チカの仕事
「……なーんてね。 どう? 退屈しのぎにはなったかしら」
「……やっぱり、ヨシコさん、あなたが……」
「なーにマジになっちゃってんのよ! ほんのジョーダンよ、ジョーダン」
ヨシコは立ち上がると、2人の間に割って入り、どこかへと向かった。
逃げる気か、とも思ったが、列車は走行中で逃げ場などない。
そうこうしている内に、ヨシコはロープでグルグル巻きのテリーを掴んで帰ってきた。
ヨシコが杖に命じると、ロープが解け、元の杖の形状に戻る。
「げほっ、げほっ」
「テリー、大丈夫?」
「何が何やら…… 気が付いたら身動きが取れなくて」
ヨシコはテリーの持つ不思議な力に目をつけていた。
みなが寝静まった瞬間、ヨシコはテリーを強奪して、売り飛ばしてしまおうと咄嗟に画策したのだが、それは失敗に終わった。
ヨシコは、それを悟られまいと即座に話題を変えた。
「ささ、万事解決! ……ところで、チカ、だっけ。 アナタ、何者なの? 私のトリック、初見で全部見破るなんて」
ヨシコはチカの推理通り、杖をロープにして、一旦テリーを捕獲。
その後、カートに結んでテリーを隠した。
これをノーヒントで言い当てたとなると、ただ者ではない。
「胡散臭いお主に素性を説明するのは乗り気にはなれんが…… ワシは探偵じゃ」
「はっは~ん。 どうりでね」
「あの、失礼でなければ、何でチカさんはファスト・レイクにやって来たんですか? もしかして、何か、事件的な……」
「ただの仕事じゃ。 こっちに住んどる依頼人の旦那が、ファスト・レイクに夜な夜な足を運んどるゆーて、もしかしたら不倫しとるんじゃないかって疑っててな。 結局、旦那はカジノに行っとるだけで、奥さんの取り越し苦労じゃったが」
「あの、チカ…… さん。 ちょーっと、私たちの依頼も聞いて貰ってもいい?」
一瞬、ガールが首をかしげる。
「私たち」の依頼に心当たりが無かったからだ。
「何じゃ?」
「セカンド・ヴィレッジにいる、とある冒険者5人を探して欲しいのよね。 私の元・仲間なんだけど」
「ヨシコさん、それって……」
ガールはピンときた。
ヨシコは元の世界にいたオンラインゲームの仲間を探し出そうとしている。
そして、それは決して自分たちの仲間にするために合流しようという訳ではない。
恐らく、ヨシコはその5人を国に売るつもりなのだ。
「ただし、金はきっちり貰うが」
「いくら必要なの?」
「……そうじゃな。 かかった日数にもよるが、一日で100シルバーかの」
「げっ」
ガール、ヨシコの手持ちは合計して50シルバー。
これでは依頼することは出来ない。
「……ねぇ、お金は無いんだけど、これならどう?」
ヨシコが、テリーを指差す。
「……え、ワタシ?」
「このウサギ、すっごい力、持ってるのよ。 どんな傷でもたちまち治しちゃう能力。 調査期間中、その力、使い放題ってゆーので、どう?」
「ほう! そいつはすごいの……」
「え、ちょっ……」
チカが物珍しそうにテリーに顔を近づける。
「……ええぞ。 そんなら、それで手ェ、打とうかの」
交渉が成立したと同時に、列車はセカンド・ヴィレッジに到着した。




