チキンレース
「消費税15%でも悪化 衝撃試算」
と、いうような内容の記事を最近読みました。間違いなく財政赤字問題は、今の日本で、もっとも深刻な問題の一つでしょう。個人的に僕は、財政赤字問題は、「チキンレース」の様相になって来ているのじゃないかと考えています。
走者は二人。
国民と、政府。
ずっと先には国家破綻という崖が待ち構えています。どちらかが「金を出す」と宣言すれば、それにブレーキがかかる。しかし、国民は増税に反対するし、政府は節税に反対します。つまり、どちらも「金を出す」というブレーキは踏みたくない。損はしたくないからですね。
さて。
ところが、このチキンレースには少し変わった事情があります。
その先が霧でかすんで見えないのですね。つまり、どこまで進めば崖から落ちるか分からないのです。そして、政府には情報操作という武器がある。つまり、「見えない」ことを利用して、国民に嘘の情報を伝えられるのです。
政府は実際の崖の位置をもっと近いと伝える事もできるし、こちらにはブレーキを踏む余裕がないんだ、とも伝えられる。ま、財政状態をより酷く演出する事もできるし、無駄遣いの実体を過小評価して伝える事もできるって意味なんですが。
ただし、危機が迫っている点だけは、揺るぎない事実でしょうが。
中には、先が見えないから大丈夫、と思っている危機感の麻痺した国民もいますけども……。しかも、たくさん。
正直に言えば、僕はこの消費税15%でも悪化、という話も芯から真に受けてはいません。
「情報」は裏付けが明確でない限り、半信半疑で受け入れるのが基本です。まぁ、だからと言って、全く無視する訳でもありませんが。少なくとも、「増税」だけに焦点を絞って問題を語るのはフェアじゃない。
根拠を述べましょう。
そこには、「節税」の前提条件が欠けているのじゃないかと考えるからです。最近何故か、一般会計だけでなく、特別会計をも合わせた予算内容を取り上げた記事を、ほとんど見かけなくなったのです。なんだか、怪しいとは思いませんか?
特別会計というのは、国会の審議なしに予算が組める政府の裏会計みたいなもんですが、その規模は一般会計よりもかなり大きい。だから、一般会計は借金50%以上で占められている、と言っても、特別会計も合わせればもっと低くなる事は確実なんです。
そして、
問題はここからなんですが、この特別会計、節約すれば12兆円~15兆円の縮減は可能だとも言われているのです。更に、小泉政権時代の予算内容なら、これだけあればプライマリーバランスを均衡させる、つまり、借金が増えもしなければ減りもしない状態にまでもっていける(かも)と言われていたのです。
もしも、これが達成でき、所得の高い高齢者の自費負担の割合を増やせたなら、消費税15%で充分に悪化を食い止められる可能性は大きい(日本の国際競争力が、更に急速に衰えてしまったら分かりませんが)。
そして、公務員の人件費(高齢社会の現実を考えるのなら、構成比的に高齢者への年功序列的な給与の高額支給や退職金や共済年金の高額支給は不可能なのに、ほとんど減らしていない)や、規制や縦割りによる非効率な行政… 意味のないばら撒き政策。無駄を削減できる余地はかなり残されている。
ただし、繰り返しますが、危機が迫って来ているという点だけは揺るぎない事実です。少なくとも、対策を執ってもなお増え続ける社会保障費の分だけは、増税で賄う覚悟が必要でしょう(税金とは別枠にする、という「小さな政府」の発想を個人的には望みますが)。
勘違いしている人が多いですが、税金が国民に還元されている限りにおいては、それは実質的な国民負担にはなりません。お金は循環しているので、国が金を使えば、それは国民に返ってきます。もっとも、それが極端に高額な知事の退職金になったり、働かない役人の懐に入るのなら駄目ですが。だから、増税それ自体はそれほど恐れる必要はない。むしろ、恐れるべきなのはその使われ方なのですね。
まぁ、国の借金の穴埋めに利用される場合は、少し違った事情があって、金は金融機関に行くのですが。その金融機関が、産業発展に資金を積極的に用いてくれるのなら、プラスの効果です。そうならなかったら、国民負担になってしまう……(だから、合わせて何らかの対策が必要)
さて。
政府や公務員ばかり責めてきましたが、もちろん、国民の態度も改めるべきでしょう。公務員ばかりに負担を強いる訳にもいきませんし(そもそも限界があるのですが)。例えば、努力もせず安易に生活保護に頼ろうとする姿勢。恵まれた医療制度に甘えるような不摂生な生活態度。「本当にうつ病なのか?」と首を傾げたくなるような状態で国からの保護を罪悪感なく受け続ける、うつ病患者。こんな感じで、モラルハザードバリバリで、公の金を使いまくる人達がいますが、それが可能だったのは、もう過去の事です。その態度は、確実に国の財政を蝕んでいる。
今の日本は、大きく国際競争力を下げ、財政赤字も酷い。とてもじゃありませんが、そんな人達の生活を支えられる余裕はありません。憲法に「最低限度の生活を保障する」と書かれてあるだけで、ゼロから富が勝手に産み出される訳ではありません。それは誰かの負担になっているのです。
高齢者についても、同じ問題があります。過去の年功序列の幻想を抱き続け、人口比の少ない若い世代への負担を全く意識しない人がいますが、若い世代への負担を増やせば、日本は国際競争力を落とします。自然、収入は減って財政問題は解決できない。
と、なんだか批判ばかりになってしまいましたが、責任の擦り付け合いでは、恐らくこの国の財政問題は解決できません。協力し合って問題を解決しよう、という態度が必要だと、少なくとも僕は考えます。やるべき事は同じですが、心構えが変わってくれば、自ずから 成果にも影響を与えますから。
こんなチキンレースはさっさと終わりにして、有効な問題解決策を話し合わなくてはならないでしょう。因みに、長文になるので書きませんが、具体的なその方法もあるにはあります(他で書いています)。
もしも、国家破綻した場合、恐らく被害の程度はパニックがどれだけの規模で起こるかに大きく左右されます。少なくとも覚悟だけはしておくべきでしょう。パニックに陥らない為にも。