再会
「ほんっとゴメンなさいっ、私、まともに働いたこと無くてっ、喫茶店も思いつくのって、メイド喫茶だけでっ」
前を歩くガールの後ろで、何やらゴチャゴチャ言っていたヨシコだったが、とうとう号泣し始めた。
「えっ……」
「わだじっ、何もじらなぐでっ、うっ、ごべんなざいっ、ううっ…… だがら、ぜっごうなんで、いわないでっ、エーン、エエーン」
「ちょ、ヨシコっ、恥ずかしいよ!」
道行く人が、二人を見てクスクスと笑う。
「絶交とかウソだから、やめてよ!」
「ガールば、ばだじのがーるずべじゃるだがら、ひっぐ」
「何言ってんだ、コイツ」
剣も思わず呆れるヨシコの体たらくだったが、ガールは思った。
そこまでして、ヨシコは自分のことを大事に考えていてくれてたのか、と。
「ほら、これでかんで」
「ありがど、ちーん」
ガールの服を少し裂いて、ヨシコに渡す。
「さって、ここら辺でいいかしら」
いよいよ、ガールが手に持っていた袋を剥がし、杖を取り出した。
「DOWSING WAND」
この杖の出番である。
ガールは、杖の玉を垂らし、体の中の魔力をそこに注いだ。
そして、探したい相手、マアムの顔を思い浮かべた。
(エドナが言っていた通りなら、この玉がお母さんの場所を指し示すハズ)
玉が宙に浮いたかと思うと、人差し指で催眠術をかけるかのように、ゆっくり回転を始めた。
「こっちよ!」
「がーる、まっでよっ」
ガールが玉の指す方向へと走る。
建物と建物の間を抜け、かなり大きな青果市場へとやって来た。
「失礼しまーす」
市場で働く人をジグザグ縫うようにして走る。
すると、巨大な蔵の前で、杖の玉が赤く光を帯びた。
「……ここ?」
「……ここに、マアムおばさんがいるの? ずず……」
市場の野菜を保管する蔵。
数歩下がって見上げなければ、全容が分からないほど大きい。
「いくよ、ヨシコ」
ガールが蔵の取っ手に手をかけようとした時だった。
男が怒鳴り声を出して近づいてきた。
「おめぇっ、部外者かっ!」
「ひっ……」
しまった、という表情のガール。
すると、ひげ面にタオルを首にかけたその男が、目をまん丸に見開き、言った。
「おめぇ、似てる。 まさか、マアムさんとこの親戚か?」
「え! マアム…… お母さんを知ってるんですか?」
「お母さん? お前っ、ガールちゃんか! ゼルダさんの言ってたガールちゃんかよっ」
なんと、その男はゼルダ、マアムと繋がっている冒険者の仲間の一人であった。
「……数ヶ月前からマアムさんをかくまってんだ。 この蔵ン中にいる」
「本当ですか!?」
(やっとお母さんに会える!)
ドクドクと心臓の音がする。
ようやく、母親との再開である。
「大変だったわね」
ヨシコが物思いにふけるような表情でガールに言った。
「うん」
「ガールの母親って美人なのか? なあ!」
「うっさいわね……」
蔵の扉を開けて、中へと入る。
辺りは暗く、野菜の生臭いような匂いが立ちこめている。
どんどん奥へと進むと、山積みになった段ボールの影に、編み込んだ赤い髪型の女性。
マアムが座っていた。
「お母さん!」
「……よく来たわね、ガール」




