魔法少女と誕生日
俺の名前は相沢草太。西台高校に通う十五歳の高校生だ。容姿性格運動勉強、どれをとっても平凡で面白味のない高校生だが、そんな俺には普通の人とは違う秘密があったのです。
それは特殊な力を持ったスペシャライザーと呼ばれる存在であること。そして同じくスペシャライザーである二人の先輩が立ち上げたボランティア倶楽部というサークルに所属させてもらい、活動しているのである。
そして今、俺がいるのはそのサークルの部室がある旧校舎一階の端の教室。三組ある席の一つに腰掛けている。
ゴールデンウィークの後半、本来なら憲法記念日で学校は休みなのだが、両名の先輩とも今日は助っ人の予定が入っており、俺もこうして部室待機しているわけだ。
「明日も明後日も明々後日も今のところ予定はねえし、先輩たちも残りの休日は休みだろうな」
開いたノートに記したスケジュールをチェックしながら呟いた。それは四之宮花梨先輩から受け継いだ、我がボランティア倶楽部における大事なスケジュール帳である。このノートに、サークル活動の記録、そして予定を刻んでいくのだ。
ボランティア倶楽部とは、音無彩女先輩が立ち上げたサークルである。主な表の活動は部活や学校行事の助っ人、応援、はては校外に出て地域活動のお手伝いをしたり……俺は入部してまだ数日で、活動すべてを経験したわけではないから、とりあえずそういうことをしているという話だけ聞いている現状だけど。
そして本日、ノートの欄には俺の筆跡で、「音無先輩:陸上」「四之宮先輩:写真」と記してある。連休中の予定はこれだけだ。後は空欄、休み明けからまたポツポツと予定が入っているが、まだ先のことだ。
「休日か……何したもんかな」
ノートを閉じて仕事は休憩。残りの連休に思いを馳せた。
ゴールデンウィークの前半は休みって感じがしなかった。襲われて、守られて、助けられて、助けて、退けて。
それは日常とは乖離した異常の世界。スペシャライザーの中でも、取り分け魔法少女と呼ばれる先輩たちと共有する戦いの記憶。このノートには記すことのない、ボランティア倶楽部のもう一つの裏の活動。せめて自分たちの手の届くところでは、異常から日常を守りたい、そんな奉仕活動を行っている。
俺には人を守るだけの力はない。だからこうして、力を持つ二人の先輩を陰ながら支えているのだった。
「うぅ……ん?」
とはいえすることもなくなり、椅子の背もたれに体を預けて大きく伸びをした時、廊下から部室の戸をノックする音が聞こえた。
「はい、今行きます」
席を立ち戸に急いだ。
ボランティア倶楽部は表の活動の特徴からいろいろな人がいろいろな用件を頼みに来る、らしい。俺はまだ部活の助っ人をしているところしか活動しているのを見たことがないので、らしいとしか言えないのだが。
ともあれ、誰かが部室を訪れて何か頼みに来ることもなんら不自然なことではない。今日は祝日だが、学校に出てきている生徒は部活動生を中心に割りと多い。
一体誰が来たのだろうと思いながら扉を開けると、そこには姿勢のいい短髪の男性が立っていた。
「アヤメはいるか?」
威圧感を覚えたのは、その人の背が俺より高かったせいである。加えて半袖のジャージの上からでも分かる逞しい体つき。明らかに運動部ですって印象だ。
「ああ、いえ。今は陸上部の方に……グラウンドにいると思います」
いきなり音無先輩を呼び捨てとは、最上級生の人なのだろうか。
「そうか。邪魔したな」
「あの、言伝があるなら承りますけど」
「いや結構。本人に直接話をしたかったんだ。また出直そう」
部員としての勤めを果たそうとしたが丁重にお断りされ、男性は旧校舎の廊下を踏み鳴らして去っていった。
「あ……何部の人かくらい聞いとくべきだったかな」
せめてそれだけでも聞いていれば音無先輩に情報を伝えられたと思い至った。まだまだ慣れない業務で手際が悪いと反省しつつ、戸を閉めて室内に戻った。
ノートに目を通し終えて席を立った俺はすることがなくなってしまい、暇潰しも兼ねて本棚の本を手に取り、知識を蓄えることにした。
部室の前後にある本棚に並ぶ本のほとんどは、魔術やオカルトに関する書物ばかりだ。裏の活動をする際、少しでもそういうことに関する知識を得ていれば、対処の幅が広がるかもしれない。
