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がーるすぺしゃる  作者: oga
第二章 武器庫、セカンドヴィレッジ
18/69

野菜なメンツ

「さあっ、ガール、戦闘の準備はいい?」


 肩に背負っていた杖を手に取るヨシコ。


「ちょっと、待って下さい! その5人と戦うんですか? ヨシコさん、もう少し良く考えた方が……」


「あのね、国に冒険者を引き渡さないと私たち、殺されるか一生奴隷なのよ? これが絶好のチャンスだって分かってるの?」


「……でも、昔、友達だったんでしょ? もう一度仲直りして、仲間に入れてもらって、それで助けて貰えば……」


 突然、ガールの胸ぐらを掴む。

そのあまりの勢いに、ガールは目を丸くした。


「うっ」


「何偉そうに説教してんだよ、テメェ、いつから私より上ンなったんだよ、ああっ!?」


「誰があなたを助けたか、分かってますか?」 


 テリーが、冷静な声で呟いた。

その声に、思わず我に返るするヨシコ。


「……ご、ごめんなさい」


「……」


(もう、どうなっても知らないから)


 こんな人のこと、放っておけば良かったかも知れない、そんな思いが一瞬過るガールであった。







「この居酒屋じゃな」


 5人のいる居酒屋から少し離れた場所から、様子を窺う。

居酒屋は、簡易的なシートで作られた屋根があるだけのオープンスペースで、外から様子が丸見えである。

飲酒店はどこも値段が高沸していたが、ここだけはリーズナブルな値段で酒や食べ物を提供しており、割と賑わっていた。


「いたわ、アイツら……」


 ヨシコが飛び出そうとした時、ガールがあることに気が付いた。


「ねぇ、武器、持ってない?」


 確かに、テーブルを囲むメンバーの腰や肩には、鞘に収まった剣が携えてある。


「……そんなの、関係ないわ。 不意を突けば……」


「ヨシコさん、待ってよ! あなたが一番知ってるでしょ。 オンラインでずっとやってた人らだよ? 連携だってうまいと思う」


 不意を突いて最初に何人か仕留めたとしても、こちらは戦力になるのはガールだけである。

ヨシコは杖で相手を拘束するのが関の山だろうし、テリーは戦闘員ではない。

チカは戦えたとしても、そもそもそういう契約はしていない。

テリーが言った。


「それに、5人以外にもう一人いるみたいですね」


「えっ」


 ガールとチカの2人が同時に返事をした。

目をこらすと、確かに、フードを被って良く顔は見えないが、誰かがいる。


「あんな奴、知らないんだけど」


 ヨシコがボソリ、と呟く。


「私が様子を確認してきますよ」


 テリーがぴょんぴょん跳ねながら、居酒屋の方に向かった。


「ちょっと! もう、気をつけなさいよ~」


 ガールは、手のひらを口の横に当てて、小声でテリーに忠告した。

 しばらくして、テリーが戻って来ると、得た情報をみなに伝える。


「ぜぇ、ぜぇ…… えーと、彼ら、どうやらこれから魔物退治に行くみたいです。 相手はこの街に夜な夜な現れるスカル・ナイトとのことです」


 途中、珍しい懐中時計を持つウサギが現れ、何これ、かわいい! とネギに頬ずりされ、それを見守るガールたちはかなり焦ったが、どうにか戻って来れた。


「ヒヤヒヤさせないでよね…… じゃあ、アイツらが魔物と戦ってる所を狙って、仕掛ければいいのね」


(ちょっと、卑怯な気もするけど……)


 若干、後ろめたい気持ちのガールだが、今までのことを考えると、今更である。


「もう一人の正体は分かったの?」


「……いいえ。 ただ、みんなが「師匠」って呼んでました。 顔は、ヒゲ面に傷が一杯」


「ナニソレ、強そう……」


 ガールがげんなりする。

しばらくして、フードの男が立ち上がり、会計を済ませると、ヨシコが言った。


「び、ビビってんじゃないわよ。 行きましょう」

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