月明かりと殺人鬼2
とりあえず落ち着け
先ずはこの女からどうやって離れるか、だ
そもそもなんでこの女が狙われたんだ?
...うーんさっぱりわからん。
見たところ美人ってわけでもねえしな
金持ちそうでもねえ
となると、無差別殺人ってやつか?
それならまだ希望はあるか...
よし、
「元軍人さんよぉ、てめぇがしてえのは殺し合いじゃねえか?だったら俺が相手してやるよ!!
こんな ひ弱な女を殺しても楽しくねえだろ?」
「おいおい正気かよボーズ!忘れたのか?
今俺は、お前の渾身の蹴りを片手で止めたんだぜぇ?それで俺と戦おうってのか!面白えやつだなぁおい!!」
ああ、その通りだ。
「あぁ?あれで全力なわけねえだろうが!!
これから俺が、お前をボッコボコに蹴っ飛ばしてやんのに女いらねえよな?って聞いてんだよ!」
「ギハハハッ!確かにいらねえ!!
いいぜ、乗ってやるよ!んでどうするよ?場所でも変えるか?」
チッ...馬鹿にしやがって畜生。
だが好都合、このまま女から離れれば...
「はっ、決まりだ
場所ならいい所を知ってる、ついてこい!」
女が歩けないのは知っている
だけどこれ以上どうすることも出来ない。
それに、助けるとか柄じゃねえんだ
後は自分でなんとかしてくれ。
女に目配せをしてから、目的の場所へと歩き出した
男は女に見向きもしないでついてきたが、興味を失ったと考えれば苛立ちも収まった
道中、俺は後ろからついてくる男に振り返る事はしなかった
大男の癖に足音が凄く小さかったが、たまに ギハハ と 楽しそうな笑い声が聞こえてきたからだ。
少し歩くと林がみえ、それに沿って歩いていると、少し開けて道になっているところがある
今は誰も管理していないが、この先には廃れた祠があり、たまに喧嘩でも使っている場所だ。
中に入ると、先程まで雲で隠れていた月光が差し込み、昼間のようとまではいかないが、遠くからでも顔が分かるくらいには明るかった。
「ついたぜ、ここが目的地だ」
「おおこいつぁいいぜ!!
どんな場所に連れてかれると思ったら、なんだよ!随分とシャレてんなぁ!?ギハハハッ!」
「るせぇよ!声がでけぇ!!...てめぇなんで何も言わずについてきた?」
「んだぁ?文句か?ついてこいって言ったからついて来ただけだろうがよ」
「そうじゃねえよ!!普通、人殺そうとしてる奴がその獲物放って、それ邪魔した奴についてくるかって話だ!」
「あ゛ぁめんどくせぇ
これじゃ殺し合いじゃなくて話し合いだぜ?
まあいい、答えてやる。
普通なんか知らねえよ
俺はただ、お前を面白そうな奴だと思っただけだ。
それ以外に理由はねえ、本能ってやつだ
なあもういいだろ?殺り合おうぜ!!
っとそーだ、名前聞かせろよ、なんてんだ?」
はっ、本能か
俺もそうかもな。
深く息を吐いてから、思い切り吸い込んで
「紅 秋人ォォ!!お前をぶっ飛ばす男の名前だ
胸に刻んどけ!!!」
「シュートだぁ〜?ギハハ、変な名前だなぁ!
だがいい!忘れねえぜその名前!!
俺も名乗るのが礼儀ってもんだな」
奴はナイフを構えて
ズシンッッ...!!
重圧を全身に受ける
重い...!!
「俺の名は...」
...?風が、変わった...?
「時起!!
姓はねえ、ただの時起だ!
さあこいよ、シュートォ‼︎
お前を殺してやるぜ!ギハハハ!!」