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12/17

9ー1

 アネッタがうたた寝から目を覚ますと、レグルスはすうすう寝息を立てていた。

 熱は下がったようで、顔色もだいぶよくなっている。

 

 時刻は昼近く、アネッタが黒パンをかじっていると、雇い主が訪ねてきた。

 聖王クラウディアがアネッタに会いたがっていると。



「そなたがアネッタか」


 初めて間近で見る聖王クラウディアに、アネッタは思わず息を呑んだ。


 遠目で眺めた、パレードで悠々(ゆうゆう)と手を振っている姿でもない。

 嫌というほど見かけた、肖像画のような輝かしい美貌でもない。

 雇い主の助けを借りてベッドから起き上がるその姿は、まるで枯れ木のようだった。


「驚いただろう?

 こやつは変装魔法が得意でな。

 私が健在だと思わせるために、代わりに表舞台に立ってもらっている」

「...どうして、私なんかに?」


 アネッタでもわかる。

 これは、誰にも知られてはいけない国家機密だ。


「そなたが見つけたあの紙には、魔法がかかっていてな。

 あやつに嫌悪感を抱かない者しか、見つけ出せないようになっていたのだ。

 そして10年、やっと...そなたを見つけた」


 アネッタは悟った。

 勝手にしていたことがバレていないのではない。

 見て見ぬフリをされていたのだ。


「こたびの件で、そなたにもあやつにも危険な目に遭わせてしまった。

 申し訳ない。」

「...恐縮です」

「そう言っているわりには、私への敬意が感じられないのだが?」

「...」

 アネッタの雇い主と、レグルスの友人は同一人物。

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