選択肢は3つ
「ちょっと、待ちなさいよぉ~っ」
振り返ると、すっかり元気そうなヨシコの姿。
「わ、私を勝手に助けておいて、そのまま行っちゃうつもり!?」
「あっ、ご、ゴメンなさい……」
相手の強い口調に、思わず謝ってしまうガール。
「ば、バカ、違うわよ。 ゴニョゴニョ……」
「……? 何ですか?」
赤面して、真っ直ぐガールを見れないヨシコだったが、生まれて初めて、相手に対してこの言葉を使った。
「た、助けてくれて、ありがとね……」
すると、ガールは満面の笑みになって答えた。
「良かった~! 勝手に助けちゃって、怒られたのかと思っちゃった」
「……」
その後のセリフには無かったが、ヨシコは自殺したことを後悔していた。
ナイフを首に突き立て、地面に伏してから、意識はハッキリとしていた。
どんどん深い闇に落ちていく感覚。
何とかそこから這い上がろうともがくが、体は全く動かない。
死ぬとこんな風になるのか、とヨシコは思った。
意識は体を動かそうともがき続け、それが永遠に続く。
そんな中、声がした。
その声のお陰で、こちらへと戻ってくることが出来た。
「……あっ、待ってよ」
再び、自分を追いて先に行ってしまったガールたちを、引き留める。
「まだ、何か?」
「……私も、連れて行きなさいよ」
「えっ! ……えーと、どうしよ、テリー」
「仲間は多い方がいいかと。 私は構いませんよ」
「私も、全然。 じゃあ、行こっか」
「やった~!」
こうして、ヨシコが仲間になった。
とは言え、これから先、行く当ても無かった3人は、とりあえず有り金がいくらあるのかを計算して、どこに向かうのかを話し合うことにした。
噴水広場の噴水のふちに腰掛け、意見交換をする。
「とりあえず、異世界の冒険者の死体を集めないといけないのよね……」
ガールが深いため息をつく。
死体集めなど、乗り気になれるハズがない。
「確か、ヘンドリクセン王が懸賞金をかけてるのよね」
ヨシコが言うと、テリーが補足を始めた。
「そうですね。 近頃、ヘンドリクセン王は異世界への進出を狙ってるとのことです。 それを聞きつけた冒険者たちが、ヘンドリクセン王と敵対して、今、戦いが勃発しています」
「えっ、ここの世界の王様が、こっちの世界に来ようとしてるの!?」
ガールは、困ったことになった、と思った。
何故なら、自分の元の世界を守ろうとしている人間を、自分は殺さなければならないからだ。
「金貸し連中をまけないかしら?」
ヨシコが腕を組んで提案する。
「ガールさんの魔力と顔が割れてるんで、厳しいかと」
「……選択肢は3つね。 一つ目は普通にお金を稼いで利息含めて返金。 二つ目は冒険者の死体を5体、金貸しに引き渡す。 最後は、このまま何とか逃げ切る」
「……」
最良の選択肢が見つからない中で、ヨシコが立ち上がる。
「まあ、悩んでても仕方ないし、とりあえず行かない?」
「えっ、どこに?」
「アレよ」
ヨシコな、街の奥の方を指差した。




