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がーるすぺしゃる  作者: oga
シーサ村
45/69

出勤

「ふぁ~あ」


 ガールは馬車のカゴの中で目を覚ました。

乱雑に散らかった毛布をどけて、丸い時計を見やる。

この時計は各自支給されているもので、矢印は8時を示していた。

上から垂れている布をどけると、日が差し込む。

ゆっくり這い出て、サンダルを履き、ノビをする。


「くぅ~っ」


「おはよ、ガール」


「あっ、おはようございます!」


 挨拶をしてきたのは隣に住んでいる住人。

その優しい笑みを見てガールは、女神様みたい、と独りごちた。

みな、ぞろぞろとカゴから這い出て、缶詰工場へと向かう。

工場へは川沿いを歩いておよそ10分の所にある。

知り合いがいるものは談笑しながら、一人の者は列の後ろを黙々と歩いて行く。

ガールは、キラキラと朝日を反射させる川を眺めながら、今日も穏やかな一日だといいな、と考えていた。

ガールがこの世界に来てからは血みどろの日々。

仲間が何人も死に、精神的にも参っていた。

もし、この世界に来る前の自分に忠告できるのなら、こう言うに違いない。

「冒険者なんて、ロクなものではない」


(このセリフって、ああ、そうだ……)


 母親も全く同じことを言っていた。

しかし、自分はそれを聞き入れなかった。


(はぁ~、悪いのは全部自分なんだけど……)


 後悔先に立たずである。

しかし、ここに来て状況は変わった。

もう、血みどろの戦いには戻らなくても良い。

ヨシコや母親のことが気にならないといえば嘘になるが、それでもしばらくはここにいたい。


(しばしのお暇、頂きます)


 そんなことを考えている内に、工場へと到着した。

この工場はツナ缶の製造をしている。

建物の正面から入り、下駄箱でサンダルから殺菌された白いゴム靴に履き替える。

廊下を進むと、自分のロッカーへと向かい、更衣室で白衣に着替える。

ガールは、「解体部門」の担当で、トラックの積荷から下ろされるマグロを解体するのが仕事である。

部門は「漁業部門」「運搬部門」「解体部門」「身を蒸してほぐす部門」「缶に詰める部門」「缶の洗浄部門」の6つに分かれており、魔法の剣を取り出せるガールは解体部門に配属された。


「おはようございます」


「おはよう、ガールちゃん」


 解体部門は筋骨のたくましい元職人のような年配の男性ばかりで、体の華奢なガールは明らかに浮いていた。

しかし、ここの者はみな優しく、そんなガールでもきちんと仕事を教わることができた。

しかも、剣の技をかじっていたガールの飲み込みは早く、良く褒められた。

ガールは、トラックから下ろされたマグロがこちらに投げられると、構えた剣で頭、尾を素早く切り取り、更に骨と平行になるよう、身に刃を入れ、それを次の部門の者に渡した。

方法としては、カートにカゴをのせ、そこにさばいた身を入れて、運搬する。

 次は身を圧力鍋で熱する工程で、パン焼き機のような機械の金網にマグロの身を並べた後、釜に入れて中まで確実に火を通す。

この先はガールの担当では無いため、割愛する。

 1時間おきに15分の休憩を挟む決まりになっており、テーブルに突っ伏して少し眠ってから、再度作業するのがガールのルーティンであった。

 昼になると、工場の隣にある食堂へと向かう。

おぼんを取って列に並ぶと、厨房の方から日替わりのメニューを渡されるが、マグロを獲ってくる関係で、どうしてもそういったメニューが増えてしまう。

それでも味付けが飽きないような工夫が凝らされていた。

テーブルはいつも人がいっぱいで、どうしても相席になってしまうが、みな、若いガールのことを気にかけてくれる人が多く、居心地の悪さは微塵も感じなかった。

15分で昼食を食べ終わると、少し昼寝するために外へとやって来た。


「……あれ?」


 工場の裏手から、聞き覚えのある声がした。

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