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「初物って、あれかい?競りにでも行くつもりなのかな?いいよねぇ、初物のマグロは」


とんでもない方向から投げ込まれた晴臣の一言に、クラスメイトが揃ってギョッと目をむく。


『競り!?競りって、あの競りのこと!?一万円!二万円!はい落札!ってやつ!?』


これにアーリャが食いついた。ロシア語でまくし立てながら、瞳をこれでもかというほど輝かせている。


「そう、それ。良かったら見に行くかい?」

『行きたい!!ぜひ見せて!!』

「あー、ほなボクも行ってええんやったら、見たいわ」


相川までノリよく参加してきて、教室の空気はまた一気に柔らかくなる。張り詰めていたピリピリ感が薄れ、ざわめきが心地よく響く。




「……チッ、気に食わねぇな」


そんな中、ただ一人、亮太だけが険しい表情を崩さない。そして無言のまま席を蹴って、教室から出て行こうとする。


「あっ、佐藤くん!どこに行くの!?」


高橋が慌てて呼び止めると、亮太は振り返り、舌打ちまじりに言い放った。


「発散してくるだけだよ。……別にテメェ相手でもいいが、来るか?」

「なっ……なっ……!」

「はっ。何その気になってんだよ。年増に興味なんかねぇよ」

「なっ、アンタねぇ!!」


カッとなった高橋が言い返そうとした瞬間、亮太は完全に無視して教室を出ていく。


「ちょ、佐藤くん!!」

「まぁまぁ先生。もうええんちゃいます?他にも生徒おるんやし、一人に構いっきりはちゃうと思いますよ?」


相川が冷静にフォローを入れる。

その通りだ。高橋は2年A組全体の担任なのだ。亮太一人にかかりきりになるのは本末転倒。

高橋はぎゅっと唇を結んでから、深く息を吸う。


「……わかりました。佐藤くんのことは休み時間に何とかします。自己紹介、続けてください」


そこからの自己紹介は滞りなく進んだ。




……ただし、亮太の席だけは、四限目が終わるまでずっと空いたままだった。




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