第二章 瞳の奥の記憶 08
夕方近くに法王庁に戻ると、リドリーは、ドレッドからの報告とは別に、思わぬ情報を警察から得た。
自宅の押収物の中から、四年前にオリナからスダリに宛てた手紙が発見されたのだ。
軍からの干渉を意識して、警察が押収したものは日用品の大半に及んでいた。手紙は、コートを仕舞っていた衣装箱の二重底から見つかった。
手紙は、文字の線の濃淡まで洗練された、優美な筆致で綴られていた――
『幼い頃から、私たちの家族だったスダリへ
この便りを書くために何度もペンを握りました。けれど、どうしても書き出せませんでした。
ハリと母様が家を出て、ミミがいなくなって、やがてスダリも去ってしまってから、一年です。
ハリや母様との便りが途切れてしまい、この便りもあなたに届かなかったらと思うと、胸が千切れそうでした。
それでも、こうして認めたいことがありました。
まだ歩けるうちに、しておきたいことがあるのです。
昔のように皆と暮らすことを、父様に認めてもらうことです。
このまま一人でいることに耐えられず、
身体が動かなくなることにも耐えられず、
同じように、いいえ、それ以上に、ハリはどれほど苦しんでいることでしょうか。
私の中から、皆がいなくなってしまう前に、
ハリや母様、スダリと一緒に、また暮らしたい。
これまでも、父様には話をしてきましたが、相手にして頂けませんでした。
ですが、諦められないのです。
来月、ハリや母様が出て行ってしまった日に、父様に話をするつもりです。
私は諦めません。
また、便りを送ります。
オリナ・グラファド
お願い。届きますように。』