先輩たち曰く「役に立たない時が多いけどね」らしいが、これまで異常の世界に身を置いた経験のない俺にとっては、まずはこういうところから触れていった方がいいかもしれない。
適当に手にした本を開きながら席に座る。魔術の歴史について、か。先輩たちが帰ってくるまで、これでも読んでおくか。
「……」
と、読み始めたはいいものの。やはり興味のなかった分野、読み進めても内容が理解できるには程遠い。
「やっぱりこっちにするか」
新たに手に取った本は『魔法少女キューティブレス特装版』。漫画だ。入門するならこういう大衆向けの方がいいだろう。
「おお……これは……」
結構なお色気シーンがそこかしこに散りばめられている。健全な内容についつい夢中になってしまうのも致し方ないことだろう。
「変身して衣装変わる時は……やっぱり一度裸になってるのかな」
この漫画の通りなら先輩たちも……。だがそれを直接確認する度胸なんてない。変身する瞬間も眩い光が立ち込めるせいで視認できないし、真実は光と闇の中に隠されているのだった。
読む手は止まらず二巻目に差し掛かろうかという時、ギシギシギシギシとテンポよく廊下を踏み鳴らす音が聞こえてきた。今度聞き逃さなかったのは自分が気を付けていたからでもあるし、駆けてくる音が大きかったからでもある。
「ふぃー、あっつい暑い!」
「お帰りなさ」
扉を開けて現れたのは、黒髪長身の女性である。短めの髪に体操着姿、汗に濡れる肌が健康的な音無先輩だ。
先輩は上着の裾から手を入れて汗を拭っているようだったが、捲れた体操服から薄っすら田の字のお腹と小さな愛らしいおへそが見えたせいで、言葉を途切って見てしまった。
「ただいまっと。カリンはまだなんだ?」
「……あ! はい、まだ戻ってきてませんね。音無先輩の方が早かったです」
彼女のお腹を見ていた視線を上げて答える。四之宮先輩はまだ写真部から戻ってきてはいない。
そっか。そう呟いて先輩は自分の机に掛けてあったバッグから制服を取り出した。
「……」
「…………?」
制服を手にしたまま、先輩が黙ってこっちを見てくる。どうしたのだろうと首を捻ろうとしたが、すぐに思い至った。
「あ! ああすいませんすぐ出ます!」
「うふ、ごめんね」
ドタバタと転がるように部室から出ると、後ろ手に扉を閉めた。
俺としては中で先輩の着替えを見てもなんら問題無いというか寧ろ嬉しいくらいなのだが、如何せん退室してしてオーラが出ていたのでそうするわけにもいかなかった。
「ていうか恥ずかしいならあんな無防備に汗拭いて入ってこないでくださいよ……」
裾から見えた先輩のお腹は綺麗だったな。触ったら柔らかいだろうか、硬いだろうか、すべすべだろうか、しっとりしてるだろうか。脳裏に焼き付けたお腹を思い返しながら、そんな想像を働かせてしまう。
「あらあら、何を廊下でにやけてるのかしら?」
突然の声にビクッとして声の方に顔を向ければ、そこには肩まである白髪と銀縁の眼鏡が特徴の四之宮先輩がいた。
「に、にやけてないですって」
「そう? いつもより締りのない顔に見えたものだから……ところでどうして廊下に立っているの?」
「あの……中で音無先輩が着替え中なんですよ」
そう告げたら、四之宮先輩はふぅと息を吐いた。
「行った先の部室で着替えてきなさいって言ったのに……きっと相沢くんがいるのをうっかり忘れていたのね」
「そうなんですかね」
「そうなんですよ。おっちょこちょいだもの」
「おっちょこちょい……ですもんね」
「あらあら、相沢くんが言っていたって教えてあげなきゃ」
「ちょ、勘弁してくださいよ」
いたずらっぽく笑う先輩は首にカメラを提げている。デジタル一眼レフカメラだ。小柄な先輩が持つと、そのゴツさが少し際立って見える。
「写真部の方は終わったんですか?」
「取り敢えずね」
「お疲れ様でした」
「ありがとう。けど今度は撮影 した写真からどれを展示するか選ばなきゃならないから、もうちょっとかかるわね」
「それは後日ですか?」
「ええ。今日はもうおしまい」
先輩のカメラは、彼女のお父さんの物だそうだ。部活で使うので貸してもらっているらしい。高校生が自分で買うには、ちょっと高すぎる代物だろう。
「撮ってほしいの?」
俺がカメラを注視しているのに気付いた先輩がそう訊ねてきたので、俺は両手を振った。
