5話 2人で魔物討伐
【5話】
波縷が特待生として従騎士団に入ることが決まって数日後、魔物討伐が始まった。ユウも相当な実力なので召喚者組よりも少し深めに行くことになった。
「!」
「ユウさん、来ます」
「あぁ、これはあくまでハルのことを知るためだ。波縷にトドメを刺して欲しいのだが」
「分かりました。」
災害級の魔物が来る前に軽く話し合いをした。そして、
『ガァゥゥオ!!』
3メートルのレッドグリズリーが姿を現した。その瞬間、波縷はジャンプをし(ジャンプといえど4メートルはいってるが)レッドグリズリーの額にデコピンをした。そしてすぐにレッドグリズリーは倒れ、デカすぎる魔石が落ちてきた。普通に国宝級の魔石がたったの3秒で手に入ってしまったのである。
「………」
流石のユウも目を見開いて口をパクパクしている。そんな顔でもカッコいいのは元の顔が良すぎるからだろう。
「ハル、君は何処へ行こうとしているんだ?」
「え、いや、普通に倒してるだけですからね!何処目指すとかまだありませんから!あぁ、でも」
「でも?」
「ちゃんと魔法騎士になってユウさん達の隣で戦えるようにはなりたいです」
「!!」
「?ユウさん」
「あ、いやなんでもない」
(不意打ちが過ぎる!なんだこの気持ちは!)
まだまだ恋愛に疎いユウである。そして波縷はなんというかサラッと不意打ち言葉をいうので騎士団ではモテて癒しの存在になりそうである。魔性の女とでも言ったほうがいいだろうか。そのうち本当に騎士団の華やら魔性の女と呼ばれるとは波縷も思っていないだろう。
「あ、また来ますね」
「俺がやってもいいか?」
「あ、はいどうぞ」
そして、次に現れたのはブルーグリズリーだった。グリズリーというのは同じなので、もしかしたら仲間の危機を感じて飛んできた可能性もある。
『選定』
『アイススピア!』
流石に無詠唱とまでは波縷みたいにできないらしいが、普通の宮廷魔法師団員よりも相当な実力があるのが分かる。魔法騎士団に行くのも波縷は納得した。なんたって召喚者と同じレベルくらいなのだから。騎士団員としても宮廷魔法師団員としてもトップの座に行けるぐらいの能力は持っていると共に討伐してわかったことだ。
「まぁ、このぐらいにするか」
「ですね」
最終的には共同で魔物を倒した。普通は災害級は10人以上で同時攻撃や魔法を使ったりと結構大変なのだが、そのうち騎士団のトップクラスになるであろう人間と、よくわからないがチートすぎる召喚者がいると20匹を倒せるらしい。息切れもせずに。
「でも協力っていいですね。疲れが二分の一になります。」
「あぁ、従騎士団に入ったらまだこのような討伐はやらないが、魔法騎士団に入れば魔物討伐も始まるからな」
ユウは騎士団について話しながら周囲を警戒している。深い部分なのでやはり注意しているのだろう。
「!ユウさんその魔法は?」
見たことのない魔法を見て驚いたのだろう。物が入るようになっているんだから。
「あぁ、名前はないが俺の無属性魔法の一つだ」
「無属性魔法!?」
「あぁ、まぁアイテムボックスでも言っておくか。収納箱のようなものだ」
「なるほど。便利ですね」
「ハルも使えるぞ」
「え!?」
波縷は驚いている様子だ。無属性魔法は使えるものがほとんどいない。この大陸中を見ても100人いないだろう。
「全属性適正を持っているからな」
「なるほど」
あぁ、そういえばそうだったという顔をしている。知りたいと顔にしっかり出てしまっていてユウは苦笑している。だって仕方ないじゃない。アニメでしか見たことのない異空間収納なんて見てしまったら!
