ミステリーの舞台と言えば
列車から下車すると、うっすらと霧がかった駅のホーム。
このセカンド・ヴィレッジは武器防具、その他弾薬などを製造する工業地区である。
遠くからで出稼ぎでやって来る者も多く、住宅も数多く存在する。
「げほっ、げほっ…… この街って、どこもかしこもこんな感じなんですか? ごほっ」
ガールが苦しそうな表情でチカに聞く。
「仕方ないじゃろ。 こっちがウチじゃ、ついて来い」
ギシギシとホームを歩いて、切符を駅員に渡す。
チカに続いて工場の立ち並ぶ一角を横切る。
「……ところでヨシコさん、こんなに働く所あるのに、何で隣町に移動して来たんですか?」
「鍛冶仕事を私にやらせようっての? か弱い乙女の私に」
「えっ、でも…… オンラインゲームの友達はここで働いてるんですよね?」
「う、うるさいわねっ! ……アイツら、こっちに来てから妙に張り切っちゃってさ…… 私のことなんかすっぽかして、ふざけんなよ」
かつての仲間の不満を漏らすヨシコ。
(それで仲たがいして別れちゃったのかな……)
そんなことを思っていると、古めかしいアパートの前に到着した。
脇のらせん階段を上り、3階の一番奥の部屋がチカの住まいだった。
鍵を取り出し、中へと入る。
ガール、ヨシコ、テリーの3人もチカに続いて中へと入る。
「お邪魔しまーす」
他人の家特有の何とも言えない匂いが鼻をくすぐる。
室内はそれ程広いとは言えなかったが、独り暮らしにはちょうど良い間取りだ。
入り口付近がキッチンで、ガスはプロパン。
左手にはシャワーとトイレが一体型になったユニットバスがついており、その奥が生活スペース。
ピンクで統一された机、テーブル、ベッドが置かれていて、小さいサボテンがテーブルの上にちょこんと置かれている。
天井からは薄いガラスの間接照明がぶら下がっており、それについてる紐を引っ張るとオレンジの柔らかな光が部屋を包んだ。
「ちょっと狭いかもしれんが、我慢してくれ」
「ほんっと、狭いわね」
「ちょっと、ヨシコさん! あ、あんまりお気になさらず……」
テリーがベッドの上にダイブする。
「わあっ、ふかふかですね!」
「昨日干したばっかりじゃからな」
キッチンでお湯を沸かしながら、チカが答える。
「ヨシコさんの家だったら、もっとジメジメ~ッ…… としてそうですよね」
「はあっ!? 何なのこのウサギ、喧嘩売ってる?」
マジのトーンだった為、若干慌てるガールだったが、ナイスタイミングでチカが紅茶を運んできた。
「わあっ、良い香り!」
「ハチミツが棚にあるから、勝手に使ってくれ。 して、ヨシコ。 主の探してる5人の仲間とやらの名前を教えてくれぬか?」
「……分かったわ」