「いえ、そういうんじゃないです。良さそうなカメラだなあって見てただけですよ」
「フフン、結構いい写真が撮れるのよ? 重いのが難点だけどね」
そう言うけれど嬉しそうだ。カメラを使うのが楽しいんだろうなと思わせられる。
「楽しそうだね」
着替えを済ませた先輩が部室の扉を開けて声を掛けてくる。その格好は四之宮先輩と同じく制服姿だ。
「貴女が彼を追い出したそうだから退屈しないようお相手してただけよ」
「追い出しただなんて人聞きの悪い」
「間違ってる?」
「まあまあ……」
むぐぅと口を噤む音無先輩を見かねて横から口を挟んだ。俺は気にしてませんって。
「今度からはちゃんと出先で着替えてくることね」
「ハーイ……」
ということで話がまとまり、俺たち三人は部室の中へ入った。
それから四之宮先輩に俺が書いていたボランティア倶楽部の活動ノートを見てもらった。俺が入部するまでは彼女がつけていたものだ。なので不備がないか見てもらったら、「うん、いいんじゃない」とのお言葉を頂きホッとした。
「あたし、思ったんだけどさあ」
全員が椅子について腰を落ち着けていた時、俺と先輩のやり取りを眺めていた音無先輩が口を開き、俺たちの視線が集中した。
「草太くんの力で、カリンの体の異常を払拭できるんじゃないのかなあ……ってさ」
「四之宮先輩の……ですか」
脳裏に浮かんだのは先日、俺を悪い奴らから助けるために変身した四之宮先輩の姿――マジシャンズエースという名の魔法少女の左腕が異質な空気を漂わせていた光景だった。衣装の上から鎖でグルグル巻きにされた左腕、包帯で指先まで覆われていたその下には、一体どんな異常が起きているのか、俺には想像もできない。
俺の力とは、魔法による異常を受け付けないというものだ。例えば精神支配、催眠効果など、心身に変化を及ぼす影響をカットすることができる。ただ、そのせいで音無先輩の使う治癒の能力も受けにくく、怪我をした時に治してもらうことが難しいという欠点もあるし、魔法で直接攻撃された時にそれを無効化できるかといえば、そういうわけでもない。肉体に傷を付けられたらしっかりと血は流れる。
傷は簡単に負うのに、その治癒には手間がかかる。なんとも不便な自分の能力だ。だから肉体面よりも精神面において、その力は発揮されやすいのだろう。自分でも未だに全容を把握していないし、使いこなせてもいない。しかし名前だけは付けたもらった。“鋼鉄の意志”……何者にも侵食されない強固な想いというニュアンスが含まれてそうで気に入っている。
そしてこの力には一つ特徴がある。それは、俺が触れた相手に同じ能力を少しの間だけ付与することができるというものだ。だから、催眠効果を受けて寝てしまった人物に俺が触れればその人は目を覚ますし、抱きしめたりしてより強く結びつけば意識ははっきりと覚醒し、俺が離れても少しの間は催眠効果を無効化できる。
音無先輩の提案を聞き、俺は自分の能力について考えを巡らせた。俺の力で四之宮先輩の身に纏わりついているモノを退けられるか否か。
「……難しいと思いますけど」
難色を示しながら、音無先輩に顔を向けた。
「俺の力って、触れてないと他人に効果がないじゃないですか。もしですよ、万が一俺の力が四之宮先輩に効いたとしても、俺が触るのを止めたらすぐに症状は元に戻ると思います」
「同感ね。彼の力があたしの呪いを拭えるとも思えない……あたしの勘だけど」
「そこはほら、特訓でカリンの異常を取り除けるようになったり、効果時間を伸ばせるようになったり……」
「そこまでの期待は荷が勝ちすぎるんっすけど……」
「あまり無茶な要求を後輩にするものじゃないわよ」
俺と四之宮先輩は揃って後ろ向きな言葉を口にする。
「それはそうだけどさ……物は試しでやってみなきゃ分かんないし」
試しもせずに諦めるわけにはいかないとは、如何にも先輩らしい。自分の能力を客観的に鑑みて否定的な意見を述べたが、俺だってそう思いたい気持ちはある。
ただ、上手くいかなかったときは期待させた分だけ落胆も大きくなってしまうので、正直な考えを言わせてもらった。
俺はチラリと四之宮先輩の顔を窺った。力を掛けるのは俺だが、掛けられるのは彼女だ。
