白い部屋と女神5
「次は、そうですね。
とても辛い話になると思います...大丈夫ですか?」
「なんでお前が辛そうな顔してんだよ、いいからさっさと話せ」
こいつの言った事が
全部本当だとすると、まあ、察しはつくな
「地球でのあなたの一生は終わりました
つまり、お亡くなりになりました...」
「...そうか」
やっぱりな。
こいつはナイフについていた大量の血を俺のだと言っていた
まぁ、そのナイフも俺のっていうのは意味がわからないが...
どのくらい血が出て死ぬとかはわからない
だが、あんだけ深く入ってたら死ぬだろう。
「は、はい。
まだ記憶は思い出せていませんか?」
「ああ、全くわからねえ。
俺は、あそこに落ちてるナイフで殺されたのか?あの血は俺のなんだよな?
あれ?そういや、手についた血がねえ...
ズボンのも消えてる」
「あ、それはさっきの光の力のおかげですね。
【光前】と言いまして、神が固有の空間のみで使える技みたいなものです
簡単に説明すると、消したり出したり動かしたり、物の大きさを変えたり...
まあ、大抵の事はなんだって出来ますよ!
例えば、遠くのものを引き寄せる事だって出来ちゃいます!
あっ、じゃあちょっと見ててくださいね...
ん〜っ、はッ!」
アヴェーゼは先と同じように、胸の前に手を組んで声をあげる
すると、さっきよりも小さくて光の弱い球体が出てきて、血まみれのナイフへ一直線に伸びていった
光の球が伸びる速度は遅めだったが、ナイフに触れてからは、目で捉えることが出来ない速度でテーブルの上へと移動してきた
「おお!すげえなそれ、ナイフの血も消えてるし、めちゃくちゃ便利じゃねえか‼︎」
「えへ、えへへへ!
ほ、褒めても何も出ませんよ〜!」
「そう言わずによ!
茶とか出せねえか?さっきから喉乾いちまってて困ってたんだよ
お前のその力なら出せるんじゃないか?」
「しょ、しょうがないですね、特別ですよ!」
アヴェーゼはさっきと同じように手を組むが、光の球が出てくると、それを両手で拍手で叩き割る。
ぱちんッ!
すると光の膜がテーブルを覆い、それが引くとテーブルの上に、急須と湯呑みが2個ナイフを避けて置いてあった
「おおお、やっぱすげーよその力。
正直羨ましいぜ」
「いやぁ、あはは
褒められて悪い気はしませんね〜」
ズズズ...
二人は緑茶を啜り喉を潤した
秋人は湯呑みを置き、ナイフを持ち上げた
「んで、俺はこのナイフに刺されて死んだのか?」
「えっと、詳しくお話しした方がよろしいでしょうか?
その方が、記憶を取り戻すにはいいかもしれませんが...」
「ああ、話してくれ
それを聞かねえ事には成仏出来ねえよ」
アヴェーゼは何かをボソッと呟いた後、
俺が死ぬまでの流れ話した
路地で大男に襲われている女を見つけ、それを止めるために攻撃を仕掛けるが止められ、女が動けない事を知った俺は、男に決闘を挑んだが、結果は惨敗。
その時に相手に受けた傷が原因で死亡。
俺は冷や汗が止まらなくなっていた
思い出せそうで思い出せない。
けど、これは俺が体験した事に間違いはないと確信していた
「その、男の名前を教えてくれ」
「だ、大丈夫ですか⁉︎
すごい汗ですよ!
も、もうこれ以上はやめておきましょう、
あなたの身体か持ちません!」
「頼む」
俺はテーブルに頭を付けた
「知らなきゃいけないんだ、俺を倒した男を。
超えなくちゃ、ならねえんだ...!
そいつが死んだ時、そいつを殺すために!!」
どこかで、似たような事を言った気がするが、やはり思い出せなかった。
「わ、わかりました!
言いますから顔をあげてください‼︎」
それを聞いた秋人は、ゆっくりと顔をあげ、感謝の念を込めてアヴェーゼの目を見た
アヴェーゼは軽く深呼吸してから
「その男の名は時起。
元軍人で、今は指名手配を受けている大量殺人者です...」
秋人が勢いよく立ち上がり、椅子が後ろに倒れた
...!!!
全身に電気が走った
「お前はなんだ⁉︎お?正義のヒーローか?」「俺と戦おうってのか!面白えやつだなぁおい‼︎」「なんだよ!随分とシャレてんなぁ⁉︎」「ただお前を面白そうな奴だと思っただけだ」
「俺の名は時起‼︎
姓はねえ、ただの時起だ!
さあこいよシュートォ‼︎
お前を殺してやるぜ!ギハハハ‼︎」
そうだ、俺はこいつに...
「じゃあなシュート
お前の名前は忘れねえよ」
負けたんだ。
「女神、時起はあの後どうなった」
「それは...言えません」
「どうしても、か?」
「...はい」
「そうか、ならいいや
もう聞かねえ」
「っ...」
「じゃあ女は?あいつは助かったのか?」
「それも言えません...」
「そうか。
ふぅ...言えねえんじゃ、聞けないわな」
秋人は倒れた椅子を持ち上げて、静かにすわった
「ごめんなさい、何も教えられない決まりなんです...」
「お前が悪いわけじゃないだろ、謝るんじゃねえ。
ああそうだ、これ返すわ」
頭の上から輪っかを外し、もう一度よく見てから、テーブルの上に置いた
「あっ、はい。
ありがとうございます...
あの、一度休憩を取りましょうか、精神的に限界だと思います...」
「いや、続けてくれ
まだ聞いてないだろ、大事な話ってやつ」
「む、無理です!
あなたは立て続けに、死を2回経験したようなものなんですよ⁉︎
そんな状態でまた新しい事を頭に入れたら、パンクして壊れてしまいます!」
「わかってねえな、
俺は別に死んだ事なんか気にしてない。
時起に借りを作ったのが悔しいだけだ...
あいつもここに来るんだろ?
その時までに強くなってやる。
ぜってえ強くなって
俺が生きた分、あいつに返してやる‼︎
このナイフと一緒に!!」
ナイフのグリップを強く握って、そう誓った