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魔法少女の奉仕活動  作者: シイバ
魔法少女の奉仕活動二
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魔法少女と忍

 ブレイブウルフが山から飛び出す様子を遙か遠方から見つめる者がいた。


「流石に鋭かったわねぇ。でもまだまだ……お子様に気付かれるわけにはいかないわ」


 親指と人差指で作った円を泣き黒子のある右目で覗き込み、魔法少女同士の戦いの一部始終を見届けていたのはメイド服を着こなした巻菱蓮その人であった。

 二人が接触する前に狼の鋭敏な感覚に捉えられそうになったが、すかさず気配を絶ち大きく離れることでその探知に引っかかることはなかった。

 今彼女がいるのは、一つ離れた隣の山の頂上付近の木の上だ。枝の先端に立ち、南方に消え行く狼の後ろ姿を見送っていた。

 彼女はここで何をしていたのか。

 一つは直接彩女の誕生日を祝えない店長のメッセージカードを彼女の元に届けるため。

 そしてもう一つは、昨日逃した魔女の足取りを追っていたのだ。その過程で先の目的も達せられたことは彼女にとって一石二鳥であった。

だがそのおかげで、彼女の中に一つの小さな疑念が生まれていた。

 狼と魔女の会話の内容は、その時近くにいた彼女にも把握できていた。魔女の言を信じるなら、その力をある機関が欲しており、そのために魔女を捕獲しようとしている。

 真神風里は悪しき魔女がこの街に身を潜めていると面倒事を聞かされたと言っていた。昨日はその言葉を疑うことなく、丁度悩みを抱えていた少年少女のために戦いの場を提供したのだったが、


「何か裏がありそうねぇ」


 面倒事の情報の提供者から事情を探るべきか。それともその提供者と同じ機関に所属している飛甲翔女も何か知っているだろうか。


「お誕生日おめでとう」


 小さくなる狼少女の後ろ姿に祝いの言葉を送り、指メガネで見る先を飛甲翔女の飛び去った方角に向ける。しかし既に影も形もなく。


「二人とも速いわねぇ」


 彩女と玲奈、二人の速さには巻菱連も一目置いている。先程までの戦いも中々見応えがあった。

「けど行き先は分かっているし。探りを入れるなら……その前にあの人に報告しておいた方がいいかしらぁ」

 真神風里。彼女の方でも別件ではあるが機関の人物と接触しているはずだ。先日会ったのと同じ人物であれば、その者が魔女の情報を彼女に吹き込んだに違いない。


「街が騒がしくなるかもしれないわ、ねぇ……」


 一陣の風が吹き抜ける。その風に乗り、彼女は姿を消した。まるで最初からそこにいなかったかのように。

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