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07 そして暴走する愛情

 頭巾をかぶっていたせいで、サラサラとした彼の髪がぺったんこになっている。

 彼は鬱陶しかったのか、少し乱暴な手つきで目にかかる前髪をかき上げた。

 容姿端麗なせいで、そういう仕草がやたらと絵になる。

 それにどことなく色っぽい。

 そんな感想を抱いてしまった事実にムカッとしながら、私はふんと息を吐き出した。


 ロランからは、じーっと熱い視線を感じるけれど、気づかないふりを貫きとおす。

 いま彼とは目を合わせたくない。

 そもそもなんでいきなり髪を見たかというと、頭巾の下から現れた端正な顔には、でろでろに溶ろけそうな笑顔が浮かんでいて、ゾッとしたからだ。

 それは三秒以上見ていたら変な呪いにかかりそうな、危ない感じの笑顔だった。


「ねえ、アデリーヌ! どうして僕の正体がわかったの!? あ、そうか! これがつまり愛の力というやつなんだね!」


「……」


 ロランは想像と寸分たがわぬセリフを口にして、にじり寄ってきた。


「強引なことしてごめんね。君がここ数日、僕を見えないものとして扱っていたから。本当にそういう魔法にでもかかってしまったのかと思って。不安になったんだ」


「嘘でしょ?」


「うん、嘘だけど。だってさ! 君がみんなの前で僕を無視したら、どっかのクソ野郎が『あのふたりはいま仲違いをしている。アデリーヌ嬢の心を掴むチャンスだな』とか勘違いして、君を口説くかもしれないだろう!? 無理無理。絶対そんなの許せない。だから多少強引でも、早く君と仲直りしておこうと思ったんだ」


 多少強引!?


「言っておくけれど、これは犯罪よ!」


「君のためなら悪に手を染めることも厭わないよ、愛する人」


 深刻な顔で眉根を寄せて、ロランがしっかりと頷いてみせる。

 言ってることは突っ込みどころ満載なのに、身にまとう雰囲気がやけに真剣で、つい勢いに飲まれてしまった。

 きっとそれがいけなかった。

 ロランはそのまま私の前に跪き、そっと頬に触れてきた。


 え。なに。なにしてるの……?

 まったく意味の分からない行動に動揺して、目を見開く。

 ロランは細くて長い指で、くすぐるように私の頬を撫でた。

 ゾクッとして、心の奥が不快感でいっぱいになる。


「やだ……。放して、ロラン。それ以上触ったら殴るから……」


 私の言葉を聞き、ロランがゆっくりと視線を上げた。


「どうやって? 君の自由は僕に奪われてしまったのに」


 瞳が細められ、真摯な眼差しで私を見つめてくる。

 甘く整った顔が目の前にあるせいで、すごく居心地が悪い。


 やだ。

 見ないで欲しい。

 そう思った途端、勝手に心臓がドキドキしはじめて焦った。

 最悪だ。

 本当にいやだ。

 これではロランを意識しているみたいではないか。

 そんなことありえない。

 でも否定するほど鼓動が速くなる。

 もう!

 静まってよ心臓。

 ギュッと目をつぶって、俯く。


「アデリーヌ、こちらを向いて」


「い、いやよ……」


「お願い、僕のプリセンス」


「そんなことより家に帰して」


「大丈夫。ちゃんと帰してあげるよ。でも、どうしてもアデリーヌと結婚したいんだ。だから先に既成事実を作る許可をくれ!」


「できるか!!!」


 それまで恋になれない少女らしく、迫ってくるロランに怯んでいたことも忘れて、私は全力で突っ込んだ。

 だって!

 できるかそんな許可!!!!

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