サイコパス
「私の家系って、代々ロッドショップの経営をしてきたんだけど、元を辿ると魔法使いだったらしいの。 だから、非戦闘員の私にも魔力が宿ってるって、向かいの八百屋さんが言ってた」
「えっ、八百屋? あ、まあ、それはさておき、確かにエドナにはすっごい魔力が宿ってるかも」
人の体内にある「まほら器官」と呼ばれる魔力製造器官。
これは本来、使わなければ衰退し、機能を失ってしまうものだが、先祖が魔法使いのエドナのこの器官は、むしろ通常よりも発達していた。
「分かったわ。 血ヘド吐く覚悟があるなら、私が教えたげる」
「ありがとう!」
こうして、ガールの地獄のレッスンが幕を開けた。
カフェ帰りにエドナの病室によると、「算数ドリル」や、「漢字ドリル」、時折「トランプ」なんかをして、ガールはエドナをしごいた。
「だから、ここはこうよ」
「うっ、ぜんぜい、ぜんぜんわがんないでずっ」
エドナが深くため息をつく。
「はあっ、アンタの脳みそは幼稚園児並みね。 死になさい」
「いぎだいっ」
こんなやりとりが1週間程続いたある日、エドナは青白い魔法の義手が使えるようになっていた。
「すごい、ガール! 私、魔法使えてる!」
「え、ええ……」
何も教えてないのに、天才かこの子? と思ったガールだったが、引きつった笑みでエドナを称えた。
「私、もう治療はいらないんじゃないかな。 ちょっと先生呼んでくる」
いきなりベッドから飛び降りたエドナ。
「ちょっ、まだ早いよ!」
血が大量に抜け、しばらく安静にしていなければならないエドナを引き留めようと駆け出し、廊下に出ると、何故かメイド姿のヨシコがいた。
隣のニノがいる病室の前で、何やらブツブツいっている。
「……さなきゃ。 私の…… ブツブツ」
「何してるの?」
「い、イヒイッ」
ガールに声をかけられ、動揺しまくるヨシコ。
手には包丁が握られている。
「よ、ヨシコ? それで何する気!?」
「あ、あわわっ、な、何でも、何でもないわよっ!」
「何でも無くないでしょ! 正直に言ってよ!」
「……に、ニノとイチカを、殺さないといけない」
「何でよ!」
「わ、私のゴリラのモノマネ…… 黒歴史…… 葬る……」
片言で何か言っているが、どうやらイチカとニノを引き留める為にやったゴリラのモノマネ。
あれが後になって死ぬほど恥ずかしくなり、それを見た二人を抹殺しようと考えたらしい。
「ヨシコ、それサイコパスだから!」
「いい年したおばさんがメイドの格好したり、魔法使いの格好したり、生き恥さらしてんのに今更だろ」
ガールの腰の剣が喋ると、一瞬空気が凍り付いた。
「……」
「あっ、ヨシコ……」
「それもそっか」
(……え、キレて包丁振り回すと思ったのに)
「ガール、ちょっと剣貸して」
「え、あ、いいよ」
「ウフフ……」
怪しい笑みを浮かべるヨシコ。
剣はその殺気を受け、叫んだ。
「やめっ、ガール、ヨシコに俺を渡すなああっ」
「ギャアアーッ、ぐっ、がああーーっ」
突然、廊下から叫び声が鳴り響いた。
「今度は何!?」




