レクチャー
ガールの魔力が解放され、早速、魔法のレクチャーが始まった。
「良いか、魔法は武器を具現化できる。 近接の剣、遠距離の弾などじゃ。 個人のスタイル次第じゃが、ワシは近接と遠距離を一つずつ持つことを推奨しておる」
「剣と銃か…… それってどうやって作るの?」
「そう焦るな。 剣も弾も自分のイメージから作り出すことが出来るが、魔力の配分によって武器の威力が変わる。 仮に、剣を9、弾を1の割合で分配すれば、剣はより硬度が高く切れ味の鋭いものになるが、弾はヒョロヒョロで命中精度、飛距離も出んものとなる」
「……それなら、5:5がいんじゃない?」
「そうじゃな。 まあ、それは好きにせぇ。 目をつぶって、武器をイメージしてみろ」
「……分かった」
ガールは、目をつぶって、ウサギから渡された剣をイメージした。
「イメージ出来たら、次は自分の体の中にある魔力を半分だけ取り出すのじゃ」
言われて気付いたが、ガールの中にも蠢く塊を感じることが出来た。
まるでふわふわした綿アメのようなそれを、ちぎって取り出すイメージを作る。
「おじいちゃん、で、出来たよ!」
いつの間にか、ガールの右手には青白く光る剣が握られていた。
同じ要領で銃も具現化する。
それらの武器は、再び魔力に戻して、体内からいつでも取り出せるとのことだ。
「必要最低限のことは教えたぞ。 あとは、お主次第じゃ」
「……ありがと、おじいちゃん」
「気を付けてな」
戦う力を手に入れたガールの気持ちは高ぶっていた。
しかし、これは無闇やたらと使うものではない。
自分を諭した後、木箱から飛び降りた。
老人が魔法で鯨を嘔吐かせ、ガールを海へと吐き出させた。
「ぷっは!」
海面から顔を出すと、既に夜明け。
魔法のレクチャーに丸一日を要していた。
泳いで陸地へと上がる。
まず、街へと向かい、仕事を見つけなければならない。
街へは一度訪れていた為、迷うこと無くたどり着くことが出来た。
街の入口の両脇には、色々な出店がひしめいてる。
以前はここで買い物して用事が済んでしまった為、これ以上奥へとは進んだことが無かった。
「おいっ、突っ立ってんじゃねぇ!」
突然、通りすがりの男に弾き飛ばされた。
「いったた…… 何よ、ひどい、わね……」
確かに、ボーっとしていた自分も悪い。
立ち上がろうとしたが、手足に中々力が入らない。
そこで、初めてガールは気が付いた。
今まで、かなり無理をしてここまでやって来た。
しかも、海に浸かってずぶ濡れ。
ガールは、風邪を引いていた。




