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第四章 願いの天秤 13

 法王庁東館の更衣室で、リドリーは法術衣を脱いだ。


 もう外は暗く、更衣室には他に帰り支度をする者すらいなかった。ハンガーに法術衣を掛けてロッカーにしまい、軽く身なりを整える。


 ロッカーの鏡に映る自分の顔が、ふと目に入った。

 その表情に、はっとした。


 しばらくの間、鏡から目を離せなくなった。


 鏡の横にぶら下げていたカメオのネックレスに、そっと手を伸ばした。白く浮かびあがる女神の横顔を眺めた。


 ――いつも、こんな気持ちだったのですか、先生


 憂いをたたえた女神の瞳を見つめて、リドリーは思った。


 事件現場では犯罪に立ち向かい、修法院では教鞭を振るう凛とした姿が、ずっと目標だった。敵うと思ったことはない。手が届くと思ったこともない。ただ、同じ道を歩きたい。その足あとをたどりたい。その姿を追っていたかった。


 たくさん教わった。もっと教わりたかった。


 『お前の見ている世界は、ずっと未来の法術だよ』


 ――この景色の先に、先生はいらっしゃいますか


 リドリーは、静かにロッカーを閉じた。

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