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「盗み聞きたァ、感心しねえな」


突然、自分へ向けられた声に、晴臣はビクリと肩を震わせた。完全に気配を消していたはずなのに……気づかれた。




「……やあ。こんなところで何をしているんだい?」


平然を装って言葉を返すが、背中には汗が滲む。亮太はそれを見て、鼻で笑った。


「全部見てたクセによく言うぜ。成績学年一位様は、覗きが趣味か?」

「ふう……仕方ない。じゃあ、もう直球で言おうか。君が留学生に何かしないか心配でね。“ここに連れ込んだ女性には手を出す”んだろう?」


言葉を交わした瞬間、二人の間で火花が散ったような気がした。


「……でも、アーリャさんには手を出さなかったんだね。見境ない不良くんにしては珍しい」


あからさまな挑発。亮太の肩がぴくりと跳ねる。




「……そんなとこに立ってたら話しづれぇだろ。中に入れよ」


かかった……そう晴臣は判断した。

相手のテリトリーに足を踏み入れてでも話ができれば、自分のペースに持ち込める。

理性的な相手なら、話し合いは可能だ。


しかし、それが通用するのは、“話が通じる人間に限る”ということを、この時の晴臣はまだ理解していなかった。




「え────」


踏み出した瞬間、ありえないほど強い力で倉庫内へと引きずり込まれ、マットに背中を叩きつけられた。


「ちょ、君……男には興味ないって……!」




────ガタン。


体育倉庫の扉が閉まり、その外側から亮太の声が響く。


「ああ?俺は男なんざ興味ねぇよ」


「そうかい。君、ここに私を閉じ込めて午後の授業をボイコットさせるつもりなんだね?残念だけど、授業を一回休んだくらいで私の成績は……」













「お気楽な頭してんな、お前」




……息が、痛い。

喉が焼けるように刺激され、目がヒリつく。声が、出ない。


(な……なんだ……これ……)


「さて、学年一位様に理科の授業だ。次亜塩素酸に酸性洗剤を混ぜると……どうなるでしょう?」

「そ、んな……まさか、君……」

「混ぜるな危険って、知ってるよな?」


ドンドンドン!

内部から扉を叩く音が響き、亮太は楽しげに腹を抱えて笑った。


「そこでくたばれよ、学年一位様」




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