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男扱いされてる女子、俺の前では可愛い女の子  作者: ときたま@黒聖女様


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 なんでラノベの主人公ってのは自分のことを陰キャと言うくせに女子に話し掛けられたらまともに返事出来るんだ。真の陰キャならドッキドキして絶対テンパったりするはずなんだけど。

 西宮にぶつかられた翌日、登校して恋愛もののラノベを読みながら俺はそんなことを思っていた。


「お、おはよう……東野くん」

「ん、西宮か。おはよう」


 教室での俺はといえば、ろくに友達もいないボッチだ。中学までは良かった。昔から冷めた性格をしていて、他人にあまり興味がなかったとはいえ小学校から同じ顔ぶれが多くてそれなりにつるむ相手がいた。

 でも、高校になった途端、環境ががらりと変わった。出身中学もバラバラで見知った顔がぜんぜんいない。おかげで、高二になって早くもひと月が過ぎたというのに立派なボッチ生活を送っている。


 ただ、まあ、それが辛いかと聞かれればそうでもない。無理に人付き合いするのも疲れるし、一人でいる方が気楽だからだ。あ、これは、別に強がってないぞ。

 とまあ、長々と自分語りをしてしまったが要はそんなボッチ野郎には挨拶する相手すらいないというのに西宮に声を掛けられて俺は驚いてるって話だ。


 しかし、まあ、西宮も変な奴だ。昨日のことで俺とは関わりたくもないって思ってるはずなのに自分から挨拶してくるなんて。


「あ、もしかして、昨日のことまだ気にしてるのか?」


 結局、昨日は俺が西宮と話すことに緊張してるって話で終わった。けど、そもそもの話、こうして西宮と言葉を交わすきっかけとなった西宮にぶつかられたことを西宮は随分と気にしていた。

 一日経過して、また罪悪感でも抱いているんじゃないかと思って聞いてみたが西宮は首を横に振る。違ったらしい。


「あの件は東野くんの言葉を信じて飲み込んだよ」

「そうか。それは良かった」


 俺にとっては問題ないことをいつまでも気にされると俺まで気が滅入ってしまうからな。良かった良かった。って、ことは、西宮は何も用がないのに俺に挨拶してきてくれたのか。スゲーいい奴じゃん。やっさし。


「そ、そっちよりもボクが気にしてるのは……ぼ、ボクを相手にきんちょ……ううん、や、やっぱり、何でもない」


 西宮は小声で何か言っていたがボソボソと小さ過ぎていまいち聞き取れなかった。きんちょ、みたいなことを言った気がする。キンチョールの話でもしたいのか? いや、まさかな。何で西宮と殺虫スプレーについて語らないといけないんだって話だし。


「じゃ、じゃあ!」


 聞き返そうとする前に西宮はクラスの男子が談笑している輪に行ってしまった。西宮が何をしたかったのかよく分からなかったが朝の挨拶をして俺の気分は上がっていた。

 その後の読書がすこぶる捗った。




 今日は朝から西宮のおかげで気分がいい。

 それに加えて、天気が雨ということもあって本来なら外で予定されていた体育の授業が中に変更になった。

 しかも、内容はクラス対抗ドッジボールときた。

 あまり運動が得意でない俺でもドッジボールだけは大好きだ。何せ小学生の頃、めちゃくちゃ遊んでたからな。

 俺のテンションは最高潮にまで至っていた。


「よーし、ここからは女子と合同だ」


 そんな俺にまさかの一言。

 じょ、女子と一緒? この狭いコートの中で!?

 体育館を半分にした広さは決して狭くない。とはいえだ、ひとクラス全員が入るとなれば人口密度が上がり、動きづらくなる。


 別々にしてほしい俺とは違って大抵の男子は女子と一緒で喜んでいた。女子にいい姿でも見せてモテたいのだろう。単純な奴らだ。


 そうこうしている内にも女子と合同になり、ドッジボールが始まった。ドッジボールってのは、どうしてこうも熱くなれるのか不思議だ。もっと小さい頃なら分かるのに、大きくなった今でも大半が盛り上がっている。

 どっちかのクラスが誰か当てる度に歓声が上がって時間はあっという間に過ぎていった。俺はというと、体操服姿の女子が近くにいることを無駄に意識したせいで派手に動けずコートの隅で息を潜めている。

 その結果、幸か不幸か西宮と二人、生き延びてしまっていた。


 西宮は背中まである黒髪を服の中にしまって動きやすい格好をしているから上手く生き延びたのだろう。西宮の作戦勝ちだ。


 と、そんなことよりコートの中に残っているのは俺と西宮の二人。すっかり動きやすくなった。くくく、ここからが本番だ。ようやく、本領が発揮出来るぜ!


「……変だな」

「よけろー! 西宮ー!」

「いや、取れ! 取ってこっちに回せ!」


 俺の方にボールがとんでこない。ずっと、西宮ばかりが狙われている。どういうことだ。俺なんか眼中にないってことか?

 相手チームの残り内野は三人。全員が男子だ。とんでくるボールの速さもそこそこで西宮は避けることに専念している。

 俺はボールに触りたくてわざと狙われるようにコートの中を動き回った。けど、狙われるのは相変わらず西宮だけ。俺だってボールを投げたいのにぜんぜん投げてこない。

 そりゃ、西宮の方が俺より大きくて目立つから狙い易いんだろうけど……女の子だぞ。女の子一人をよってたかって狙って恥ずかしくないのかよ。


「西宮! 今! そこ!」

「あー! 惜しいっ!」

「今のはキャッチできたぞー」


 外野にいる男子は西宮にだけそんなことを言う。おい、俺にも何か言えよ。期待しろよ。同じチームだろ。

 ボールが当たりそうになるギリギリを西宮は上手に避ける。でも、連続で狙われ続けて体力的にもキツいのかだんだん危ない場面が多くなってきた。当然だ。むしろ、ここまでよく当たらずに済んでいるなと感心する。

 どうせ、西宮が当たるまで俺なんて眼中にもないんだろう。それは、つまらん。なら、俺からボールを取りに行ってやる。俺だってボールを投げたいんだ。


「……えっ!?」


 西宮とボールの間に割り込むようにして乱入した俺の背中で驚いたような声がした。誰のものかは確認するまでもない。


「……悪い、西宮。これ、外野に投げて逆転してくれ」


 上手にキャッチすることが出来ず、取り損ねて当てられた俺は伸ばした手で掴んだボールを西宮に託す。

 くそ、俺だって一回くらいは投げたかった……!

 西宮が味方にボールを投げたのを見届けてから外野に移動しようとした時だ。


「ひ、東野くん」

「ん?」

「あ、あの」


 呼び止めてきた西宮が何か言いたそうにしている間にも勝負は続いていて、大きな歓声が上がった。どうやら、味方が一人、相手を当てることに成功したらしい。俺の犠牲が逆転に繫がるならまあいいだろう。


「何かあるならまた後で聞くから集中した方がいいよ」

「そう、だね」

「そうそう。無理にとは言わないけどさ、ここまで残ったんだし最後まで当たらずに頑張れよ」


 そう言い残して俺は戻ってきた味方と入れ替わるようにして外野に出る。

 その後、戻ってきた味方の頑張りがあり、俺達のクラスが勝利を収めた。

 二クラス合わせて西宮だけが一度も当たらずにドッジボールを終えた。西宮は凄い奴だ。

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