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魔法少女の奉仕活動  作者: シイバ
魔法少女の奉仕活動三
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魔法少女と一角獣

「忠告したというのに」


 異形の装甲とかした外皮に覆われた体の中で、一野聖は呟いた。

 一瞥した限りではかなりの重症。急いで手当をしないと命に関わると判断した。

 彼の歩む先には、爆炎に包まれた車。親らしき人物に抱えられて避難する少女。そして今しがたアーケード街脇の被服店に蹴り飛ばしたジェノライナーが、角先にかかったワンピースを破り捨てて対峙している姿があった。


「探したぞ、裏切り者め」


 ジェノライナーの腹部には足型がくっきりとついている。だが痛手を負った様子はない。蹴りは表面のみを傷付けたにすぎない。

 裏切り者という言葉に反応したい衝動を堪え、一野聖は半身に構えた。


「負傷した彼を手当しなくちゃならないんだ。無駄話をするつもりはない」


 今、彼の外見は駅で相沢草太と別れた時とは大きく変貌していた。面影すらない。全身を白っぽい外装で覆われているが、それはジェノライナーと同様に生体ベースの強固な鎧装である。

 鎧を纏った一角獣。形容するならそれが相応しいだろう。一際目立つのは額から突き出した立派な角。ジェノライナーのそれとは異なり、細く、鋭く、天を衝く一角。そして腰に巻かれたベルトには額から角を生やす獣の横顔を模したバックル。

 例えるならば、ユニコーン。


「これから死ぬ貴様が気にすることではないわ!」


 ジェノライナーがセダン車に、相沢草太にしたように角に力を集中させてのアタックを敢行する。そのスピードは車や人間を相手にしていた時の比ではない。全力を出した突進。

 一野聖は避けることなく、正面から角を手で受け止めた。一瞬だけ彼の体が揺れるが、それだけだった。


「どうした、これで終わりかい」

「クッ……舐めるな!」


 聖の挑発めいた台詞に限界以上の力を込めるジェノライナーであったが、彼が武器として誇り振りかざしていた角は聖の手で呆気無く折られた。


「グオオオ!」


 角の無くなった鼻先を押さえて後退るジェノライナーを前に、手にした角を放り捨てた聖は告げる。


「黒十字も随分人手不足のようだね。こんなのが尖兵として僕の動向を探っていたなんて」

「貴様あぁ……!」

「本当は戦うなと命令されていたんじゃないのかい? いや、でも黒十字に部下を気遣うような奴はいないか」


 そこまで話し、聖は鎧装に包まれた顔をハッと上げた。


「無駄話はしないんだった。すぐに終わらせるよ」


 掲げた右手を振り下ろし、バックルの角をパンと弾く。


『ファイナルブロー』


角が上に戻った瞬間響き渡る機械音声。その先端から赤く輝くラインが鎧装を伝い、終点の右拳に紅炎のオーラを纏わせる。


『ユニコーンフィスト』

「はあッ!」


 前方へと飛び上がる跳躍。背中が見える程に捻った腰から解放される必殺の拳がジェノライナーの角を失った鼻先へ直撃する。


「ぐおおおお!」


 拳を受けたジェノライナーの足はその衝撃にぐらぐらと後ろへ進んだ。お両手で押さえた鼻にはビシビシとヒビが刻まれ、聖の拳から注がれた青いエネルギーと共に全身を侵食していく。


「お……おのれエストルガー! 黒十字万歳!!」 


 それを最期の言葉とし、ジェノライナーは内から炸裂する青き閃光によって爆裂した。


「ふう……」


 敵の消滅を見届け、右拳をゆっくりと開いて一つ息を吐いたが、のんびりとしてはいられない。

 時間が経てば人の目が戻ってくるであろうし、何より知った人物が大怪我をしているのだ。

 クラスメイトが倒れている荒れたコンビニ内に入り、膝をついて腰を屈めて状態を確認する。

 呼吸はある。脈拍もある。辛うじてある。

 戦闘に長けたユニコーンには誰かを癒やす力はない。となれば治療設備のある病院へ運ぶしかない。彼の容態を踏まえると緊急車両を呼ぶ時間も惜しい。

 とは言え何故これほどの怪我を負ったかを説明を求められると困るため、病院の前へ置いていく方法しか思い浮かばなかった。忠告を聞かなかった罰だとでも思ってもらおう。

 まあそれも、このクラスメイトが生きてくれればの話だけど。

 少年一人を両腕で軽々と抱え上げたエストルガーがコンビニから出た時だった。


「……ん?」


 表の通りに一人の影。黒い装束に顔を隠すために赤いマフラーを口元に巻いてなびかせる、長身の魔法少女。

 ブレイブウルフがそこにいた。

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