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魔法少女の奉仕活動  作者: シイバ
魔法少女の課外活動
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飛甲翔女の回想・1

ボランティア倶楽部の面々から少し離れ、違う少女の視点から見た魔法少女たちの物語。

 二人の少女が初めて出会ったのは三年前の夏の夜のことである。

 飛行翔女レヴァテイン――本名九条玲奈が、魔敵存在の反応を探知したのはつい先程のことであった。

 台風も接近しており飛んで向かうのは億劫であったが、人に仇なす存在を放っておくことなどできる性分ではない。

 幸いにして激しい強風の中でもある程度思い通りに飛ぶことは出来る。それだけの飛翔能力をこの魔法少女は有していた。

 空色のポニーテールを結った青いリボン。左胸には翼を模したブローチと、それに留められた薄く青みがかったスカーフで首元を飾っている。全体的に青い衣装は、空を駆ける少女に相応しい。

 背に生えた翼は魔力で形成されたものだ。翼は強風の間隙を縫い、スカートを風にはためかせながら目標地点を目指す。

 街の南東、二年後にはとある機関の施設が埋め尽くす人工島となる場所は、今はただの埋立地である。反応があったのはそこだった。

 闇夜に流星の如く淡く光る青い尾を引きながら飛翔していた少女は、目的地の上空で蒼槍レーヴァを右手に呼び出しながら空中で動きを止めた。

 暴風に顔をしかめる少女が見下ろす埋立地。何者かの姿がないかと探る彼女の視界に映ったものは、何かと何かが交叉する場面であった。

 三角の板を幾重にも幾つにも貼り付けて作られたような特異な姿をした二腕二足のモンスター。人間の倍はあろうかという大きさをしたあれは知っている。飛行翔女の所属する組織がターゲットとしている特徴的な外見を持つ魔敵存在である。

 あれが反応源であったのは想像に難くない。だが今それと交戦しているあれは何なのか、少女の記憶にはなかった。

 嵐に乗って聞こえてくるのはその者の雄叫びか。それはまるで獣の咆哮。

 暴風より激しく荒れ狂う獣の戦いぶりを、レヴァテインは空から見定めていた。

 魔敵存在を構成するプレートフレームは見た目の通り、その縁は極めて鋭利な箇所となっている。そのため基本的に接近戦を挑むことはない。こうして槍を装備してはいるが、あくまで身を守る手段、もしくは最終的な攻撃手段である。

 定石は距離を保っての魔法による攻撃。レヴァテインもそうしている。

 だが、彼女の眼下で繰り広げられている戦いにはそのような基本や定石は一切なかった。

 刃のように鋭い魔敵存在の攻撃をあろうことか素手で相手をしている。漆黒の衣装から露出している肌には、幾つもの裂傷が刻まれている。

 自身のダメージなど意に介していないのか、黒衣の少女の暴風圏は衰えることを知らない。少女、そう少女だ。歳は自分とそう変わらない女の子が戦っている。

 少女の右拳と魔敵存在の左腕がぶつかり合う瞬間、レヴァテインは眉を寄せた。どうなるか容易に想像してしまったせいである。

 しかしその想像は裏切られ、少女の拳が幾層にも重なるプレートフレームを先端から粉々に砕いたのだ。

 その打撃の強さ、そして何より傷一つ負わぬ拳の強靭さに目を見張った彼女の視界に、更に右拳のみで連打を繰り返す姿が飛び込んでくる。

 拳が堅牢なプレートを次々に打ち砕いていく。敵の動きが鈍ろうとも何度も何度も拳で砕き、その体積を削っていく。

 やがて、


「うあああああああああああッッッ!!」


 一際けたたましい雄叫びと共に、拳が体を貫いた。同時に上空からでも鮮明に分かる程の暴力的なエネルギーが膨れ上がり、光が満ちると同時に弾け飛んだ。

 嵐すら引き裂く爆風に顔を背けていたレヴァテインが再び視線を眼下に向けた時、そこにいたのは黒衣の少女ただ一人であった。

 どうすべきか少しばかり逡巡していたレヴァテインであったが、やがて音もなく激戦を繰り広げていた埋立地へ降り立つと、充分な距離を保ったまま勝者の背に声をかけた。


「驚きましたわ。単身で、しかも格闘戦を挑んで魔敵存在に打ち勝つ人がいましたとは」


 その時になって初めて飛行翔女の存在に気が付いたのか、声をかけられた相手はピクリとした反応を見せ、ゆっくりと肩越しに振り返った。

 鋭い眼光、乱れた呼吸、血で穢れた顔。まるで野生の獣ですわ。

 それが彼女の抱いた第一印象であった。

 そしてこれが、九条玲奈と音無彩女の出会いであった。

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