10ー1
「ほんとにごめん。
ちょっと取り逃がしたばかりに、あんなことになっちゃって」
「まったく、あいつにもしものことがあったら、どうするつもりだったんだ」
もっとも一番悪いは、例の花のことを洩らしてしまった自分にあるのだろうがと、レグルスは自嘲の笑みをこぼした。
アネッタを塔に送るついでに訪ねてきた友人を、いつもなら(といっても、数えるほどだが)問答無用で部屋から蹴り出すレグナスだったが、今日はチェスの誘いに乗ってみることにした。
「にしてもあのレグルスが、やっと手紙の返事が来たと思ったら...ハハッ」
「笑うな」
今までの世話係とは違うアネッタにレグルスは、暗殺者かあるいは篭絡のために送られた密偵かと疑い、友人に手紙で素性を問いただしていたのだが...。
「毎回のろけ話が届くものだから、もう...」
「行動を逐一報告してただけだろ」
「しまいには...新聞に載ってたケーキが食べたそうだから、買ってやれって...ブフ」
「お前、あとで覚えてろよ」
あの時のアネッタの喜びようといったら、頼んでよかったとは思った。
こうして笑われるまでは。
「あの時は、陛下と祝杯をあげたんだよね。
か~な~り、高いやつ」
「...あの人は、どうなんだ?」
ここ最近、守護魔法が弱まっていることに、気付かないレグルスではない。
「...もう、長くないだろうね。一度会っておく?」
「バカ言え。合わせる顔がどこにある?
...チェックメイト。とっとと帰れ」
「おい、レグ...痛ででで!」
体が鈍っているとはいっても、それは執務漬けである向こうも同じこと。
さっきのお返しにレグルスがアイアンクロ―を決めると、友人は情けない悲鳴をあげた。




