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言の葉のチカラ  作者:
侯爵家? ありえない
13/27

兄と姉


久しぶりの更新です。

すみません、相当時間が空きましたね。


こっちは中々考え付かないんですよ。

ですので、次の更新もおそらく、

しばらく先だと思います。


 ………あれ? これ、何の尋問?

 公爵家を訪問したこの日、クレメンス侯爵家に帰って来たアキラは、兄・ウェンリルと、姉・アレグラを前に、尋問もどきを受けていた。


「アキラ、アリサお嬢様と一体何を話したんです?」

「お嬢様に何か嫌なことを言われて泣いたんですか? 嘘はつかないでくださいね」


 いやいや、本当にこれ、何の尋問だよ。アキラは逃げるための言の葉を紡ぐ用意をしながら、のんびりとそう考える。

 これを尋問と言わずして何といわんや。そう考えながらも、静かに準備していた言の葉を呟いた。


転移テレポート

「ちょっ! 待ちなさい、アキラ!」


 そう言われて待つ馬鹿はいないだろう。アキラはそう考えながら自室へと転移し、そして、その言の葉の力を持って他者の侵入を拒んだ。


『完全封鎖』


 その一言で、誰もアキラの部屋には入って来れない。入ることは叶わない。それがアキラの言の葉の力。

 その部屋の中で、アキラは静かに目を瞑った。思い出すのは、公爵家の末子、アリサとの会話、というか一方的に告げられた言葉。


"私はね、元日本人なんだよ"

"本当は、何歳なの?"

"本当に、何があったのさ"


 この世界で、アキラを除いて唯一日本と言う国を知っている少女。日本と言う国がどんなものなのか、よく知っている少女。

 だから、彼女はアキラを心配した。自分の死んだ後の日本を気にかけた。


 彼女は、アキラが日本で虐待を受けていたことを、何となく察していた。その上で、アキラを愛そうとした。

 だから、アリサはアキラを優しく抱きしめていたのだ。


「変わったヤツ………」


 アキラはアリサをそう評する。だが、その言葉に悪意は一切なく、ただただ、純粋にアリサが変わっていると思っているだけだった。

 何せ、今のアキラ内ランキングは、義兄(ウェンリル)義姉(アレグラ)よりも上にアリサがいるのだから。


「アキラ! 開けてください、アキラ!」

「煩いな……」

『音声遮断』


 そうして、外からの音を完全に遮断し、自分の世界に入り込んだアキラは、真剣に思案する。アリサのいっていた言葉を。転生者だという、その言葉を。

 何となくではあるが、アキラの置かれていた境遇に気がついているアリサ。気がついて、それでも深く追求せずに優しく受け入れた少女。


「………なんで、あんな簡単に人を受け入れることが出来るんだろ」


 アキラには分からないことばかりだった。人を受け入れることが出来ない少女。人を信じることが出来ない少女。

 だから、アキラにはアリサの思考が分からなかった。どうすれば人を信じることが出来るのか。


 ちなみに、この間も扉の外では扉を開いてもらおうと、アレグラやウェンリルは声をかけ続けている。


「アキラ! 開けてください!」

「扉を開くんだ!」


 だがもちろん、言の葉で音声を遮断したアキラの耳に、その言葉は届かない。

 結果、音声遮断の切れたアキラの耳には、一気に兄や姉たちの言葉が入り込んだ。


「アキラ! 開けてください!!」

「……うっさいよ」

「アキラ!」


 その兄たちの声に辟易したアキラは、静かに扉に近寄り、声をかけた。もちろん扉は開かない。開いたらその瞬間に二人が部屋に飛び込んでくることを予想しているからだ。


「うるさいよ、二人とも」

「アキラが扉を開いてくれれば、静かになりますから」

「アレグラの言うとおりだよ。アキラ、扉を開いてくれるかな?」

「ヤだ。用件あるなら、そこで言ってよ」


 正直、顔合わせて話すの面倒なんだ。アキラはそう言いながら、扉に背を向け、座り込む。

 その瞬間、パシッという乾いた音があたりに響いた。


「ちっ! もう切れたのか」

『完全』


 完全封鎖という言葉の完全までしか言うことが出来なかった。アキラの呟きを聞いた二人が、外側から扉を開いたのだ。

 結果、扉にもたれかかっていたアキラは、後ろに倒れることとなる。ゴンッと言う、アキラが床に頭をぶつける音が、嫌なくらいによく聞こえた。


「あ! すまない、アキラ。大丈夫かい?」

「動かないでくださいね、アキラ」


 アレグラはそう言って、ぶつけた頭に意識を集中させているアキラの頭を診る。


「―――触るなっ!」

「ダメですよ、アキラ。きちんと処置をしないと、腫れてきますから」

「なら、氷をくれればいい! 触るな!」

「氷よりも、治癒魔術のほうが効きますし、早く痛みも取れますから」


 アレグラが何度言っても、アキラは触るなという言葉しか放たない。だが、アレグラは諦めなかった。


「お兄様、アキラを押さえていてもらえますか? その間に診ますから」

「分かった。アキラ、しばらく大人しくしていてくれよ」

「てめぇ! 離せ!」

「女の子がそんな言葉を使ってはいけないよ。ほら、大人しくしようねー」


 妹に頼まれた兄は、そう言いながらアキラを羽交い絞めにする。それにアキラは文句を連ねるのだが、それでもウェンリルは堪えないらしい。


「いいから大人しくしなさい。治療は早く済ませたほうがいい」


 ちなみに、よっぽど離れたいのならば言の葉の力を使って離れればいいのだが、頭の痛さでその考えが浮かばないらしい。

 結果、アキラは望まずとも、治療を受けさせられること隣、だがそのおかげで痛みの大体は吹っ飛んでいくこととなった。


「はい、もういいですよ。お兄様、ありがとうございます。アキラ、後は氷を用意させますから冷やしておいて下さいね」


 じゃないと、後から腫れて痛い目を見ますからね。アレグラの言葉に、もう諦めたらしいアキラは静かに頷いた。

 その後、メイドから氷の入った袋を受け取ったアキラは、アレグラの指示に従って、ぶつけた頭に氷を当てる。


「あー、気持ちいいー」

「ぶつけた場所が、今熱を持っていますからね。しばらく、冷やし続けているんですよ」

「ん」


 そうしてアキラは大人しくぶつけた頭を冷やし続ける。自分の気が済むまで、痛みが完全に取れるまでしばらくの間―――。


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