ご都合展開?
アームレスリングの会場は工場地帯と住宅街の間にある中央広場。
既にガールとスナックは会場入りし、抽選を決めるボックスに手を突っ込み、数字の書かれた用紙を抜き取った。
そこに書かれていた数字は「2」。
ガールは初戦、「1」の数字を引いた者と戦うこととなった。
その相手は、前回準優勝のブレイブという黒人男性だった。
身長2メートル、体重120キロの筋肉質な巨漢である。
「アンタって、マジでくじ運ないわね」
スナックがボソリ、と呟く。
「大丈夫ですよ。 私、今は負ける気がしません」
「……とにかく、特訓の成果に期待するしかないけど、負けたらダサいわよ?」
「スナックさん、私、ここに来てから何度も奇跡を起こしてるんです。 見てて下さい、三度、起こして見せますから」
「ゴタクはいいから、いってらっしゃい!」
バン、と平手でガールのケツを叩くと、スナックはガールを送り出した。
「レディースエンドジェントルマン、これより、アームレスリング大会を開幕します。 記念すべき初戦は、ガールVSブレイブ。 両者、前へ!」
中央に歩み出ると、2人は倚子に腰掛け、テーブルに肘を乗せた。
「おい、こりゃあ、どーやって組むんだ?」
ブレイブの手のひらはガールの5倍以上あり、どうやっても組むことが出来ない。
すると、ガールの右腕が青白く光った。
「これで、組めるでしょ?」
魔法によって具現化された、義手。
「おいおい、レフェリー、こりゃあ反則じゃねーのか?」
レフェリーは首を振る。
どうやら、試合続行のようだ。
お互い、手を組み交わす。
(妙に落ち着いてる。 スナックさんの特訓のお陰だ)
「レディー……」
ガールは、一気に集中した。
刹那、ギャラリーの中に腕を組んでこちらを見守るカボの存在に気付く。
ガールの闘志に、火が付いた。
「ゴッ」
ドオン! という轟音が轟く。
片方の腕が一気にテーブルに叩きつけられ、砕け、木片が辺りに飛び散る。
勝負は一瞬で決した。
「ッギャアアアアアアアーーっ」
ガールの青い腕は、台風が通過した後の大木の様に、へし折れた。
「勝者、ブレイブ!」
「うでがあああっ、うでがあああっ……」
「がはあっ」
ガールは、目を覚ました。
「……えっ、ゆ、夢? 悪夢?」
ガールの額には脂汗がべっとりと滲んでいた。
部屋を見渡すと、すぐ横にはネギがすやすや寝息を立てて眠り、スナックは壁にもたれてグゴ、グゴゴ、と眠っている。
(そうだ、眠る前にスナックさんにマッサージしてもらったんだ。 お陰で肩が軽いや)
ガールは物音を立てないように、忍び足で部屋から抜け出した。
そして、ある思惑を抱いて、男子らの宿舎へと向かった。
(アームレスリングで勝ち進まなくたって、カボさんを納得させる方法はあるハズ)
毎日鉄を扱っている屈強な男を倒して、カボまで辿り着くのは現実味が無い。
ガールは今朝の夢を見てそう感じ、別な手段を取ることにした。
男子らの宿舎の前まで来ると、扉をノックした。
扉を開けて現れたのは、ナスビ。
「何? まだ早くない?」
「あっ、ごめんなさい。 あの、カボさん、起きてます?」
「……ちょい待ち」
ナスビが引っ込むと、しばらくしてカボが現れた。
「一体なんだよ。 ふあ~あ……」
「アームレスリングのことは忘れて、私と剣で勝負してくれませんか? あなたを認めさせるのに、わざわざ腕相撲しなくていいかなって」
しばらく間があって、カボが笑った。
「はっ、ちげーねーわ。 おめぇじゃどうやっても勝ち進めねぇだろうしな。 ちょっと待ってろ」
こうして、カボと剣による勝負が早朝行われることとなった。
部屋に戻ったカボは身支度をして、まだ誰もいない道路の中央で剣を抜いて構えた。
「お前の得物は?」
ガールは、体の中の魔力を右の手のひらに集中させた。
さすがに、この前みたくチェーンソーを取り出すわけにはいかない。
代わりに、白銀の剣を具現化させる。
「……っと」
カボがその刃を見て、冷や汗を流した。
それほどまでに、その剣は研ぎ澄まされていた。




