第1章-2 いざ街へ
ちょっと短いかも知れませんがこれぐらいで投稿していく予定です。
頑張ります。
「ゲプッ…」
ライム君はお腹いっぱいのようだ。…今何処から音出た⁉︎
ライム君は置いといて…
ライム君と戦ったこともあってお腹もすいている。
(食べ物かぁ…考えてなかったな)
よく分からないところに飛ばされていきなりモンスターと遭遇したのだ。そんな事考えてられない。
とりあえず衣食住は考えておきたい。
衣は当分大丈夫なはずだ。おそらく香水ぐらいなら沙耶が持っているだろう。
住もあの大きな木の周りならなんとかなりそうだ。
問題は食だ。丘の上から街が見えた。だが街の周りには柵があった。おそらく警備もいるだろう。身分の分からない俺たちを受け入れてくれるだろうか。日本円が使えるとも思えない。
考える時間はそんなに無いだろう。
チラッとライム君を見る。木の棒を端っこからむしゃむしゃ食べ始めている。
美味しそうではない。
だが生きているだけあってそれなりに栄養はあるだろう。
そういえば沙耶と神社でベビーカステラを買った気がする。
食べようって言っても帰る時の楽しみだからと言って食べさせてくれなかった。大事そうにトートバッグに入れていたから多分あの中だろう。
勝手にバッグの中を漁るのは気がひけるので起きた時に見てもらおう。
(喉乾いたしお茶でも飲むか。)
自分のトートバッグに手を突っ込む。
(遊びに行く時にはお揃いのトートバッグを持って行くようにしている。昔は邪魔で仕方なかったが、本やお茶を入れるのにかなり使いやすいという事に気づいてからは外出の時は持ち歩く事にしている)
お茶はどこかな…と思うとパッと手に触れた。
少しだけ飲んでしまうつもりだったが飲み始めるとライム君が近づいてきてニュッと上に伸び上がった。
好奇心旺盛なスライムだなと思い、上からチョロっとかけてやる。
かけられたお茶で少し身体に緑が混じったが少したったら青一色に戻った。
ライム君は満足したのかびよんびよんしている。
(あれ?)
お茶を直そうとトートバッグに入れようと近づけた時だった。
ペットボトルの感触が急になくなった。
落としたのかなと辺りを見渡すがそれらしいものはない。
ライム君は伸びきった状態で固まっていた。
バッグの中を見てみる。ライム君は肩までよじ登ってきて一緒に覗き始めた。いつもは乱雑なバッグの中身はとても綺麗に並んでいた。心なしか物が小さく見える。バッグを逆さまにしてみるが何も出てこない。
足元に生えている草を2.3本千切っていれてみる。
すると草のうち一本だけお茶の隣に並んだ。
その横に小さく <3> とかかれている。3本入ってるようだ。
手を入れてみるが掴めない。だが頭の中で草と念じると取れるようになった。
草を全て取りだしてみると確かに3本だった。
(ふむ…)
何気なくライム君を見る。ライム君に目は無いが目が合った気がする。
そそくさとライム君は降り始めた。
龍也は逃がさんと手で掴もうとする。
手がライム君を捉えると手はライム君の中にめり込んだ。
(なっ⁉︎)
ライム君は透明化…いやとても柔らかくなっていた。
まるで水を触っているようだ…気持ちがいい。
(こいつこんな事出来るのかよ)
手を抜くとライム君の身体の色が少し濃くなり、左右にニョキニョキし始めた。
(あ…煽ってやがる…)
ライム君はマナーが悪い。…意地でも捕まえてやる。
近くの草を少し千切りライム君に差し出す。
ライム君は警戒して少しさがったが、じわじわ近づいて草を吸収した。
隙あり!と手を伸ばすとまた透明化した。
心なしか笑ってる気がする。が、これも作戦のうち。
透明化している時はおそらく移動出来ないはずだ。
そこを狙う。
横からバッグを近づいて行く。
若干ながらライム君は逃げている。
(捕食されてるのかと思っていたけど実際は身体の粘度を下げてたのか?器用な奴だな)
バッグの入り口をくっつけた。
ヒュン。
一瞬でライム君の身体は消えた。
バッグの中を覗くとお茶の横に青くて丸い物が収まっている。
(生き物も入るのか…魔物だったっけか)
長い事入れておくのも可哀想なので出してあげる。
手を入れてスライムと念じる。
手を出すとライム君が乗っていた。
