唯一無二の友達
頭蓋骨を掲げ、投げようとした時だった。
急に足元から伸びてきたロープが絡みつき、スカル・ナイトは引き倒された。
ガールは、一瞬、何が起きたのか分からなかったが、即座に方向転換して背後のスカル・ナイトを両断。
どうにか、全てのモンスターを撃破することが出来た。
バラバラになったスカル・ナイトの足首に絡まったロープが外れ、現れたヨシコの手に収まる。
「……ヨシコさん、助けてくれたの?」
「ヨシコでいいわよ。 水くさいわね」
目線を少し外して、少し照れ臭そうなヨシコ。
「ありがとう!」
「だから、そういうのはいいって。 あなたは私のガールスペシャルなんだし」
「え? ガール何? ちょっと聞こえなかった。 これ、消さなきゃ」
チェーンソーが光の粒となって消える。
ヨシコは、ゴニョゴニョと口の中でガールスペシャル、と何回か唱えたが、急に恥ずかしくなって、こう答えた。
「あなたは友達なんだから、助けて当然でしょ」
「……」
(な、何よ…… この間、怖いんだけど……)
まるで、いい映画を見終わた後のような、ジーン、とした表情でヨシコを見つめるガール。
「……そうだよねっ! ヨシコと私、友達だもんね!」
いきなりヨシコの手を取って、その場でステップを踏むと、成り行きを見守っていたネギが飛び出してきた。
ゴンが引きつった顔で叫ぶ。
「ネギちゃん、危ないよ!」
膝に手を突いて、はあはあ息を切らしながら、ネギが2人を見る。
「マジョルカ、心配したよ。 この子、私たちのこと助けてくれたんだね?」
マジョルカって誰? とガールはもじゃもじゃ頭のネギを見たが、ああ~、と拳を掌に置いた。
「ヨシコ、まだホントの名前教えてなかったの?」
「……うっさいわね。 こいつら、オンラインの仲間だからお互いそういう風に呼んでるだけよ」
「えっ、マジョルカの本名気になる! 良かったら、教えて欲しいな」
「ガールズトークはキリがねぇな」
突然、響いた男の声。
その主は、カボだった。
「お前、良く生きてたな」
「……うるさいわね」
「ダチの前だと随分強気に出るじゃねーか、マジョルカ」
ヨシコは心のトラウマから、押しの強い男子と口をきくことができないでいたが、死を克服したことで、並大抵のことには動じなくなっていた。
他のメンバーが合流すると、スナックが言った。
「もしかして、この子が例のガールちゃん? 師匠の話じゃ、この子を探してリーダーにしろって話よね」
みなが、顔を見合わせる。
「こんなチビが、俺らのリーダー?」
「私でも、大丈夫ですか?」
遠慮がちに辺りを見回すガール。
「ねぇ、とりあえず宿戻らない? オレ、シャワー浴びたいよ」
「そうだね、向こうで詳しい話、しましょっか」
賛成~、とゴンの意見にみなが同意し、移動しようとした時だった。
「待てよ!」
「……どうしたの、カボ?」
「俺はこいつがリーダーとは認めねぇぜ。 これからは俺が指揮をとる」
「困ったちゃんね~、アンタは。 で、どうしたいのよ」
「魔法云々やってる暇はねぇって話さ。 この街にいる兵隊どもをぶっ倒して、ヘンドリクセン王に宣戦布告する」
「それはまだ早いンじゃないの?」
「だからって、この現状を見過ごす気か? 過剰な武器防具の製造で、この街は煙だらけだ。 肺をやられて死人が後をたたねぇ。 俺は一刻も早く、この現状を何とかしてぇ!」
「……はぁ、だったら、あ、ちょうどいいわ」
スナックは、風で飛ばされてきた足元の用紙を引っ掴むと、読み上げた。
「アームレスリング大会、これで決めましょう」