「今度教えるよ」
「本当ですか!?」
「あぁ」
花が咲いたかのように笑顔になる波縷。そして苦笑しながら頷くユウ。微笑ましい空間だった。
「帰るか」
「はい!」
そして2人は仲良く深い森を後にした。倒したものはギルドに預けるのが普通なのだが…魔物の量とレベルが高すぎてギルドマスターまで顔が青くなって2人とも微妙な顔をしたのはまた別の話だ。
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「ユウ、どうだった」
騎士団長室に呼ばれたユウは今日の波縷の討伐のことを質問された。そして少し困ったような顔で口を開いた。
「……もう凄いとしかいいようがありませんね」
「?どういうことだ?」
「今回身体強化など魔法を駆使したいと言っていたので剣は使わなかったのですが…」
「デコピンで災害級が死んでました。」
「は?」
「身体強化でジャンプを高くし、災害級の額にデコピンしてましたね」
「それだけで倒れるものなのか?」
「私は怖いので試してません」
全くもって懸命な判断である。
「まぁ結局ハルが倒した災害級が2体同じく私も2体そして協力して倒したのが16体ですね」
「じゅっ!?」
さすがの騎士団長でもその数は予想していなかったようだ。
「お前もハルと大概同じだがな」
「え?」
「え?ってハルはよく分からんが私を超えるレベル。この大陸の中で一番といっても過言ではない戦力の持ち主だ。」
「そうですね」
ユウも激しく頷く。果たして波縷と対等に戦えるものはいるのか、知りたいところである。
「お前もだろ」
「いやいや、団長には勝てませんよ。魔法を使わないと」
「だからそう言ってるだろ?魔法も入れればお前は団長クラスだ。召喚者レベルと言っても過言ではない」
実はそうだった。ユウは従騎士団に入っても特に意味がないほど強かったのだ。そのため初従騎士団2年目で騎士団に所属が可能となったのだ。何せ騎士団長に勝てるのだから。だが、ユウはちゃんと3年間従騎士団に所属してから王立騎士団に行きたいらしく、一応王立騎士団の仕事と従騎士団の仕事を兼任しているのだ。なので波縷よりかは弱いかもしれないがチートなのだ。このままだと勇者に匹敵するほどの。
「それは…天職のおかげですよ」
「それはそうだが…天職を自分のものにしたのはお前だろ?努力の賜物だよ、マジで」
「団長…ありがとうございます」
天職は自分のものにするまで開花しない。正確にいえば使えるが制御が難しいという事だ。召喚者達は元々の素質が以上なのですぐに開花できたが、この国で産まれたものは天職を開花するのに時間がかかるのだ。天職のおかげでもあるだろうがユウの努力の賜物には違いない。
「まぁ、ハルと仲良くしてやってくれ。従騎士団の特別生は色々あるからな…それに従騎士団に入るには王立騎士学園にも通わないといけねぇしな。その辺はユウも分かるだろう?」
「えぇ、それはもう。学校…うっ」
ちなみにユウは今年18歳で王立騎士学園の最高学年でさらに、従騎士団に入ったのは14歳で史上最年少の王立騎士である。地球でいえばスーパーチート高校生と言われること間違いなし?である。それに、天職のこともあり編入試験で王立騎士学園へ入ったのだ。色々陰口を言われたのをユウは一生忘れないだろう。それほど酷かったということだが。だが本当は、編入の問題ではなく、顔の良さと従騎士団の最年少入団のせいで陰口を言われたと鈍感なユウは一生思わないだろう。
「まぁ、そろそろだと思っていたが…まさか召喚者だとは…ククッ、隊長組がいじり倒すだろうな隊長楽しみだ…クックック」
「団長、何か言いました?」
「いや、なんでも無いぞ?」
「そうですか…失礼しました。」
小声で何か呟きながら黒く笑ってた気がするのだが…と思ったが、ユウはそれ以上追求しなかった。まさか自分の恋愛に笑われているとは思わないだろう。
「まぁ、これからも続けてくれ。ギルドが困らない程度にな。」
「あはは…はい」
「下がっていいぞ」
「は!失礼します」
最後は騎士らしく敬礼をし、ドアを閉めたユウだった。そして入団式までの1ヶ月間、ギルドに王直々に魔物の討伐具合が早すぎると聞いてきたことは波縷もユウも知らなかった。
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