10ー2
どうして、こんなことになっているのだろう。
彼女の寝室を前に、レグルスは立ち尽くしていた。
『レグルスさん、聖王陛下に会いに行きましょう!』
ぼんやりと外を眺めていたレグルスだったが、アネッタの勢いに押されて頷いたのが運の尽き。
友人が使い魔を預けていたようで、とんとん拍子で話は進んだ。
あとでもう一度シメておこうと、固く誓ったのは言うまでもない。
せめてアネッタに付いてきてほしかったが、残念ながら塔で留守番しているとのことだ。
『死んだら喧嘩すらできなくなります。
当たって砕けてきてください』
アネッタの言葉を胸に、レグルスは大きく深呼吸すると、友人が見守る中寝室に入っていった。
「ラグナか?」
「...ひさし、ぶり」
「...レグ、ルス?」
一瞬、目を瞬かせた彼女がすぐに顔を背けたことに、軽くショックを受けながらも、レグルスは必死で言葉を紡ぐ。
「すごい、な。
ここ、昔は焼け野原だったのに、今じゃ見る影もない。
新聞、見たけど、無料の学校とか、図書館とか。
本当に、戦争を終わらせて、死ぬやつが減って...」
「当然だろう。
お前の犠牲に応えねばと、必死だった」
「...ディア」
レグルスはこわごわと歩み寄ると、今にも折れそうなほど細い彼女の手を握った。
「俺...やっぱり、あの時のことは後悔してないんだ」
「酷いな。私はずっと悔んでいたというのに。
お前の存在を笠に着て、謀略もこなして...こんなに、私は醜くなった」
「そんなことない」
レグルスは彼女の手に口付けた。
「とてもきれいじゃないか。
この手は、ディアが平和な世界を作ってみせた証。
どこが醜いって言うんだ」
「...まったく、お前は......レグルス」
「ああ」
「幸せになれ。これは命令だ」
「おいおい。今までで一番酷い命令だな」
「お互い様だ」
それから数日後、殺戮帝レグルスの死が発表された。




