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白い部屋と女神

ん...朝か



薄く開けた瞼の中に白い光が差し込む


ふあぁぁ。

うーん、いい朝だ。


それにしても、今日はヤケに明るいな...

全然目が慣れねえ、寝すぎたか?


もう一度あくびをし、身体中の関節を バキバキッ と鳴らし終わった後、目を擦った


あ...?


目を擦る自分の手が、はっきり見えてる事に気付いた

そして、指の隙間から見える景色が全て白かった


!?


すばやく立ち、周りを見渡す


白、白、白...

上も下も、俺以外が全て白い...


白すぎて、距離感が掴めず

自分自身が浮いているのか?、と錯覚してしまうほど真っ白な空間が広がっている


何がどうなって...


辺りを見渡そうと足を動かすと

ヌチャッ

液体の様なものが右足に触れた


「うわっ!?ビックリした。

...なんだこりゃ

ナイフじゃねえか、それも血まみれの。

誰が置いたんだよ、気色悪りぃなあ...」


そこから離れ、左足の方のジャージで右足についた血を拭きながら

あーやだやだ、とポケットに手を突っ込むと


チャリッ


ん?


硬いものが手にあって、何かと擦れ合う音がした


取り出すとそれは、親しみのある日本の硬貨だ

った

だが、秋人にお金を持ち歩く習慣はない。

ましてやそれを入れたまま眠るはずがないと、腕を組み、昨日の夜していた事を思い出そうとするが、どっかの誰かに喧嘩を売られ、ひと蹴りでkoした事しか思い出せなかった。


「うーん、まあいいか


てか、そんなどうでもいい事考えてる場合じゃねえ

ここどこだよ。

出口ねえよ...、帰れねえじゃん、まじやべえ」


音もしないし風もない

温度はすこし涼しいくらいだ


考えてても仕方ねえ、歩くか。と思い

歩みを始めようとした時、後ろから女の声が聞こえた


「お、おはようございます〜、ご機嫌はいかがですか?」


ぶちッ


「あ゛ぁ⁉︎」

と、振り向きガンをつける


こんな変なとこに入れられて、機嫌がいいわけねぇだろ‼︎

と言おうとしたが、その女の様子がおかしかった為、それを辞めざるを得なかった


おかしい点は3つあった


1つ目、髪の毛が真っピンク。

うわっ、稀に見る痛え奴だ...


2つ目、頭上に輪っか、背中に翼。

レッド○ルかよ‼︎


そして3つ目、痙攣し気絶していた

...は⁉︎


「おい!!大丈夫かよ‼︎」


倒れている女の元に駆け寄り

抱きかかえて、頬を叩く


頭の上にある輪っかが フォンフォン と鳴っているが、気にしてる場合じゃない



なんだコイツ?めちゃくちゃ可愛いな

眉毛もまつ毛もピンクだが。


そんなことを思いながら

ペチペチペチペチ...

10回ほど叩いた時


「う、う〜ん、やめてください

一応上司ですよ...」


「はぁ?

あっ、寝ぼけてんのか?

チッ、さっさと起きやがれ」


「え...?えっ!?」


女はパチクリ、と瞬きし

周りを見渡してから、視線が俺の顔へと移った



「おい...お前本当に大丈夫か?」


「ひ、ひい‼︎ごめんなさい!」


「はぁ?なんで謝んだよ」


「い、いやぁそのお...」


「あ?聞こえねえよ、はっきり言え!」


「うっ、うう。

うわぁぁん、怖いよぉ!」


「あぁ⁉︎何がだよ‼︎」


「あっ..あ...あ...。

あの、ご、ごめ、ごめんなさ...


ごめんなさいぃぃ!!怖いいい‼︎

うええぇんこわいよぉぉぉ‼︎」


女は俺から離れ、蹲った


うっわぁ、めんどくせぇ〜

てか気、よっえーー。

なんでそれで誘拐とか、そんな髪の毛の色に出来んだよ...



はぁ、こういう奴の対処法はよく知ってる

それは単純に離れる事だ

まぁ、遠くでも会話は出来るしな

ていうか、このまま耳元で喚かれるよりましだ



秋人は立ち、女から早く離れようと、白い床を大股で歩き出した



「ちょっ、ちょっと待ってくだじゃい‼︎」


また一歩進もうと足を前に出し、地につけようとした時

後ろから軸の足を掴まれ、バランスを崩し、顔から地面へと倒れた



ビターンッ!!



「い、行かないでください!

お話があるんです!大事な話です‼︎」



コイツ...!!



「あのっ!

怖いって言ったのは謝ります!

いや、怖いですけど...

でもちゃんと謝りますので!


だからどうかお話をーーー」


「女ァァ...」


「へっ?」


「てめぇ何したか、わかってるよなぁ...」


「あ、あ...」


地に伏せたまま顔だけを持ち上げ、女の方へとを向けながら、怒気を放った。

自分でもドスの効いた声が出たな、と思った



ばたんッ



体を捻り、顔を女へ向け、視界に捉えた


案の定、女は気絶していた

俺のジャージをガッチリと掴んだまま。


「おい...」


足を動かしても外れない事を確認してから

床に手をつき、顔を上に向け、距離感のつかめない真っ白な天井をみて





「なんなんだよ...」



小声で放った秋人の声は

虚しくも、真っ白の空間の中で消え、誰にも届く事はなかった

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