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 例の花はなかなか見つからず、頼みの綱とばかりにアネッタは図書館に向かった。

 図鑑からそれらしい花の絵を見つけだし、露店にモチーフになっている置物が売っていたことを思い出し、どうにかそれを手に入れることができた。


 気付いた時には、辺りはすっかり夕暮れに染まっていた。


「急がないと...」


 レグルスにひもじい思いをさせては元も子もない。

 小さな花の置物を握りしめながら、アネッタは塔に向かって走っていた。

 

 近道にと、人通りの少ない道を選んだのがマズかった。


「俺と一緒に来い! お前がいれば! お前さえ、いれば!」

 

 いきなり立ち塞がってきた男は、目は血走り、ナイフを握る手は震えている。

 逃げようとしたアネッタだったが、仲間らしき男が退路を塞いでしまっている。

 

 アネッタはようやく思い出した。

 塔に入れるということは、侵入のために狙われる可能性があるということを。

 聖王クラウディアの守護魔法があるとはいえ、注意するようにと雇い主から言われていたのに。


「いや...」


 男の手が間近に迫り、アネッタは恐怖に目を閉じた...その時だった。


「が!?」


 背後から悲鳴が聞こえたかと思うと、アネッタは後ろから誰かに引っ張られた。

 顔には柔らかな感触が当てられ、なにかが斬れた音が聞こえた。


 恐る恐る目を開けると、アネッタは見たことのない美女に抱きしめられていた。

 真っ赤な髪、漆黒の瞳...ついでに豊満な胸の美女は、肩から血を流している。


「あの、あなたは...」

「邪魔するな! 俺は、殺してやるんだ! あの、悪魔を!」


 美女はなにも言わず、ナイフを振り上げる男の(あご)を蹴り上げた。

 

「いたぞ! あっちだ!」


 アネッタが声のする方を向くと、赤の制服を着た男たちがこちらに向かっているところだった。

 聖王クラウディアの親衛隊だ。

 アネッタを襲った男たちを追っていたらしい。

 

 助かったと胸を撫でおろし、アネッタが振り返った時には美女は姿を消していた。

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