過激な作戦
「ふぅん、アームレスリングか。 面白ぇ。 それで俺を負かすことができたら、お前がリーダーの件、考えてやってもいいぜ。 っし、男子は俺についてこい!」
「えっ、オレ、女の子と……」
「るせぇ、ゴン。 てめーはこっちだ」
「私はどっちに付けばいいのかしらン?」
「キモいから付いてくんな」
カボ、ナスビ、ゴンの3人は霧の向こうへと消えた。
スナックが腕を組みながら、フンッ、と不機嫌そうにこちらに向き直った。
「ほんっと、失礼しちゃうわね。 でもガールちゃん、アンタなら魔法使ってちょちょいっ、で優勝できちゃうんでしょ? 肉体強化に魔力全振りとかすればさ」
「え、そんなことできるんですか?」
「……いやいや、魔法のことなんて私、全然知らないわよ」
「私も全然知らないんですよね~、ははは」
「ははは、じゃないわよっ!」
「おっ、いたいた。 終わったか?」
気付くと、チカがガールの後ろの方に立っていた。
「あっ、チカさん!」
「ゴタゴタが片づいたみたいだから、ワシはもう帰るぞ」
「それは構わないんですが、あの、代金とかは……」
「ウサギの魔法使いたい放題って話じゃったな。 ただ、アレは24時間前の自分までしか戻せんらしいからの。 持病の腰痛を治して貰おうと思っとったんじゃが、仕方ない。 お主に「貸し1」じゃな」
「……すいません」
「で、今夜泊まるとこはあるんかい」
チカが問うと、ネギがすぐに答えた。
「あ、泊まるとこなら私たちの宿に泊まってもらおうかなって」
「なら、ええわい」
そう言って、チカは自宅のアパートへと帰って行った。
ガール、ヨシコ、ネギ、スナックの4人も、墓地から離れ、自分たちのいつも使っている宿屋へと戻った。
夜はすっかり更け、みな、シャワーを浴びて各自布団を敷き始めた頃だった。
突然、ドアをノックする音がし、開けると、慌てた様子のゴンが現れた。
「……アンタ、一体何しに来たのよ」
キツイ口調でヨシコが聞くと、ゴンはとにかく中に入れて! と無理矢理押し入った。
「はあっ、はあっ…… 大変だよ。 さっき、カボからとんでもない話、聞かされたんだ」
「とんでもない話?」
「そう。 カボ、近い内にここにつめてる兵隊たちに攻撃を仕掛けるらしいんだ。 そして、それが終わったら、ここにある溶鉱炉を全部火薬で吹き飛ばすって……」
みなの表情が凍り付く。
恐る恐る、ネギが聞いた。
「ゴン君、それ、本当?」
「……うん。 火薬庫の在処も確認済みって言ってた」
「ゴンちゃん、決行はいつなの?」
「アームレスリング大会の翌日だって。 そこで、自分がリーダーになったら、みんなを巻き込んでやるらしいんだ…… 俺、反対しようとしたんだけど、強く言えなくて」
スナックがため息を吐いた。
「はあっ、アイツ、日本人のクセに、何でそんな過激なこと思いつくのかしら。 それじゃ、テロリストと同じよね」
「俺、トイレ行くって抜け出してきたから、もう戻らないと…… とにかく、伝えたから」
そういうと、ゴンは慌ただしく駆け出し、あっという間にいなくなった。
「さぁて、カボの奴を何とかして止めないとね」
「ガール、ちょっといい?」
「……?」
「2人とも、すぐ戻るから」
ヨシコが立ち上がると、ガールを外へと連れ出した。




