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一日目 お爺ちゃんは窓の外



一日目 お爺ちゃんは窓の外






とあるご家族から伺った話です。


あるとき、そのご家庭の母親が入院することになりました。

少し難しい病気との事でしたが、父親と息子さんが毎日のようにお見舞いに来てくれて、容態も徐々に快方に向かうように思われました。


じわじわと蝉の鳴く夏の日、

その方の息子さんは6歳でしたが、その日、窓の外を指してこのように言いました。


「おじいちゃんが、おみまいにきてるよ」と。


それを聞いた母親は、少し複雑な顔をしました。


その子の言うには、お爺さんが病室の外にいて、親子三人で過ごしているところをじっと見ている、とのことでした。その病室は四階にあり、窓の外に立つ場所などありません。

それ以前にそのお爺さんは、少し前に亡くなっていたのです。


家族全員に慕われていた、良いお爺ちゃんだったそうですが、まだ60そこそこでのご逝去だったとか。


両親は半信半疑でした。

あまりに突飛な話ですが、しかし嘘を言うような子ではないし、窓の外を向いてじっと立ち尽くす息子の姿は、確かにそこにいる何かを見つめているように思えました。


その日から、母親の容態は停滞していました。

病状はずっと回復せず、医師の懸命な治療もなかなか結果に現れません。季節は夏から秋となり、母親は長引く入院に、少し疲れて痩せているように見えました。


その頃になると母親は、よくお爺ちゃんの話をするようになっていました。お爺ちゃんを懐かしく思う気持ちは強く、秋の空が広がる病室の窓をじっと見つめ、思い出話を家族と分かち合います。そうしていると、気のせいか、もやのようなものが揺れ動くような気がしました。あの影がお爺ちゃんなのかと思うと、涙がこみ上げる気がしたそうです。


母親は息子さんに聞いてみました。お爺ちゃんはどんな格好をしてるの、とか、どんな顔で私たちを見てるの、と。


息子さんが、答えるには。


お爺ちゃんは裸で、背中から黒い手のようなものが何本も生えていて、それで窓をかりかりと引っかきながら、けらけら笑って僕たちのことを見ている、との事でした……。



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