4話 魔法騎士団
「魔法騎士団、ですか?」
「あぁ、魔法騎士団は魔法能力、体力などが高い人間が入ることができる騎士団だ。宮廷魔法師団と騎士団が合体した場所といえばわかるだろうか」
「そんな凄い場所が…」
「俺は風魔法と氷魔法の適性を持っていてな。魔法騎士団は今年設立された王立騎士団の中にある騎士団だ。人数制限もあるし、まして騎士団に女性が入ったことはないからな。だが、波縷の能力を見た限り魔法騎士団が一番だと感じたんだ。勇者の件も解決する。まぁ、入る場合騎士団長と陛下だけには君のことを話さないといけないがな」
ユウは波縷のために一つ一つ解決してくれる。波縷は胸が熱くなった。そして波縷はユウを見た。その目は嘘をついていない目をしていた。直感スキルがそういっている。
「私は…騎士団に行きます。従騎士団に入って魔法騎士団に行きます。ありがとうございます。そしてよろしくお願いします、ユウさん」
波縷が微笑むとユウは目を見開いてバルコニーの方にいきなり振り向いた。よく見れば顔が真っ赤になっていた。
「良かった…」
「そんなに覚悟してたんですか?」
「いや、女性を誘ったり、話たりするのは初めてだからな」
「え?初めて?あんなにモテてるのに?」
「何を言っているんだ?騎士団の者達は脳筋と言われているだけだぞ?騎士団長も言っていた」
(それ違う、絶対に違う!戦う姿がかっこいいって言われてるんじゃないの?騎士団の皆さんイケメンだし…)
恋愛のことをよく分かっていないイケメン達が騎士団には多くいるらしい。その言葉は恋愛経験0?(気になった人がいたが恐らく初恋まで至らなかったので全く恋愛を知らない)の波縷にも当てはまるのだが。
「それに、名前呼びをする女性は初めてだからな。緊張するんだ」
「!」
波縷は目を見開いて顔を赤くした。
「そうだったんですね…私も、その、クラスの男子も限られた人としか喋らないので…同じ、ですね」
「そうだな…」
沈黙の時間が流れた。だが、波縷もユウもこの時間が嫌ではなかった。それ以上に居心地が良かったのだ。
「で、では失礼するよ。」
「あ、はい。ありがとうございました」
「あぁ、あ、あと」
「?」
「淑女の部屋に簡単に男を入れないほうがいいぞ。俺は入ってしまったがな。この国だけの話ではないがそういう輩が多いからな」
「あ、はいご忠告ありがとうございます、気をつけます」
「あぁ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい!」
自分のことを気にしてくれる家族以外で初めての人。波縷はその事実に嬉しくて仕方なかった。
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「まさか、ハルがあんなに凄い召喚者だったとは…」
実のところユウも波縷が言っていた通り勇者以上の者がいるとは思って見なかったのだ。
「魔法騎士団に誘って良かったのだろうか…」
そして魔法騎士団に誘ったのも思いつきである。召喚者という立場、融通が利くのは確かだ。それにこの騒動が終わった後は恐らく魔法騎士団などに放り込まれるのはほぼ確定である。ユウは波縷を誘ってよかったのか考え込んだ。なにせ波縷の将来を決めてしまったのだから。だが、
「彼女を、ハルを護りたいと思うのは事実なのだが…」
そういうことだった。波縷の嬉しさをを、波縷がここまで隠し通してきた意味をちゃんと傍で聞いて分かったのだ。
護りたい
と。
「あぁ、なんで俺はハルのことをこんなにも考えるんだ…!」
自分の気持ちが分からず顔を真っ赤にしながらまた毛布に包まるユウだった。今回は微笑みをそえてだが。
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数日後…
「ユウからある程度の事情は聞いている。まずはステータスプレートを見せてくれ」
「はい」
ユウが話を逐一話したらしく、すぐに団長室に呼ばれた。ユウも同席である。
「なるほどな…ユウの話を聞いたときは信じられなかったが…」
「黙っていて申し訳ありませんでした。」
「いや、こちらも勇者が一番という先入観をもっていたせいで苦労させたな」
「いえ!とんでもない!」
実のところ波縷は説教を覚悟で団長室へと足を運んだのだ。それが逆に謝れるとは思っていなかったので動揺した。
「だが、勇者が一番強いと思っていたのは私達の考えだ。無理をさせてしまっていたのが分かる。本当に申し訳なかった。君の望み通り従騎士団に入団させるよ」
「あ、ありがとうございます!」
「もう試験などはいらないだろうから、特待生として入れさせてもらう」
流石に召喚者という立場上他の従騎士志望者と同じとは流石に入れないらしい。それは元々分かっていたことなので特に波縷はなんとも思っていなかった。
「分かりました」
隣にいたユウと顔を見合わせてお互い微笑む。その時騎士団長がニヤリと笑った。
「まぁ、だがまさかユウがハルの話をした時は驚いたよ。緊急と聞いたから何事かと思ったらまさかの召喚者組のことだったんだからな。それに加え男子ならともかく女子。お前がまさか女性の話をするとは…驚いたよ、アッハッハッ!」
「だ、団長!」
ユウは顔がリンゴのように真っ赤だ。波縷も団長の話を聞いて真っ赤である。
「いや〜すまんすまん。2人は初々しいな〜妻と出会った時を思い出すよ」
どこで恋バナをしているんだ、この人は。と波縷もユウも思ったがさすがに騎士団のトップでお世話になってるので言わなかった。
「あ、そうだ。第139期の従騎士団は1ヶ月後に入団式がある。それまでユウと共に魔物討伐をしてくれないか?」
「魔物討伐ですか?分かりました」
「君の凄さをやはり知っといたほうがいいと思ってね。流石に勇者パーティーの付き添いに俺がいないとヤバいからな。てな訳でユウ、頼んだぞ」
「は!かしこまりました!」
普段とは違うユウの声に少し驚きながらも私も頑張らなければと感じた波縷だった。