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がーるすぺしゃる  作者: oga
食料庫、サーターアンダーキ
37/69

VS店員

(アンタの正義感はご立派だけど、それで勝てる程甘くないわよ)


 カボの強さは以前、セカンド・ヴィレッジで目撃していた。

兵士5人に重症を負わせたのは、ほとんどカボによるもので、オンラインゲームの仲間の中で一番敵に回したくない相手だった。

だが、ガールが剣を抜いた事で、ヨシコは自分も戦わない訳にはいかなくなってしまった。

さっきの二対一での立ち回りは、ロッドショップの店員のものでは無く、どうやら、カボの身体能力が黒髪眼鏡に宿っているらしい。

ガールの方もそれを理解しているのか、剣を構えているものの、踏み込めないでいた。


(前に剣を浴びせた時は、うまくいなされた。 隙を作らないと……)


「良かったのは威勢だけかよ」


「……!」


 突然、黒髪眼鏡が口を開いた。

口調はカボのもので、彼女の体を介してしゃべっているらしい。

ガールは、しめた! と思った。


「あなた、カボさんよね? あなたに言っておかなきゃならないこと、あるんだけど」


「……何だよ」


「あなたのせいで、あなたの仲間はみんな死んじゃったわ。 悪いって思わないの?」


「……」


「ネギさんは、とってもいい人だった。 スナックさんも、ちょっとスパルタだったけど、私を強くしてくれた。 あと、えーと……」


「名前忘れてんじゃねぇっ!」


 黒髪眼鏡が強く踏み込んだ。

しかも、狙ったのはガールではなく、ヨシコ。

ヨシコの武器は鞭であり、懐に侵入されたら対処できない。


「えっ、わたっ、まっ」


 慌てて鞭を束にしてガードを試みるも、カボの剣の方が早い。

剣が月明かりを反射させた。


「おらァっ!」


「キャアアッ」


 ヨシコが目をつむる。

が、しばらく経っても剣は振り下ろされず、ヨシコはうっすら目を開けた。

後一ミリ動けば頭に届く、という所で剣が止まっていた。


「……お客、様に、手を出さ…… ないで……」


 黒髪眼鏡が途切れ途切れにその言葉を紡いだ。

どうやら、カボの剣に抗っている様で、手が小刻みに震えている。


「邪魔を、するんじゃ、ねぇ!」


 黒髪眼鏡の静止も虚しく、再び剣の切っ先が空を差し、狂刃が振り下ろされようとした。


「ヤアアアーッ」


 横に一閃。

手首が宙を舞った。

カボの剣が地面に突き刺さる。

ヨシコの脳天に剣がめり込む寸前で、ガールが黒髪眼鏡の手首を払った。


「ヒイイイー……」


 尻餅を着くヨシコ。


「ぐっ……」


 手首を押さえてうずくまる黒髪眼鏡。

ガールが、ヨシコに向かって叫んだ。


「早く、ロープで腕を!」


「あ、あひっ……」


 へっぴり腰で何とか黒髪眼鏡の取りこぼした杖を手にし、それをロープ化して手首に巻き付ける。

目いっぱい強く結んで、止血した。


「ごめんなさい、店員さん…… でも、こうするしか」


「雑、です。 はあ、はあ…… あ、私、名前、エドナ…… エドナ・エリック」


「分かったから、今は喋らないで!」


 黒髪眼鏡の本名はエドナ・エリック。

何でこのタイミングで話したのかは分からない。

黒髪眼鏡と連呼されるのがシャクだったのか。

ヨシコがエドナを背負い、急いで医者の元へと運ぼうとした時だった。


「オイ」


「……えっ」


「俺を、置いてかないでくれ」


  

 

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