表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第五話「添い寝」

投稿遅れたんゴ

森の朝は涼しく、澄んだ空気が胸いっぱいに広がる。

カイトは畑の様子を見終えて小屋に戻る途中、家の裏手で薪を抱えて歩くセレナを見つけた。

「おい……何やってんだ」

「薪を運んでただけよ。べ、別に問題ないわ」

セレナは強がった笑みを浮かべている。けれど、その足取りは危うく、次の瞬間、薪を落としそうになった。

慌てて駆け寄ったカイトが腕を支えると、彼女の身体が小さく震える。そして、その腕に巻かれた薄い布がわずかにずれて、赤く爛れた痕が覗いた。

「……腕、怪我してるじゃねぇか」(しかも、あの狼の爪の毒じゃん)

「っ……これは……昨日の戦いの時に……」

セレナは視線を逸らす。

彼女は戦いの後、自分の草魔法で無理やり回復させていたのだ。表面だけは塞がって見えたが、無茶をしたせいで傷は完全には治っていなかった。

「隠してたな」

「……言ったら、余計な心配をかけるでしょ」

「余計どころか、もっと心配になるわ」

カイトは短く息を吐き、薪を取り上げるとセレナを椅子に座らせた。

水桶から汲んだ清水で布を濡らし、カイトはセレナの腕を丁寧に拭った。

セレナは落ち着かないように顔を背ける。

「本当に大したことないのよ。少し痛むくらいで……」

「その少しを放っとくと、取り返しのつかねぇことになるんだ」

カイトの手つきは思いのほか優しかった。

普段は皮肉を飛ばしてばかりなのに、こうして世話を焼かれるとセレナはどうにも居心地が悪い。

「……ちょっと無理をしただけよ」

「無理して、隠して、それでお前が倒れたら……俺はどうすりゃいいんだ」

その言葉に、セレナの胸が熱くなった。

彼女は強がりを飲み込み、唇を噛む。

「……昨日は、助けてくれてありがと」

「おう。けど、俺よりお前が無茶しなきゃ、もっと楽に済んでた」

「……かもしれないわね」

少し照れくさそうにセレナが笑う。

その笑顔を見て、カイトはほんの少し肩の力を抜いた。

手当てを終えると、セレナは布団へ押し込まれた。

文句を言おうとしたが、体は正直で、布団の温もりに触れた瞬間、安堵のため息が漏れる。

「今日は休んでろ。薪も畑も俺がやる」

「……カイトって、意外とおせっかい」

「意外とじゃなくて、最初からだろ」

セレナはくすっと笑い、布団に身を沈めた。

けれど、しばらくすると彼女の指先が布団の端をもじもじと掴み、視線が揺れる。

「……ねぇ、カイト」

「ん?」

「……その、隣に座っててくれない?」

か細い声に、カイトは少し驚いた。

しかし断る理由もなく、布団の脇に腰を下ろす。

セレナはそっと彼の袖を握り、安心したように瞼を閉じた。

「不思議ね……あんたがそばにいると、ちゃんと眠れそう」

「そりゃよかった。俺は寝かしつけ役かよ」

「ふふ……悪くないわ」

そのまま、セレナの呼吸はゆっくりと整っていく。

カイトは彼女の手をそっと布団の中に収め、呟いた。

「……これからはちゃんと頼れよ」

返事はなかったが、握られた袖口がほんの少しだけ強く引かれた。

それが彼女なりの「はい」だと、カイトにはわかった。

前回のオオカミさんは爪に弱い毒を持っています。

主の方は強めの毒です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