表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

1-1




季節は桜の花びらが舞う四月の始め。

今日は富士見学園の新学期、そして高等部二年生にとっては初めての授業の日だった。


舞台は二年A組、ホームルーム前。

他のクラスからは賑やかな声が響いてくるというのに、このA組だけは気味が悪いほど静まり返っている。


理由は二つある。

ひとつは“学園一の変人”として名を馳せる 高本晴臣 がこのクラスにいること。

そしてもうひとつは“学園一の問題児” 佐藤亮太 が同じくA組に割り振られたことだ。


晴臣はまだいい。奇人ではあるが、害はない。それに学年一位の成績を持つ優等生でもある。

しかし亮太は違う。未成年喫煙、飲酒、校内での喧嘩や性行為、さらには問題行動の数々……教師でさえ手を焼く超級の不良だ。


《学園一の不良には、学園一の変人をぶつけるしかない》

────どうやら、それが学校側の苦肉の策らしい。

要するに、このクラスに配属された生徒たちは、運悪く“最低最悪の組み合わせ”に巻き込まれてしまったわけだ。




「さて、私がお相手する不良クンは……」


晴臣が静かに席を立ち、教室内を見回す。

亮太の顔と名前は事前に知らされていたし、そもそも悪名高い彼を晴臣が知らないはずがない。


おい、変人が早速絡みに行くぞ……!

とクラスがざわめいたが────


「……あれ、いないのかい?残念だね」


亮太が座っているはずの席は空っぽだった。


(新学期早々サボりか……。ふむ、問題児と言われるのも頷けるね)


探しに行こうと晴臣が教室を出ようとした、その瞬間。




────ドンッ。


「あ?なんだテメェ」


入ってきた生徒と肩がぶつかり、晴臣がよろける。

180cmを超える長身。目元にかかる黒髪。血を思わせる赤い瞳。


間違いない。

彼こそが“学園一の問題児”佐藤亮太だった。


「君が佐藤亮太くんだね。私が……」

「ウゼェ。退けよ」


小柄な晴臣はその肩で押し飛ばされるが、怯むどころか、その瞳はむしろ珍しい玩具を前にした子どものように輝いていた。


龍と虎が睨み合う……そんな緊張感が教室を満たし、生徒たちは息を呑む。


まさに一触即発。しかし、誰も止められない。

A組の生徒たちは心の中で思っただろう。

「なんでこんな外れクラスに当たってしまったんだ……」 と。




────その時だった。


「Вот она, японская школа! Как же волнительно!

(ここが日本の学校なのね!なんてワクワクするの!)」


明らかに場違いなほど明るく弾んだ声が響き、しかも聞き慣れない言語だった。一斉に入口へ視線が向く。


「あぁ?なんだこいつ……外人か?」

「なるほど。君が聞いていた留学生だね」


そこに立っていたのは金色のウェーブ髪、淡い青の瞳を持つ、まるで奇跡のように美しい少女。

彼女は輝くような笑顔で晴臣と亮太を見つめていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