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着替えた服は思ったよりも普通だ。
軍服を基調にしたような服に肩に巻きつける形のマント。その全てが黒や紺をベースにしていて、髪の色と合わせると正に全身真っ黒だ。
「ふーん。まあまあね」
わかっていたけど、薄い反応ありがとうございます。
思ったより現代よりの服だな。もっとファンタジーな感じだと思っていたんだけど。いや、ここでカボチャのパンツとか、タイツとか出て来られても困るんだけどさ―――あ、それは王子の服装か。
こいつの服装もゴスロリというような服装だしな。
人形みたいな容姿だし、西洋人形みたいで十分似合っているんだけど―――ちょっと違和感があるんだよな。
ただ単に見慣れてないからかもしれないけど。
それとは違う感じの違和感だ。
「なに」
「いや、その服がこっちの正装なのかなって」
「そんなわけないじゃない。馬鹿にしているの」
「馬鹿にはしてないんだけど…」
じゃあ、これはこいつの趣味か。
「準備ができたなら行くわよ」
背を向けたこいつに俺はまだ聞いていなかったことがあったことを思い出した。
「あ、あのさ」
「今度は何?」
「いや、まだ、君の名前を聞いてなかったと思って…」
「そう言えばまだ名乗ってなかったわね。シルヴィア・ウィルス・デナン。そうね、身分で言えば公爵家の出身よ。魔王様の側近をしているわ。今回貴方のサポートと教育係を任されているわ」
「教育?」
「貴方はこちらの世界のことを何も知らないでしょ。それに、魔王様の代理と云ったってやってもらう仕事は簡単じゃないわ」
「でも、まだ子供だろ」
「はぁ?誰に言っているの。私は貴方よりも年上よ」
「いや、どう見たって」
12歳位の少女にしか見えないだろ。
これで俺より年上とか信じられる訳ない。
「あぁ、忘れていたわ」
急に風の渦が彼女を包み込んだ。
そこに現れたのは、さっきまでいた少女と同じ金髪と紫の瞳を持った美女。
スラっと伸びた手足に程良く育った体つき。
それを強調するかのように体の線がはっきりとわかるネイビー色のドレスを身に着けていた。
ただ、その胸のあたりだけ成長があまり感じられなかったが―――。
「あの………どちら様ですか」
それに、さっきまで目の前にいた少女の姿がない。
「貴方の耳はちゃんとついているの?シルヴィア・ウィルス・デナンよ。さっきも名乗ったでしょ」
「はあ――――――?!」
いやいや。髪と目以外全くの別人だろ。
さっきまでの子供がこの美女とか、冗談がきつすぎる。
「うるさいわね。貴方を油断させる為に子供に扮していたのよ。魔王様の側近が子供の訳ないでしょ」
「………詐欺だ」
「何が詐欺よ。変身何てできて当たり前でしょ。それとも貴方は幼い子供に興奮する変態なの」
「いや、俺にそんな趣味は断じてない」
変なイメージを勝手に植え付けないでくれ。
俺の好みは優しい巨乳美女だ。
子供なんて範囲外だ。貧乳もだけど。
「まあ、貴方の趣味なんて興味の欠片もないけど。名前も名乗り終わったし行くわよ。これ以上遅れられないわ」
「わかったよ」
もうどうにでもなれ。
何があったってもう驚かないぞ。