完全に身体が出た瞬間ライム君が噛み付いてきた。
「いでぇぇぇぇええ!!」
ライム君の身体は鉄の様に硬くなり手をブンブン振っても抜ける感じはしなかった。
一人で大騒ぎしていると沙耶が目を覚ました。
「タッちゃん⁉︎」
バッと起き上がるとライム君を剥がそうと近寄ってくる。
「離れなさい!」
ライム君は沙耶に気付くと普通の状態まで柔らかくなり地面にベタッと落ちた。その後龍也の後ろに隠れる。
「サ、サヤ!ちょっと待って‼︎」
「…敵じゃないの?」
「いや…なんというかこいつは悪い奴じゃない。だからもう大丈夫だ。」
「…今噛み付いてなかった?」
「…それは俺が悪い」
ライム君はチラッと龍也の横から顔を覗かせる。
「モンスターなんじゃないの?私襲われたよね?」
「それは多分…こいつがびっくりしたからだと思うんだよ…んーと。ちょっと話しかけてみな」
おずおずとライム君は沙耶の前まで出てくる。
沙耶は顔をしかめていたが少し話しかけ始めた。
打ち解けるまでそう長くは無かった。むしろ俺より沙耶といる方が楽しそうに見える。
(…。)
沙耶が寝ていた時に考えていた事を全て話す事にした。
衣食住の事。ライム君の事。早めに街に移動してみたい事など。
「…って言う感じで考えてみたんだけど。どうかな?」
「いいんじゃない?街には早めに言った方が良さそうね。お腹すいちゃったしカステラ食べよっか」
適当に話をしながらベビーカステラを食べる。沙耶に言わせるとライム君はライムちゃんらしい。思ったよりも早く打ち解けてくれたようだ。とりあえず今のところはライムと呼び捨てにする事に決まった。
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街に向かってみる事にした。ライムについてくるのか聞いてみる。するとぴょこぴょこ動いた。うん。分からない。引っ付いてきたのでついてくるものだと考える。
間違いなく衛兵に捕まると思うのでライムにはバッグに入って貰う事にした。近づけるとイヤイヤとプルプルしたがずっと一緒にいるためだと言うと止まってくれた。優しめに放り込む。
沙耶がそっと手を伸ばしてくる。俺も手を伸ばしてつなぐ。そうして街へと向かった。
歩き出すと沙耶が話し始めた。
「ねぇ。私、タッちゃんの事が好きだよ。10年前からずっと。告白してくれてありがとうね。」
おそらくさっきうなされていた事を教えたからだろう。心当たりがあるようだ。だがそこにはあまり触れないでおく。
「俺は沙耶と付き合えてるのが夢みたいだ。もっと早く告白しとけば良かったかもな」
「んーん。そんな事ないよ。楽しかったもん。だから絶対元の世界に帰ろうね!」
「…あぁ。」
俺は帰りたいとはあまり思っていない。むしろこの世界に飛ばされた時少し解放された感があった。この世界で住めるならこの世界で生きていくのもいいと思っている。沙耶も元の世界に未練はないはずだ。
でも決めるのはまだ早い。帰る方法だけは早めに探し当てておくべきだ。
街の入り口に着いた。遠くて見たよりも大きな街だった。衛兵と商人の馬車の中を確認している。その後ろに並んで待つ。
「次!…ん…旅人か?身分証はあるか?」
「あー…えっと、特に身分を示せる物はないんだけど
入れないか?」
少し不安になってくる。顔いかついなぁ…斬られたりしないよなぁ…
「訳ありか…そういうヤツもたまにはいるから大丈夫だぞ。…えーっと…。こういう場合ギルドに登録するのが主流なんだがそれで構わないか?」
「頼む」
やたらすんなり事が運んで少し戸惑う。だが余計な事は聞かない。聞き返されても困るからだ。
「おい!手の空いてる奴1人でいい。ギルドまでこいつら連れていけ!」
大声でそう叫ぶとこっちを見てニカっと笑う
「怖がらなくてもいいさ。ここで色々聞いて一悶着起こすと俺らの責任になるからな。あー…そうだ。せめてギルドまでは大人しくしといてくれよ……?可愛い嬢ちゃんを切ると目覚めが悪くなるんでな」
(コエー…)
無言でコクコク頷く。
槍を持った衛兵が1人走ってくる。
「付いて来い」
そういうと歩き始めた。その後ろをぴったりくっついていく。
「次ぃ!」
大きな声が響き渡る。