第四話「反撃」
カイトの無双劇が今始まる
「セレナは下がれ。――ここからは俺がやる」
カイトは静かにそう告げ、腰から赤黒い立方体を取り出した。
掌に収まるその異形は、脈動するように淡い光を放ち、ただの装飾品でないことを示している。
「……それは?」
「俺の武器だよ」
指先で軽く回すと、立方体はカチリと音を立てて面を組み替え、次の瞬間には漆黒の拳銃へと変形していた。
「――変銃核」
名を呼ぶと同時に、カイトは群れの森狼へ銃口を向ける。
パンッ!
乾いた銃声が森に響き、一匹が頭を撃ち抜かれ、地面に崩れ落ちた。
「……!」
セレナは目を見開く。
次々に引き金が引かれるたび、狼が倒れていく。その正確さは人間業ではなかった。
だが――数が多すぎる。二十匹以上の森狼が一斉に飛びかかってくる。
「っ、カイト!」
セレナが叫ぶが、カイトは冷静に銃を構え直す。
「なら――火力を上げる」
《モルフォ》が再び光を放ち、拳銃は銀色のライフルへと姿を変えた。
ダダダダダッ!
連射される銃弾は嵐のように狼たちを撃ち抜き、血と土煙が舞う。
それでも群れは止まらない。
「ガルゥゥオオオオッ!」
奥から巨体の森狼が姿を現す。全身に古傷を刻んだ群れの王――アルファだ。
「やっぱり出てきたか」
カイトは唇を引き結ぶ。
変銃核が重々しい魔導砲へと変形し、赤黒い光を収束させる。
轟音と共に放たれた光弾が王狼を直撃し、爆炎が森を揺らした。
……だが、王狼はまだ立っていた。
黒煙の中、体を引きずりながらも殺意を滲ませてにじり寄る。
「ちっ、魔力の消耗が……」
カイトが舌打ちする。
「カイト!」
セレナが声を張った。
「私の魔法を――弾に込めて!」
カイトが目を丸くする。だが次の瞬間には笑っていた。
「なるほど……悪くないな」
そして小さく、誰にも聞かせるつもりのない声で続けた。
「――いつぶりだろうな。共闘が嫌いになったのは」
変銃核が小型のリボルバーへと変形する。
カイトが弾倉を開くと、セレナは両手を組み、緑の光を宿した。
「――草の蔓!」
編み込まれるようにして生まれた草の鎖が弾丸に絡みつき、魔力を宿して緑光を帯びる。
カイトはそれを装填し、静かに引き金を引いた。
パンッ!
撃ち出された弾丸は、飛ぶ途中で無数の蔓へと姿を変え、王狼を絡め取った。
巨体が地を抉りながら必死に抗うも、蔓は締め付けるほどに強靭さを増していく。
「ぐ……おおおオオオオッ!」
怒号と共に王狼は暴れ狂うが、セレナは震える声でさらに叫んだ。
「――蔓の棘!」
弾丸に残った魔力が反応し、拘束した蔓の表面から鋭い棘が一斉に伸びる。
次の瞬間、無数の棘が王狼の体を突き貫いた。
「グアアアアアアッ!!!」
断末魔を上げ、王狼は崩れ落ちる。残った群れも恐怖に駆られ、一斉に逃げ去った。
……静寂が戻る。
カイトは銃を下ろし、息を整えながら呟いた。
「……草魔法の弾丸、悪くないな。弾の形に魔力が馴染んで威力も増す」
セレナは呆然とその横顔を見つめていた。
少年は汗を浮かべながらも、まるで当たり前のように言っている。
「……あなた、一体……何者なの?」
カイトは肩を竦め、苦笑した。
「ただの銃士だよ。――山奥でのんびり暮らしたいだけのな」
その言葉に、セレナの胸の奥で、わずかな安堵と好奇心が芽生えた。
変銃核の設定
・好きなタイミングで銃を好きなタイプに変えれる〈例〉・ミニガン・AK・ショットガン・バズーカ砲etc...様々な銃に変化可能な武器
・世界に一つしか無いよ!