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2-6




亮太が近づくにつれ、女生徒は一歩、二歩と後ずさった。彼女が先程までアーリャに向けていた強気は跡形もなく消えている。


「りょ、亮太……その……この子が、勝手に……」

「あ?」


亮太は立ち止まり、女生徒を見下ろした。

その瞬間、更に空気がピキ、と凍る音がしたように感じた。


「勝手に?何が」


女生徒は唇を噛む。言い訳を探しているようだ。


「だって……さっき、途中で終わっちゃって……それで……」

「途中?」


亮太は鼻で笑った。


「……一人で勝手に盛り上がってただけだろ、お前が」


女生徒の顔から血の気が一気に引いた。


「そ、そんな……!」




「……だからもういいわ。切る」


その宣告は……あまりにも淡々としていて、思わずアーリャさえも目を見開いてしまった程であった。


「っ……え……?」


亮太は心底どうでもよさそうに言い放つ。


「二度と来んな。連絡もすんな」


女生徒の膝が小さく震えた。視線が宙を泳ぎ、そしてその視線はやがてアーリャを睨みつける。


「……なんで……なんでよ……あんたのせいで……!」

「は?コイツのせいじゃねえだろ。ウザくなったのはお前自身。……ただ、コイツが来てちょうどよかった」


そう言って亮太はアーリャへ視線を向けた。

その目は相変わらず冷たく、苛立っていて、興味なんて欠片もない。だが、アーリャの鼓動が、ドクドクと打つ。


「……お前さ、最近マジでしつこいからちょうど切りてえと思ってたんだよ」


女生徒は唇を震わせ、「ふざけないでよ!」と叫びかけるが……亮太の眼光に射抜かれ、声を出せなかった。


「……消えろ。今すぐに」


その言葉は刃物より鋭く、容赦がなかった。

女生徒は涙をこらえるように唇を噛み、俯いたまま走り去っていった。

足音だけが虚しく廊下に響き、やがて消える。




……残されたのは、亮太とアーリャだけ。

亮太は髪を掻き上げ、煙たそうに吐き捨てる。


「……はぁ。マジで面倒くせえ。女って都合よく股だけ開いてりゃいいのに、変に勘違いして要求してくるからウゼェわ」


その言葉を聞いて、アーリャの胸が高鳴る。


(……これ……これは……)


この冷たさ。この理不尽で無慈悲な物言い。

アーリャの肩がぶるぶると震える。


亮太はアーリャをチラと一瞥し、気怠そうに笑う。


「……お前が来て助かったぜ。結果オーライだな」




完全にゲスで、最低で。




なのに。




なのに……!!




(……ほ、本物だわ……!)


アーリャは震えたまま、頬が赤く染まっていく。


(亮太は……わたしの大好きな漫画の“リョウ”そのもの……!)


怖いのに、嬉しくて、息が苦しい。

自分でも、この感情の正体はまだわからない。


だけど目の前の男は……ページの中から飛び出してきたアーリャが愛する“危険な不良”そのものだった。





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