「試しても無駄だと思うけれど。それで貴女が納得するのなら別に構わないわよ」
四之宮先輩の言葉に、音無先輩は表情を明るくし、俺は赤くさせた。先輩は自分の提案を試せることに喜び、俺は四之宮先輩と結びつくことを想像したからだ。
結びつくというのは、平たく言えば接吻だ。別に口と口でするわけじゃない。ほっぺたでも充分だ。いや口同士ならより強力な効果を与えられるのかもしれないけれど、流石にそれはご遠慮させてもらいたい。四之宮先輩が受け入れてくれるのなら吝かではないけどきっと彼女は頷かないだろういやはやしかし。
「じゃあ早速カリンに」
「ああ待ってください心の準備が!」
「けど今試しても影響はないと思うわよ」
揚々とする音無先輩と照れる俺に対して放たれた言葉に、今度は四之宮先輩へと視線が集中することとなる。
「試すのなら、あたしが変身している時じゃないと意味はないでしょ? 今触られても、何が変わったのかなんて確かめようがないじゃない」
「そっか……」
「じゃあ、カーテン閉めましょうか?」
変身するのなら、部屋を閉め切らないとならない。休日とはいえ誰がどこから偶然その光景を目にするか分かったものじゃない。
席を立ち窓側のカーテンに手を掛けたが、それを静止したのは四之宮先輩の声だった。
「残念だけど今すぐには変身できないわよ」
「え? なんでですか」
振り返り尋ねる俺に対し、先輩が制服の胸ポケットから取り出したトランプの束を差し向けてきた。
「あたしの力はアヤメのようにいつでも自在に扱えるわけじゃないの。変身するに相応しい状況になった時にようやく魔力を発露して変身できるようになるから、特に異常のない今は何の変哲もないトランプでしかないのよ」
相応しい状況と言われ、先日俺が襲われていた場面が思い浮かんだ。四之宮先輩が変身した姿、マジシャンズエースの姿を目にしたのはその時が初めてであり、そういう場面こそが彼女の言う相応しい状況ということなのだろう。
「つまりその時になって先輩に触れる機会が来るまで、試すのはお預けってことですか」
席についた俺に向けて頷く四之宮先輩と、がっかりして机に突っ伏す音無先輩。次に四之宮先輩が変身する機会はいつになるのか。早々に来て試してみたくある気持ちもある反面、それほど頻繁に彼女が変身する機会が来るのもご遠慮願いたいという思いもある。変身する度に、彼女は自分の内に宿す闇に侵食されていくのだから。
「あたしのことはもういいでしょ。それより次は貴女のことよ」
四之宮先輩が、机と一体化している音無先輩に視線を下ろす。気の抜けた表情で見上げると、言葉を続けた。
「今年の誕生日はどうするの? 去年と同じで貴女の家でお祝いする?」
「ああ……丁度ドタバタしてたから全然考えてなかったね」
どうしよっか、と二人で顔を見合わせている。そうか、誕生日のお祝いのことを話し合っているのか。
「……お誕生日ですか!? え、えっと……音無先輩の?」
俺は大声を上げて二人を見ていた。
「うん、そうだよ。知らなかった?」
「知ってませんよ! 初耳です! いつなんですか?」
「今月の五日だよ」
「二日後じゃないですかぁ!」
あまりにも直近の日にちを教えられ、俺はまた声を上げてしまった。
お祝いの品も言葉も何も準備していなくてどうしようと焦ってしまうが、そんな俺の様子を見て音無先輩は手を振った。
「いいよいいよ別に。折角のゴールデンウィークなんだし、ちゃんと休日を過ごしてよ」
五月五日といえば祝日のこどもの日。ゴールデンウィークの終盤である。だから先輩も俺に気を遣っての言葉なのだろうけど、
「休日なんですし、俺のやりたいように過ごさせてくださいよ」
そう答えたのだが、ちゃんと意味が伝わっていないのか先輩はキョトンとした表情を浮かべるだけである。
「いいんじゃないの? ボランティア倶楽部として貴女の誕生日のお祝いをしましょうよ」
四之宮先輩にはしっかり伝わっていたようで、俺を援護してくれるように音無先輩に言い聞かせてくれた。
「そうですよ。大勢でお祝いした方が楽しいですって」
そう言った時、俺にいい考えが浮かんできた。
「そうだ! 鈴白さんも呼んだらいいじゃないですか?」
「音央ちゃんを?」
「はい。都合が良かったら、あの子なら喜んで参加してくれますって」
