一応メモは取りましょう
「名前言ってくから、メモの準備はいい?」
「大丈夫じゃ、頼む」
「まず、ナスビ。 性別は男で、年は20だったかな。 前髪ばっか気にしてる奴で、オンラインやってた時は吟遊詩人をやってた。 次がカボ。 こいつも男だけど、会った時はかなり生活悪くてムカついたわ。 思ったことは何でも言っちゃうタイプね。 オンラインの時はナイトをやってた」
「あ、オンラインゲーム云々は省略してくれて構わん」
「……あっそ。 えーと、次がネギ。 一応、女。 私らのチームの取りまとめ役で、別行動をとった私を最後まで心配してくれてた。 頭がパンチパーマで、最初会った時は驚いたけどね。 後は、ゴン。 ぼーっとしてて、何考えるか分からない奴。 最後はスナック。 オネェでキモい。 以上よ」
「……何じゃったか。 もう一回言ってもらえんか?」
「はあーーっ、何なのよ! もう、メモ取れって言ったわよね!? もう、じゃあ、名前だけ言うからちゃんと聞いてね? ナスビ、カボ、ネギ、ゴン、スナックよ。 ナスビ、カボ、ネギは野菜って覚えて、スナックはお菓子、ゴンはタンスにゴンとか適当に覚えればいいわ」
「うむ、分かった!」
(ほんとかしら? なーんか、すっとぼけた奴ね。 しゃべり方もハバ臭いし……)
ヨシコが悪態をついていると、チカはおもむろに机の引き出しから地図を取り出した。
その間、暇だったガールとテリーはベッドに寝転んで、棚にあった「エスパーチョムカ!」という小説を読んでいる。
「これ、面白いかも!」
「ガールさん、読み終わったら次は私に」
「あなたはしばらくここにいるんだから、いいでしょ」
揉めてる2人を横目に、チカが机の上に地図を広げる。
「あ、まだ私、飲んでなかった」
「ちょっと待つのじゃ」
手にしたヨシコの紅茶のグラスを手に取ると、それを地図の上に垂らした。
「え、何してるの?」
「ワシの魔法で、5人の居場所を占う」
地図の上に垂れた紅茶のシミが、どういうわけか、移動する。
そして、5つの場所を示した。
「もしかして、このシミの所にあの5人がいるの?」
その場所は、5つとも工場を指し示していた。
「どうやら、昼間は工場で働いとるらしいの。 仕事が終わって帰宅するのを待つのじゃ」
「なるほどね。 そうすれば、ヤツらの住処が分かる」
こうして、ガールたちは仕事が終わる夜までこの家で待つことにした。
「あっ、シミが動いた!」
時刻は夜中の7時。
シミが動き出し、とある場所に集中した。
「ここは、居酒屋じゃな」
「仕事終わりに、一杯引っかけようって訳ね。 私たちも行きましょう。 一網打尽のチャンスよ」
ヨシコが立ち上がった。




