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がーるすぺしゃる  作者: oga
食料庫、サーターアンダーキ
35/69

作戦

「お前のその箱出し(新品)エルダーワンドなんかに負けるかっての。 あたしのはカスタムしてあんだからな!」


「でもこっちのおチビさん、差しでやったら負けてたかも……」


「相変わらず自己評価ひっくいな、オイ。 てか、腹減ったわ」


 モズクとイチカが去ると、ガールが起き上がった。


「ヨシコ、大丈夫?」


「いたた、あたっ、あいたたた…… あばら骨イッてるかも」


「うわあっ、すごい腫れてるよ」


 ヨシコの脇腹は赤黒くうっ血している。


「はあ~、もうどーすんのよ、コレ。 医者にかかるお金だってないのにさぁ」


「とりあえず、明日様子見して、折れてそうなら医者行こ」


「こんな時に時間を戻すウサギがいればさぁ」


「仕方ないよ」


 ブツブツと文句を言いながら、今日泊まる宿を探す。

公園に野宿という手もあるが、巡回している兵士に職質されるのはマズい為、何とかして宿を探さなければならない。

朝食付きの一泊100シルバーの高級ホテルには泊まれず、せめてシャワー付きの安いホテルを探す。

夜になり、ようやく見つかったのは、台所横丁から30分以上離れた、一泊5シルバーのボロ宿だった。


「2人で10シルバーですね。 はい、ありがとうね」


 ヨボヨボのおばあちゃんに案内されて、部屋へと向かう。

ギイギイとうるさい廊下を歩いて、開けるとガタガタと音のする扉を開ける。

室内には2段式のパイプベッドがポツンと置かれているだけであった。


「まあ、相部屋じゃないだけマシか。 はぁ~」


 バタム、とすぐベッドに横になるヨシコ。


「私、先シャワー浴びていい?」


「はいはい、いってら」


 こうして、2人はようやく寝床に着くことが出来た。

しかし、残金の関係で、ここに滞在できる期間は3日しかない。

その間に、タカタコーヒーのウェイトレスの誰かを倒さなければ、ホームレスコースである。

翌朝になり、早速タカタコーヒーへと向かったが、やはり簡単に返り討ちにあってしまった。

それでもめげず、2戦、3戦と繰り返したが、どうしても勝てない。

3日目の早朝、ホテルの床で緊急会議を開いた。


「とにかく、今日が最終日。 絶対に負けられないよ」


「知ってるわよ。 で、アイツらシフト勤務で昼と夜に分かれてる。 店には常に2人いるから、当然帰りも2人。 2対1には持ち込めないけど、今までの感じで誰が強いか、誰が弱いかがハッキリしてきたわ」


「数字の若い方が弱い、でしょ?」


「その通り。 名前に1が入ってるイチカが大人しめで一番弱い。 逆に、9の入ってるモズクが男勝りで凶暴。 だから、狙うのはイチカとニノね」


 ニノは男だが、どちらかと言えば草食系の男子である。


「で、今日、その2人が同時のシフトなのよね」


 ガールは店内に忍び込んでシフト表を紙に写してきた。

そこには、今日、夕方の勤務がイチカとニノになっていたのだ。

ガールはヨシコの目の前に手の甲を上に向けて、差し出した。

ヨシコもそれに習って、手を重ねる。


「ぜったーい、勝つぞーっ」 









 タカタコーヒーの前にある、いつもの空き家へとやって来ると、様子を窺う。

イチカとニノが店から出て来た。

例の如く、2人の後を追い、何らかの方法で路地に誘い込む作戦だったが、猫の鳴き声はバレバレで、犬、ニワトリもやってしまった為、苦し紛れにゴリラの鳴きマネをするヨシコ。


「ウッホ、ウッホ!」


「……またあいつら…… 無視無視」


(何やってるのよ、ヨシコ!)


 作戦失敗。

ガールは仕方なく、更に2人の後をつけた。


(やばい、どこか人目につかないとこに誘い込まないと……)


 ガールが焦り始めたころ、2人は公園へと差し掛かった。

ガールがジャングルジムの影に潜み、掌に魔力を集中させた。


(ここで、やるしかない)


「ダメよっ!」


 すると、背後から腕を掴まれ、びくっ、とする。


「な、何で止めるの!?」


「よく見て、兵士がいるじゃない」


「あっ……」


 焦りで周りが見えていなかったガールだが、ヨシコに言われて気が付いた。

兵士が2人、巡回している。


(危なかった~)


 ほっとしたつかの間、その兵士に誰かが近づく。

そして、懐から何かを取り出し、兵士に向かって振り下ろした。


「ぎっ、ギャアッ」


「……へ」


「なっ、なんだ、キサッ…… グアアアアーッ」


 兵士の絶叫が、漆黒の夜空に響く。

イチカ、ニノもそちらを見やった。

ヨシコは、兵士に斬りかかった人物を見て、ウソ…… と呟いた。

黒髪眼鏡のロッドショップの店員。

その彼女が、剣を持って虚空を見つめている。

手にしている剣は、カボの剣であった。

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