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毒はかなり強力なものらしく、レグルスの熱は酷くなる一方だった。
不安に駆られながらもアネッタは濡れタオルを取り替え、レグルスの手を握り続けた。
最近はぐっと冷え込んだので、水道の水が冷たいのがせめてもの救いだ。
「もう、やめろ。
...今回、のことで...わかった、だろう?
俺といる、限り...お前には、危険が...」
「嫌です」
自分が苦しい状況にもかかわらず、アネッタのことを気遣ってばかり。
本当にこの人は、なにが悪逆無道の殺戮帝だ。
深呼吸を一つすると、アネッタはちょっとした昔話を始めた。
「私の故郷は、山の中にある小さな村でした」
小さいがゆえに、村人はみんな家族のような間柄だった。
男衆が徴兵され、残った老人や女子供で力を合わせて生きてきた。
隣国の兵が、略奪のためにやって来るまでは...。
優しかった村長も、友達も、近所のおばさんも、お腹が大きかったおねえさんも、みんな殺された。
「弟を抱えた母の反対の手に引かれ、私は走りました。
けれど、兵士に追いつかれて...」
母がアネッタを抱きしめた瞬間、大きな悲鳴が聞こえた。
恐る恐る覗いてみると、目に飛び込んだのは黒い髪。
『あっちに向かって走れ。
ここで起こったことは、なにもかも忘れろ。
いいな?』
『...おにいちゃんは?』
『...このくそったれな戦争を、終わらせに行く』
「どういうわけか、村を滅ぼしたのは殺戮帝ってことになっていましたけど。
あなたは、私たちを助けてくれたのに」
「...! お前、あの時の...」