それは俺が言うまでもなく、この二人なら分かっていることだろう。なにせ、鈴白さんと知り合って数日の俺よりも遥かに先輩方が付き合いが長いので、彼女が嬉しそうに参加してくれる画は簡単に思い浮かぶはずだ。
だというのに、二人は顔を見合わせてしまっている。その表情は困ったような、気まずそうな微妙な様子を醸し出している。
「もしかして俺の言ってること、的外れでした?」
「ううん。音央ちゃんならきっとあたしのことをお祝いしてくれるでしょうけど」
「だったら」
「誘いづらいのよ。去年は他の子は呼ばずにアヤメと二人だけでお祝いしたから」
「え……どうしてですか?」
「ほら、あたし達二人だけ、みんなと違う高校に入学してるじゃん? やっぱその辺で都合がつかなかったりするし、中学生の頃より忙しくなったから音央ちゃんも誘いづらかったりしてさぁ」
その説明を受け、俺は表向きは納得してみせた。だけど、この二人が鈴白さんをはじめとする魔法少女と距離を置いていることを、俺は知っていた。
鈴白音央。音無先輩や四之宮先輩と同じ、魔法少女の女の子だ。中学一年生で俺より三つ下だけど、魔法少女……スペシャライザーとしての経歴は俺より長い、先輩だ。
その子を含め、大勢の魔法少女がこの街には存在していて、先輩たちも協力したり助けあったりしていたらしい。
だけど二年前、この街を中心とした大戦が一般人の知らないところで繰り広げられた。その際に四之宮先輩は自分の力に呑まれて魔法少女たちと対立し、音無先輩が決着をつけた。
それが原因となったからかは定かではないけど、二人は多くの魔法少女が通っているらしい東台高校とは別の、この西台高校に通うことになった。
今は他の魔法少女とどういう関係なのか、俺には分からない。接しているところを見たのは鈴白さんだけだからだ。だけど、二人のことを気に掛けている真神風里さんという女性は、二人が疎遠になっていることを見抜き、最近ボランティア倶楽部に入部した俺に対し、二人の支えになるように頼んできてくれた。俺はそれに応えたい。
だから、今回の誕生日はその切っ掛けになってくれるかと思い提案してみたのだが、二人の先輩には遠慮の色が濃いようだ。
「で、でも去年はってことは……一昨年とかは、鈴白さんも一緒にお祝いしたんですよね?」
「ああ、うん……あの時は中学生だったし、みんなも時間の都合が合わせやすかったからね。風里さんのお店を貸しきって色んな子の誕生日のお祝いとか行事とか、たくさんやったよね!」
「そうね。あの頃はみんな若くって、楽しかったわね」
「今も充分若いじゃないですか!」
四之宮先輩に突っ込みながらも、なんとか鈴白さんも巻き込めないかと食い下がる。
「流石にその色んな子は面識がないから、俺も誘えないっすけど……鈴白さんなら大丈夫です! 俺、誘ってみますから!」
「でも……」
「俺は先輩たちのマネージャーです! 先輩たちが楽しんでもらえるよう全力でマネジメントしますから!」
「うぅん……もう明後日なんだけどなあ」
「な、なんとかします!」
「まあ、いいんじゃないの? 相沢くんのやりたいようにやらせてみましょうよ」
俺の熱意が通じたのか、四之宮先輩が援護してくれた。嬉しくなり、つい目を潤ませて先輩を見てしまう。
「今日から準備してどんなグダグダな誕生日会になるのか、楽しみだし」
ああそうですかそっちの期待ですか。メガネの向こうで先輩の瞳が怪しく笑っている。
「……先輩の期待を斜め上に裏切るようなパーティにしますよ」
「斜め下に落ちないようにしてね」
良し悪しはともかく、四之宮先輩の同意は得られたということでいいだろう。俺は勢い良く席を立ち、鞄を手にとった。
「じゃあ早速鈴白さんのところに行ってきます!」
「ああちょっと待って」
「止めても無駄ですよ!」
「いやそういうつもりじゃ……」
「それじゃあ!」
音無先輩の制止を振り切り、俺は部室を飛び出そうとした。
「誕生日会をするなら、場所は彼女の家かここくらいしか使えないと思うわよ?」
「了解です! その辺も算段しときます!」
そして俺は学校を飛び出し、鈴白さんのところへと向かうのだった。
「…………草太くん、音央ちゃんのいるところ知ってるのかな?」
「知ってるから、飛び出していったんじゃないのかしら……?」




