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「…る、………もり!…ちょっと、いつまで寝てるつもり!!」

 あまり目覚めにはふさわしくない甲高い声が頭に響く。

 と言うか、うるさい。

 なんだって言うんだよ。

 俺はまだ寝ていたいんだ。昨日は企業に提出する履歴書作りで正直寝不足だし………って、ちょっと待てよ。

 俺、ひとり暮らしだぞ?

 何で他の奴の声がするんだ?

 そうか、夢か。

 それにしても現実のような夢だな。夢の中で眠っているのに起こされるなんて。

 なら、まだ寝ていても大丈夫だ、問題ない。

 でも、この声、少し引っかかるんだよな。どっかで聞いたことのある声なきがする。でも、俺に女の子の知り合いなんてほとんどいない。せいぜいゼミの同期か後輩くらいだ。

 あー、本当に女っ気なかったよな…。これでも花の大学生だったのに。

彼女の一人くらい欲しかったなあ。

「いい加減起きなさいよ!!」

 -ドゴッ

「いってー!!」

「ふんっ」

 腹に目覚めには似つかわしくない衝撃を受けた。

「ゴホゴホッ!誰だよ、いったい」

「起きないあんたが悪いのよ。この私が起こしてやっていると言うのに、いい身分よね。弁えなさいよ。あー…なんでこんな奴が…」

 ぶつぶつと文句を言う目の前の少女…どこであったんだっけ?

 ――――ああ、そうだ。

 なんか急に話しかけてきて、そしたら穴に落ちて………。

「って、ここ、どこだよ?」

 良く見たらここは俺の部屋じゃない。

 見たことのない部屋だ。

 西洋風だし、ベッドも大きい。

 それにちょっと古臭い。

「ちょっと、話聞いてる?」

「ああ………えっと。あのさ、ここどこ?」

「魔王城だけど」

「そっか。魔王城か、どうりで………えっ?」

 ん?今可笑しな単語を言わなかったか?

「あの、どこって言った?」

「ちゃんと聞いてなさいよ。魔王城よ。ま・お・う・じょ・う」

 いや、区切って言わなくても聞こえてんだけど。

「はあ―――――?!魔王城って、あの魔王城?!魔王が住んでいる城のことだろ!?何で俺がそんな所に」

「はあ…。ちゃんと言ったじゃない。あんたが『魔王代理』に選ばれたんだって」

「いや、言われ……そういや、そんなこと言っていたな」

「でしょ?だから今日からここは一応あんたの城ってこと。わかった?わかったら早く支度してくれる?時間が押しているんだから」

「どこか行くのか?」

「あんたの就任の挨拶」

 いや、さらっと言ってくれているけど、俺、まだ理解できてないんだけど。

「俺、やるなんて言ってない」

「あんたの意思なんて関係ないわ。これは決定事項なの。あんたに拒否権なんて与えられてないのよ」

「人権はどこに…」

「何それ?聞いたことない言葉ね」

 でしょうね!

 そもそも人間じゃないってオチなのはわかっているよ。

「早くしてよ。あんたのせいで時間ロスしているんだから」

「…はい」

 いや、なんか、逆らえない雰囲気と言うか、圧力と言うか。日本人なもんで。

「じゃあ、これに着替えて」

「これは?」

「一応魔王様だからね。そんなみすぼらしい恰好じゃ困るのよ」

「みすぼらしいって……これが日本人の基本的な戦闘服なんだけど」

 確かに吊るしの安物スーツだけどさ。

 別に変な格好しているわけじゃないし。

「そんな堅苦しい恰好でどうやって戦うのよ。保護力も弱そうだし」

「いや…そういう意味じゃなくて」

「?」

「…もういいです。なんでもありません」

 スーツが男の戦闘服なんて言葉、もう古いのかもな…。てか、死語か?

 いや、それ以前の問題か。

 文化―――世界が違うのか。

「良くわかんないわね。良いから早く着替えて」

「はい」

 俺に逆らうなんて選択肢は用意されていなかった。


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