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真面目系チート生徒会長が異世界転生した場合

「校則違反です。」


 成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、これらの言葉はまさに彼のために作られたといっても過言ではないほどの完璧なまでのスペック。身長176cm、体重60kg、黒縁眼鏡に黒い短髪。そう彼こそが、ハイスペック学園二年の伊集院 零である、

 零は生徒会長としてこの学園を仕切り、自らが全ての生徒の手本となるべく、粉骨砕身している。そんな彼の日常は毎朝5時に起床し、朝のジョギング。シャワーを浴び、時間まで朝食を食べながらくつろぎ、登校。学校では勉学に励むとともに、生徒が細かく定められた校則を違反していないかをチェック。放課後は、塾で勉強をし、家に帰り夕飯を食べ、日課の筋トレをした後、お風呂に入って12時に就寝。毎日が完璧に一緒とまではいかないまでも、ほぼこのサイクルで回っていた。

 そんな彼が、今日も6時に起床し、日課が終わり、学校へ向かおうと家の扉を開けた瞬間、そこに広がるのは、いつもの見慣れた風景ではなく、見慣れない歪な形をした木が生い茂る森の中であった。零の住む埼玉県ではなかなかお目にかかれないような風景であった。


「・・・はて。」


 普段感情を表に出さずに、能面冷徹真面目系生徒会長という二つ名を頂いている彼も、今回ばかりは驚かずにはいられない。振り返ると、開けたはずのドアは消えていて、戻る方法を失っていた。


「これは一体どういうことでしょう?」


 冷静に分析してみるも、適解が見つからない。扉を開けた瞬間に何者かにさらわれた?いや、あの一瞬で気付かれなくそんなことをできる等、人間業ではない。では、家の扉がどこ〇もドアに代わっていた?いや、あんな非科学的なものがこの現代社会に存在しているはずがない。では一体何が起こったのだろうか。とにかく、現在自分が置かれている状態を把握せねばなるまい。そのために零は周りを探索してみることにした。すると、


「助けてーーーーー!!!!」


 右斜め前方1時の方角から812Hzの叫び声。これはおそらく女性の叫び声だと思われるものが聞こえてきた。そちらの方向に目を向けてみると、金髪に赤いフリルのワンピースを着た女性が、猟師のような服を着た6人の男に囲まれ、そのうちの一人に髪を掴まれていた。


「親方ァ。こいつは上玉ですぜ。なかなかの金になるんじゃないですか?」


「そうだな。おめえら、傷つけるんじゃねえぞ!きつすぎず、緩すぎず、逃げられないけど、跡が残らないように結んどけ!」


「そんな無茶な・・・。」


「校則違反です」


「な、何者だ!?」


 そこに颯爽と現れる零。女性の髪をつかんでいる男の背後に現れ、男が振り返ると同時に後頭部に手刀を決め、脳震盪を起こさせる。一瞬にして気を失う男の姿に、仲間の5人の男も、襲われていた女性もあっけにとられる。


「全く・・・、校則第128条、校内での暴力行為は禁止。罰則は失神以下の鉄槌と反省文です。」


 直立不動のまま腕を組み、右手で下がった眼鏡を直す。登校しようとしていたため服装は既定の学ランであり、この場で異彩を放っていた。


「てめえ!何しやがる!」


 仲間を倒された怒りに一人の男が殴りかかってくる。その男の拳が零の頬を抉る。かのように見えた。


「校則第13条、校則を違反し、注意がなされたものの、改善が見られない生徒は3日以下の謹慎処分とする。」


「な・・・・に・・・・?」


 バタリと前のめりに男は倒れた。男に殴られる瞬間、零の超人的なスピードで男の後ろに移動することにより、残像を作り出し、それを殴りつけ、隙のできた男を後ろから気絶させたのであった。当然残りの4人の男たちの誰も、零の動きを目で追えたものはいない。


「お、親方ァ、こいつやばいっすよ。どうしますか?」


「仕方ねえ!ずらかるぞ!」


 そう叫ぶと倒れた仲間を抱えて男たちは逃げていった。零はポケットからハンカチを取り出し、男たちを気絶させるために使った右手をきれいに拭く。


「あ、あの・・・・。」


 それまで目を点にして成り行きを眺めていた女性が口を開く。


「お怪我はありませんか?」


 零は紳士のように女性に手を差し伸べ、その体を軽々と立たせた。


「あ、ありがとうございました。危ないところを助けていただき、本当に、なんとお礼を言って良いものやら・・・。実は私、この国の姫でありまして、ある用事で森の中へ来ていたところを先ほどの山賊に・・・。」


「失敬、急いでいるもので礼は不要です。またどこかで会った時に私のことを覚えておいていただければ、それで私のお礼ということにしていただけないでしょうか。それでは、学校に遅刻してしまいますので。」


 そう言って零は歩いていく。その姿を女性は後ろから眺めることしかできない。彼女には彼を引き留めることができない。なぜなら、彼女は彼のその魅力に取りつかれてしまったのだから。


「ええ・・・必ず、必ず忘れません。私の王子様・・・。」


 上気し、紅潮した顔で、零の背中を陶酔したように眺める一国の姫。それを背中に受け、尚も校則を守ることに従事する。まさに生徒の鏡。伊集院零の冒険が今幕を開いたのであった。

なんだこれは・・・・と思っていただけたら私の勝ちということで。

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