7話 パーティー
「あの…張り切りすぎでは…?」
「いえ!とんでもない!本当はもっと前からしたかったほどです!」
「もっと前って…」
波縷は侍女にヘアメイクをされながらため息をついた。そう、今日は新入生歓迎パーティーなのだ。召喚者ではあるが、王立騎士学園の生徒でもある波縷はもちろんパーティーにでなければならない。ちなみにクラスメイト達には自分にはダンジョンが合わないからちゃんと勉強して成長してくると言っている。
「ハル様お似合いです!ユウ様もこれは落ちるでしょうね!」
「?ありがとう」
実は王族の侍女達にもバレバレのユウの恋愛事情。侍女の乙女心は意外と恐ろしい。
「では、ネックレスつけたらユウ様のところに行きましょう!楽しみで恐らく待ってます!」
「いやそんなわけないわよ…」
苦笑しながら侍女と話す波縷。
「ふふ、ハル様もユウ様もまだまだですか〜何かしらあれば進展しそうですが…」
本当にこの侍女は怖い。恋愛相談を受けやすいのだろうか?気になるところだ。
「はい、完成!うん!似合ってますね!」
「あ、ありがとう。魔法のようね」
「まさか!私達は少しお手伝いしただけです!ハル様が元々お綺麗だからですよ!」
「ありがとう、楽しんでくるわね。みんなとても真剣にやってくれたから」
「「「「「!!ぜひ、楽しんできてくださいませ!」」」」」
波縷の笑顔にやられたのだろう。顔が真っ赤である。それだけ破壊力があったのだが。
「あら?音が聞こえますね?あ、もしかして…」
ニヤ〜とする侍女達。波縷は?だったが、誰だか分かったらしくすぐにドアを開けた。そしてその人物は…
「!ユウさん!」
そう、ユウだった。だが、侍女達もドン引きするほどの綺麗さだったが。いつもは騎士団の服か制服だが、今回はパーティーである。髪も綺麗にあげているし、スーツ姿で一層かっこよくなっている。
「ユウさん?」
「!いや、似合っているな」
「!ユウさんも…」
ユウは言葉にはしなかったが、波縷以外全員分かるほど波縷に見惚れていたのだ。そのおかげで顔がりんごのように赤いが。侍女達のニヤニヤが増す中、さすがの波縷とユウも気づいたらしく、また赤くなっていた。
「行くか」
「はい!」
そして波縷はユウにエスコートされながら馬車でパーティー会場へ向かった。
『!』
パーティー会場に着いた瞬間元々パーティー会場にいた全員が息を呑んだ。その理由はもちろん波縷とユウである。
「まぁ、こうなるよな」
「予想通りすぎるわ…」
「ハルが綺麗だからな」「ユウさんが一層格好いいからな」
「「え?」」
2人が一緒に歩きながらパーティーの皆の様子を見て言葉にした瞬間まさかの同時にお互いの事を褒めたので2人とも真っ赤になりながらもお互いの事を見ながらはにかんだ。
「あの2人、ヤバすぎ」
「騎士団の服装とか制服とかでもかっこいいし、可愛いのにあの姿は反則だぞ!」
学校の生徒は大騒ぎ。一方で睨んでいる人達もいるので2人は遠い目をしているが。
「よぉ、2人とも。似合ってるじゃないか」
「「団長!」」
騎士団や宮廷魔法師団を目指しているものが多いので騎士団長や宮廷魔法師団長が来るのだ。団長はイケメンなので女子生徒はメロメロである。もうすぐ50歳だというのに30歳前半に見えるかっこよさは男性は羨ましがるだろう。
「いや〜2人とも人気だな。頑張れよ」
「やりきれるか不安です。今後もですけど」
「なんとかやりますよ」
波縷とユウは団長の言葉に苦笑しながらも答える。そしてパーティーが始まるとご飯が運ばれてきた。いわゆるビュッフェである。波縷もユウもご飯がなくならないうちに食べようと皿に盛る。特にユウは見つけた瞬間獲物を見つけたように猛ダッシュで向かった。波縷はついて行ったが少年のような顔なので苦笑してしまった。食べる姿も普通に食いしん坊がやっとだ!と食べるようにパクパクと食べていたので笑ってしまった。ユウもあ、と気づき少し赤くなっていた。
「うん!美味しいですね!」
「あぁ、やっぱり学園のパーティーの料理は美味いな。」
「あ!ユウさん!スイーツ来ました!」
「本当か!?」
「あ、気をつけて行ってくださいよ〜」
スイーツが好物と知っている波縷は見つけた瞬間ユウに教えたが、その瞬間ユウはニコニコと笑いながらスイーツをとりに行った。また波縷は苦笑したが。
「ギャップが凄いわ…これを知ったらもっとファンが増えるでしょうね…騎士団長はこれからも大変ね」
波縷はユウが嬉しそうにスイーツを選ぶ姿を見ながら騎士団長の心配をする。騎士団の人間は家、もしくは騎士団長に婚約の申し出が来るのだ。そしてその話を本人に話すかを決めるのは騎士団長らしい。ちらっと聞いた話だが、毎日のように他の騎士団の人間もそうだが、凄い量の婚約の申し出が来るそう。今回の服装を見てまた婚約の申し出が来ることは絶対なので騎士団長の仕事が増えるのは確定である。
「あ、もうダンスの時間?」
「ハル」
スイーツを堪能してたであろうユウが波縷の元へ戻ってきた。
「ダンス一曲踊っていただけますか」
波縷に手を伸ばす。そして波縷は手を伸ばし満面の笑顔で
「もちろんです」
そう答えたのだった。
「やっぱりダンスは苦手です。ユウさん、ダンス上手いんですね」
「まぁ、いろいろパーティーには出てるからな。従兄妹か妹しかエスコートしないが」
「そうだったんですか」
音楽に合わせながら2人は話す。実は波縷、ダンスを習ったのは短期間なので上手い方である。それでもさすがに踏むのは申し訳ないので、ダンスの先生をトレースした魔法を利用している。ユウにはバレると思ったので元々バラしてあるが。聞いた時のユウの表情は驚いて口が開いてしまったが、最後は苦笑していた。そして音楽が終わると拍手が響いた。
「ユウさん、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう」
2人は微笑んでダンスホールを抜け出したのだった。そしてダンスが終わったあとはと言うと…
「ハーレル先輩!次はどのパーティーにいらっしゃいますか?その時ダンスを…」
「ハーレル先輩!好きなものはあったりしますか?ぜひ今度2人で聞いても…」
「ハル!今度私と踊ってくれないか!?」
「ずるいぞ!今度一緒に剣の練習を…」
と囲まれていたのだった。最終的には2人とも念話で団長にヘルプをし、抜け出したのだった。
「ハル、今日は本当にありがとう」
「いえ、私こそエスコートしてくださりありがとうございました」
2人は満面の笑みで感謝の言葉を伝えた。
「じゃあ」
「では」
「「おやすみ(なさい)」」
そして2人は疲れながらもいい表情で眠ったのだった。
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