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がーるすぺしゃる  作者: oga
第二章 武器庫、セカンドヴィレッジ
27/69

ガールVSカボ

 スナックの特訓は、結果としてガールの魔法剣をより強力なものにした。

これは、意図した訳ではなかったが、2000回叩いた刀を打ち出したことで、より頑丈な剣をイメージすることができ、切れ味のカンストした剣を生み出すことに成功した。


(あれは、まともに受けたらもってかれんな)


 カボは、初めて自分が負けるかも知れない、という妄想を抱いた。

しかし、カボは街の人を助けるということに、並々ならぬ執着があった。


(昔の俺とは違う。 絶体に、逃げねぇ!)


 意外にも、カボは元々臆病なタイプの性格だった。


「エクスキューズミー……」


「げっ……! そっ、そりーっ」


 外国人に声をかけられてもすぐに逃げ出してしまう。


「すいません、どなたか席を譲ってくれませんかー」


「……」


 電車で老人が入って来ても、寝たふりを決め込んだ。

本当は、誰かの為に役に立ちたい、困っている人を助けたい、そういう気持ちは人一倍強かった。

しかし、肝心の行動に移す、ということが心底苦手だった。

そんな自分に嫌気が差し、この世界では絶体に逃げ出さないと誓いを立てていたのだ。


(あんな人生経験の無さそうな、薄っぺらな奴にはぜってー負けねー)


 カボは、雄叫びを上げて気合いを入れた。


「っしゃあ! かってこいやあああっ」


「……!」


 ガールは、カボの中にある魔力が滲み出し、剣に纏わり付くのを肌で感じた。

方法を知っていた訳では無かったが、カボの負けたくないという意志が、無意識に魔力を引き出したのかも知れない。

両者、魔力で強化された魔法剣を掲げ、次の瞬間、それが交差した。

キイイン、という金属音。

  

「……くっ」


 交差した剣は、十字の形で止まった。

カボは、ガールの剣擊をやや引き気味に受けて、衝撃を緩和。

自分の剣を折ることなく止めることに成功すると、そのまま右手の甲で剣の腹を押し、打撃を加えて相手の剣を押しのけた。


「キャッ」


 ガールの構えが浮き、拳一個分程度の隙間ができた。


「ハアッ!」


 その隙間目がけて、カボが剣を突き出す。

切っ先がガールの喉元に触れた。


「……うっ」


「俺の勝ち、だな」


(強い……)


 ガールは、潔く負けを認めた。


「負けました……」


「どの道、俺には勝てなかったな」


 カボが背を向けて、宿に戻ろうとした時だった。


「あ、あのっ、私に剣を教えて貰えませんかっ」


「何だって?」


「私、魔法の使い方教えるんで…… お願いしますっ」


 

 

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