつくのは、その魔法使いを倒して魔法を解除することじゃが、本人も自分自身に姿隠しの魔法を使っておって、探しても見つからんかった」
「じゃあ、どうするのよ!」
チカに掴みかかりそうな勢いで身を乗り出すヨシコを、マァムが止めた。
「待って、ヨシコ。 ……まだ方法がある」
「方法?」
「召喚魔法。 この世界には、唯一、召喚魔法を使えるエルフの最後の生き残りがまだいるって聞いたことある。 鯨の腹の中に住んでいて、海のどこかにいるって
話よ。 普通に探したら絶対に見つからないと思うけど、チカさんなら……」
「召喚魔法…… そんな魔法があるんですか!?」
「ふむ、では、そちらを当たってみるかいな」
改めて、チカがコーヒーを地図に垂らす。
すると、そのシミは地図上の海を指し示し、少しずつ移動し始めた。
「……間違いないわ。 鯨の中にいるから、海中を移動してるのね」
「でも、どうやって会いに行くの?」




