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魔法少女の奉仕活動  作者: シイバ
魔法少女の奉仕活動四
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魔法少女と買い物

 今日も一日の学業が終わり放課後となったので、クラスメイトの聖とともにボランティア倶楽部の部室に来ていた。今日来たのは体育の授業前後の休み時間と合わせて、もう三回目だった。

 室内には俺と聖、そして四之宮先輩の三人が机を囲んで座っていた。音無先輩は今日も陸上部の助っ人に行っている。

 俺は早速、体育の授業の時に聖と話した内容を先輩に相談した。即ち下着問題だ。


「そうね……。確かに早めに済ませておいた方がいい問題かもしれないわね」

「ですよね」


 先輩も、今日は至って真面目な表情で下着問題を語っていた。


「聖くん、今日の活動はいいから、これからあたしと下着を買いに行きましょう」

「い、今からですか!?」

「相沢くん、あたしと彼は買い物が終わったらそのまま帰宅するから。貴方はアヤメをよろしくね」

「分かりました。良かったら委員長も誘ってくれませんか? 昨日みんなで行くって話してたみたいですし」

「柏木さんは?」

「今日はソフトボール部、活動してますよ」

「分かったわ。どうせなら真神さんと鈴白さんにも声を掛けてみようかしら」

「そうですね。昨日一緒に話してましたし、ついてきてくれるかも知れませんし」

「ちょ、ちょっと待ってよ! 勝手に話を進めないでくれ!」


 何事か訴えてくる聖だったが、俺と先輩は構わずに放課後の予定を組み立てた。


「それじゃあ聖のことお願いします」

「ええ。明日にはちゃんと活動に参加できるようにしっかりと手配してくるわ」

「横暴だぁ……」


 首にリードを付けられたペットのように、聖は泣く泣く四之宮先輩に従って部室を出て行った。

 残った俺は音無先輩が帰ってくるまで部室で留守番だ。来客があったら対応して先輩たちのスケジュールを作り直したりもするが、何もない時は本当にすることがない。

 なので、部室にある本棚から適当な本を手にとって読んでいるか、勉強をしていることが多い。今は中間テストの週間が近付いているので、なるべく勉強をすることにしていた。

 音無先輩が部室に帰ってきたのは、一時間以上過ぎた頃。時計の針が六時を回った頃だった。




「やっぱあたしも一緒に行きたかったなあ」


 溜め息交じりに隣を歩く音無先輩がぼやいた。

 今日の活動も終わり、部室も施錠し、自転車を取ってきた先輩と共に日が落ちて薄暗くなってきた校内を歩き、校門まで歩いていた。


「仕方ないですよ。活動の戦力になるには一刻も早く下着をつけてもらうのがいいですし、それなら今日にでも用意してもらいたかったですし……先輩は勝手に予定入れちゃってましたし?」

「あは、あは、あはは」


 先輩は笑って誤魔化した。けど実際、一緒に買い物に行ってもらうのが良かったかもと思っていた。少しでも早く親睦を深めてもらえば、聖もボランティア倶楽部での居心地が良くなるだろうし。


「聖くん、どんな下着にするのかなぁ」

「そこはもう一緒に買い物に付き合ってくれてる四之宮先輩と委員長、鈴白さんのセンスにお任せですね……」


 四之宮先輩たちが出て行ってから充分時間が過ぎた頃に、聖にそっちの様子はどうなっているのかとメールしておいた。返信の内容には、今言った女子勢が付き合ってくれていると記されていた。真神店長はお店が忙しくって、ついていけないのを血の涙を流して悲しんでいたらしい。

 聖の性別が変わってしまった時、音無先輩は最初は聖ちゃんと呼んでいた。けど、あれからボランティア倶楽部で話し合った結果、聖のことは男として呼ぶことに決まっていた。

 それは聖からの要望でもあった。生活の上では女子として生きていくことになったが、自分の気持ちは男のままだから、せめてここにいる皆はそう接して欲しいと懇願され、全員承諾した。

 体育の授業の前に彼の気持ちを無視して危うく女の子として見てしまうところであったが、自分を戒めた今なら多分大丈夫だろう。


「先輩!」


 並んで帰る俺たちの後ろから、大きな声が聞こえた。同時に、俺がいるのとは反対側、音無先輩の左腕に女子が抱きついてきた。


「っと。京子ちゃんじゃん」

「うぃっす。今帰りですか? ついでに草太も」

「俺を添え物みたいに言いやがって……」


 しかもなんだ、そんなに先輩にべったり引っ付きやがって。なんて羨ましいんだ。俺も先輩の腕に抱きつきたいが、二人を分かつように先輩の青いロードバイクが邪魔をしていたので仕方なく断念した。本当は抱きつく勇気なんてなかったんですけどね。


「大荷物背負ったまま抱きついちゃ迷惑だろ。離れろ離れろー」


 京子は大きなスポーツバッグを背負っていた。部活に必要な道具や教科書とかも、その中に入っているのだろう。


「先輩、私迷惑っすか?」

「全然? 京子ちゃんってちっちゃいし軽いし、ぽかぽかしてるねえ」

「ほら見ろ、全然邪魔じゃないってよ」


 べぇ、と舌を出された。京子がちっちゃいと言うけれど、身長は俺とあんまり変わらない。この場合は先輩の背が高いのだ。しかも部活あがりでまだ体温が高いのか、ぽかぽかなんて言われてる。

 俺も女だったら遠慮なく絡めるかも、なんて思うのは聖に怒られるだろうか。


「そうだ! 今から皆で買い物に行こう!」

「買い物って一体何を……」

「行きます!」


 話の流れから何を買いに行くのか、男の俺には少し嫌な予感がしていたが、いち早く京子が賛同してしまった。


「よーしじゃあ行こう! 今ならまだカリン達に会えるかもしれないし」

「お伴します!」

「ああやっぱり……」


 この二人の運動少女は先に行ってる買い物組に合流するつもりなのだ。


「草太くん、行くよ」

「先輩が言うんだ、ついてこいよ」

「いや……俺は遠慮しておきます」


 折角のお誘いだが、手を振ってお断りの仕草をした。なんで、と首を傾ける先輩と、憧れの先輩の誘いを断るなんて、と怒っている京子に


「下着選びは女性の大切な儀式なんでしょ? だったら俺は行けません。真神店長に知られたら怒られちゃいますし」

「そお?」

「まあま、来ないっつうんならほっといて二人で行きましょ!」


 京子に腕を引っ張られ、先輩は俺と別れた。


「聖、お願いしますねー」

「うん。また明日」

「じゃあなー」


 離れていく音無先輩と京子に手を振って、二人の姿が消えていくのを見送った。


「明日成果を確認すっか……」


 そして俺は一人トボトボと帰路に着くのだった。

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